飼養方式で卵の味に違い 東京農工大・新村教授らが共同研究 ケージ卵…クリーミーさ強まる 平飼い卵…うま味やなめらかさ

東京農工大学は8月31日、採卵鶏の飼養方式によって卵の味に違いが生じることを、新村毅教授らの共同研究グループが明らかにしたと発表した。ケージ飼いと平飼い(ケージフリー)の卵にはそれぞれ異なる食味上の特徴があり、調理によってその違いが際立つという。研究成果は8月27日、学術誌「npj Science of Food」に掲載された。

研究には、東京農工大学、鹿児島大学、京都大学、日本獣医生命科学大学、麻布大学が参加した。

研究の背景には、採卵鶏のアニマルウェルフェア(AW)への関心の高まりがある。ケージフリーでは、広いスペースや止まり木、巣箱などを設けることで、鶏が本来持つ行動欲求に応えられるとされる。一方、平飼い卵は生産コストや小売価格が高くなるため、味や栄養価などに価格に見合う付加価値があるか、科学的な検証が求められていた。

これまでにも、飼養方式によって卵の成分が異なるとする報告はあった。しかし、屋外で飼育する鶏では、草や虫など飼料以外に食べたものの影響を分けて捉えることが難しく、ケージと平飼いという物理的な飼養環境そのものが卵の味に与える影響は十分に分かっていなかった。

研究グループは、環境を制御した同じ室内にケージと平飼いの設備を設け、鶏に同一の飼料を与えて5年間にわたり検証した。100人以上の消費者が参加した官能評価で、プリンや茶碗蒸しの味や食感、好みを調べた。さらに卵黄や卵白、鶏の血液に含まれる代謝産物と、肝臓で働く遺伝子を網羅的に調べる「マルチオミクス解析」を実施。官能評価の結果と組み合わせ、飼養環境の違いが鶏の体内の代謝を介して卵の味につながる過程を分析した。

ケージ飼いでは、鶏の活動量が限られることに伴い、脂質に関連する代謝が活発になった。血液と卵黄に含まれる長鎖脂肪酸が増え、卵のクリーミーさが強まった。この特徴は、プリンに加工するとより際立った。

また、ケージ飼いの鶏では肝臓での胆汁酸の代謝も変化し、卵には苦味や好ましくない風味の元となる二次胆汁酸などが増えた。研究グループによると、これらの成分は消費者の卵に対する好みを抑える方向に働いたという。

平飼いでは、鶏の活動量の増加に伴ってアミノ酸に関連する代謝が活発になり、卵白中にうま味や甘味に関わるアミノ酸が増えた。茶碗蒸しに加工すると、うま味やなめらかさが際立った。

研究グループは、与える飼料が同じでも、飼養環境による活動量や行動の違いが、肝臓や卵管などでの代謝を変化させ、卵の成分と味に影響したとみている。今回の結果から、ケージ飼いと平飼いの卵には、それぞれの食味上の特徴を生かせる調理方法があると示唆している。

東京農工大学は今回の研究について、鶏のAWに配慮した飼養環境が人の食の多様性にもつながり得ることを示したと説明。動物と人間の健康を一体的に捉える「ワンウェルフェア(One Welfare)」の考え方を具体的に示す成果と位置付けている。新村教授らは今後、飼養環境による卵の栄養成分の変化についても研究を進める。