農水省が鶏肉の衛生管理セミナー開く 食中毒の発生防止に向けて
農林水産省は4月12日、東京都港区の三田共用会議所で『食中毒の発生防止~鶏肉の衛生管理を題材に~』のテーマで食品安全セミナーを開き、鶏肉を取り扱う事業者や研究者ら約120人が参加した。
近年、国内での食中毒発生件数は年間1000件程度、患者数は2万人程度で推移し、このうちカンピロバクター由来の発生は昨年で320件、患者数は2315人となっており、生や加熱不十分の鶏肉を食べることが主な要因となっている。
農水省消費・安全局食品安全政策課の鋤柄卓夫課長が司会を務め、同省から『食中毒の発生防止のための農水省の対策』、内閣府食品安全委員会から『食品健康影響評価のためのリスクプロファイル』、国立医薬品食品衛生研究所から『食鳥処理場における食中毒菌の低減対策』について報告し、鶏肉企業の担当者による講演と、パネルディスカッションも行なった。
同省の調査結果によると、肉用鶏の約4割がカンピロバクターを保有しているとの報告もあるが、通常、肉用鶏は病状を示さないため農場での対応が難しく、確実な制御策も構築されていない。
当日は各氏の発表を通じて、鶏群の食中毒菌保有率を下げれば鶏肉の汚染率を下げられるとの認識を参加者と共有し、フードチェーンを通じた総合的な汚染制御策の構築のために、農場、食鳥処理場・加工場、流通、消費の各段階での衛生管理の徹底を呼びかけた。
鶏肉企業からは㈱ウェルファムフーズ霧島産業動物診療所の橋本信一郎所長(獣医師、獣医学博士)が『ブロイラー農場における衛生管理の取り組み事例』、全農チキンフーズ㈱コンプライアンス部の奥正二郎副部長(品質保証室長)が『農場・食鳥処理場における品質管理の取り組み事例』のテーマで講演。
この中で橋本所長は、ウェルファムフーズでは鶏舎の清掃・消毒(前後の作業含む)を①鶏群の出荷②器具搬出③除ふん④清掃・水洗⑤肉眼での検査⑥発泡消毒⑦石灰水溶液の塗布⑧敷料などの搬入⑨細菌検査⑩仕上げ消毒⑪入雛――の手順で進めていると報告。②では給餌器や仕切り柵など取り外せる器具を外に出し、別の場所で洗浄・消毒していると紹介した。ブロイラー鶏舎の水洗では排水が周辺にあふれ出て不衛生にならないよう、事前に排水路や排水処理施設の状態を確認しておくことも大切と指摘。
また、農場にみだりに人や動物を立ち入らせないことの重要性については「一番大事なことはバイオセキュリティー」と強調した。
奥副部長は、全農チキンフーズの食鳥処理場での管理ポイントについて説明。生鳥受け入れから冷却までの『汚染区』では、使用する次亜塩素酸濃度(50~100ppm)と、冷却チラーの温度管理を徹底(5度C以下)。懸鳥から金属探知機検査までの『準汚染区』では、同濃度に加えて室温管理の徹底(20度C以下)や、解体品の温度管理(10度C以下、2時間おきに芯温検査も実施)なども管理ポイントとしていることを報告した。
梱包から出荷までの『清潔区』では、真空包装の状態や箱に不備はないかをチェックし、冷蔵庫の温度は0度C以下になるように注意していると紹介した。