鳥インフル対策の徹底を 中国での発生を受け農水省が再通知
農林水産省は2月7日、中国が国際獣疫事務局(OIE)に高病原性鳥インフルエンザ(HPAI)の発生を報告したことを受け、家きん飼養農家を含む畜産関係者への周知と侵入防止対策、異常の早期発見・通報の徹底などの防疫対策の再徹底を各都道府県に通知した。
中国がOIEに報告したのは、1月24日に湖南省の家きん(ブロイラー)農場で発生したH5N1亜型。その後、2月10日には四川省の家きん農場で発生したH5N6亜型のHPAIが発生した。
農林水産省によると、家きんでのHPAIは、ベトナム、中国、台湾で発生が続き、欧州でも今年1月に入って、チェコ、ルーマニア、ポーランド、ハンガリー、スロバキア(いずれもH5N8亜型)、ウクライナ(H5亜型)で発生が確認されている。ドイツの裏庭家きん農場でもH5N8亜型のHPAIが確認され、農林水産省は2月11日に生きた家きんはドイツ全土、家きん肉などは発生州のバーデン・ビュルテンベルク州からの輸入を停止した。
隣国の韓国では、今年1月も野鳥の糞便から低病原性鳥インフルエンザ(LPAI)ウイルスの確認が続いているが、家きんでの発生はない。
日本国内では、2018年1月に香川県(ブロイラー1例)でHPAIが発生して以来、家きんでの発生はないが、昨年11~12月にかけて野鳥の糞便からLPAIウイルスが愛媛県(H7N7亜型)、栃木県、奈良県(いずれもH5N3亜型)、島根県(H5N2亜型)で確認されている。
2004年に79年ぶりに家きんでHPAIが発生した当初は、発生農場から周辺農場に感染が広がるケースもみられたが、最近は単発での発生ケースが多くなっている。
日本政策金融公庫農林水産事業本部が発行している「AFCフォーラム」2020年1月号で、農研機構動物研究衛生部門ウイルス・疫学研究領域疫学ユニットの清水友美子主任研究員は、過去の発生傾向を統計的に調べた結果から「農場近隣に池や川があることが、鳥インフルエンザの発生リスクを高くしている」とする解析結果を報告。鳥インフルエンザと水辺の関係について「水辺のリスクが顕在化したのは、基本的な防疫対策が強化され、人や車両などに起因するウイルス侵入リスクが低減したためとも考えられます。その上で、近隣に池や川などのある農場ではより発生リスクが高いということを念頭におき、今後もウイルスを『農場に入れない』『鶏舎に入れない』ために、基本の防疫対策を励行していただきたい」としている。
広がりを見せる豚熱や、日本への侵入が心配されるアフリカ豚熱、さらにはまだ終息の目途が立たない新型コロナウイルスなどの例をみるまでもなく、生産者としても、①飼養衛生管理基準の順守②人や車両・資材、野鳥を含む野生動物を介したウイルスの農場内と家きん舎への侵入防止対策――の徹底を継続していくことが求められる。