畜舎の建築基準見直しへ 特別法について検討
検討委員会初会合開く
農林水産省は、2月4日に「新たな畜舎建築基準等のあり方に関する検討委員会」の初会合を開いた。畜舎は現在、建築基準法の規定への適合や建築確認申請などの手続きが必要で、これらが建築コストの上昇になり、畜産の競争力を弱めている要因にもなっているとして、(一社)日本養鶏協会をはじめとする畜産関係団体などから改善が要望されていた。
「新たな畜舎建築基準等のあり方に関する検討委員会」は、昨年6月21日に閣議決定された規制改革実施計画で「農林水産省は、畜舎等の安全対策の新しいあり方について検討を行なうべく委員会を立ち上げ、畜舎等を建築基準法の適用の対象から除外する特別法について検討し、結論を得る」と決まったことを踏まえて立ち上げたもの。規制改革実施計画では、令和2年上期までに結論を出し、令和3年上期に措置を実施する予定としている。
冒頭あいさつした渡邊毅畜産部長は「畜舎の建築基準については現場からもご意見があり、政府の規制改革推進会議でも取り上げられ、昨年6月に閣議決定した規制改革実施計画の中で、委員会を立ち上げて畜舎等を建築基準法の適用から除外する特別法について検討することが決められた。本日は初日ということでこれまでの議論の経緯や今後議論する論点、畜舎の基本的な構造について説明する。畜舎等の建築基準のあり方については現場や委員の皆様のご意見を聞いてしっかりと検討していく」と述べた。
初会合では、座長に森田茂氏(酪農学園大学農食環境学群循環農学類教授)が選出された。
畜舎は現在、建築基準法の「構造・防火等の単体規定」「用途規制・容積率等の集団既定等の基準」に適合する必要があり、畜舎の規模や立地に応じて建築確認申請などの手続きが必要となっている。建築確認と完了検査は、大・中規模建築物等(木造500平方メートル超、その他200平方メートル超)は必要で、小規模建築物等(木造500平方メートル以下、その他200平方メートル以下)は、①集団既定適用区域内では一部不要(4号特例、構造計算不要)②集団既定適用区域外では不要――とされている。
畜舎の建築基準に関して、生産現場からは「規模拡大のために新たな畜舎を建築したいが、建設コストが高い」「畜舎等での作業は人の滞在時間が少なく、安全マージンが大きすぎると感じる」「機械で作業するようになり、また無人で稼働する機械の導入も進み、人の滞在時間は減っている」「省力化機械導入のための畜舎等の補改修に際し、改めて建築確認を受ける必要があるのかどうかわかりにくい」などの声が挙がっていた。
事務局が説明した同委員会で議論する論点では、①建築基準法の規律の枠外で規律する際の考え方②新たな制度における規律対象とすべき畜舎の範囲③新たな制度におけるソフト基準とハード基準のあり方について④畜舎にかかわる新基準への適合確認⑤新たな制度により建築される畜舎等の集団規定の適用――などが挙げられた。
出席した委員からは「建築確認がいらない木造500平方メートル以下を、1000平方メートル以下にしていただけると一番ありがたい」「規制を緩和する場合は全国一律ではなく、地域性に応じた判断基準が大きな評価軸になる」「現行法でも畜舎基準はかなり緩和されており、正直限度。確認申請などの手続きの簡略化はできる。それに伴い安全性をどのように担保するかが問題」「木造500平方㍍の畜舎では全然足りないが、500平方メートルを超えると建築確認などでコストや時間がかかるため、あきらめている農家がたくさんいる」「複合的に考えて安全基準はやらざるを得ないし、実効性のあるものとしてどのように運用していくかが、意外と大きなテーマになるのでは」などの意見が出された。
また、当日欠席した委員からの「畜舎や畜糞堆肥場が年々大型化しているため、現時点での軒高9メートル、棟高13メートル、間口15メートルでは収まりきらない状況が多々出現している。一方で作業者の安全を守る観点から、何かしらの計算根拠は必要だと思う」などの意見も紹介された。次回は3月3日に開催する予定。
森田座長を除いた委員は次の各氏。
砂金甚太郎(全国酪農業協同組合連合会会長)、河野守(東京理科大学工学部第二部建築学科教授)、齋藤一志(㈱庄内こめ工房社長、㈲いずみ農産取締役)、坂本修三(坂本産業㈱社長)、清家剛(東京大学大学院新領域創成科学研究科社会文化環境学専攻教授)、高橋利己(北海道建築士会遠軽支部長、高橋建築コンシール)、田畑佑介(㈱タバタ社長)、中野隆二(㈲フォルムデザイン社長)、林いづみ(桜坂法律事務所弁護士)、藤田毅(㈲フジタファーム社長)、本川和幸(㈲本川牧場社長)、三浦啓(北海道建築士事務所協会副会長、三浦建築設計事務所)、森暢郎(〈公社〉日本建築家協会副会長)、山氏徹(全国肉牛事業協同組合理事長)