採卵鶏は景況回復、ブロイラーは悪化 日本公庫の農業景況調査

コロナ禍の影響は改善の動きも

㈱日本政策金融公庫は9月27日、融資先の担い手農業者を対象に今年7月に実施した「農業景況調査」の結果を公表した。融資先1万9992件のうち、6336件(回収率31.6%)から回答を得た。このうち採卵鶏は112件、ブロイラーは95件。

農業全体の令和3年上半期の農業景況DI(農業経営が「良くなった・良くなる」とする構成比から「悪くなった・悪くなる」とする構成比を差し引いたもの)は前年実績から8.2ポイント上昇しマイナス16.7となり、マイナス幅が縮小しやや回復した。令和2年通年の見通しは上半期実績から17.0ポイント低下しマイナス33.7となり、マイナス幅が拡大する見込み。

【採卵鶏】

令和3年上半期の農業景況DIは前年実績から79.5ポイント上昇し35.7となり、プラス値に転じ、大幅に回復した。令和3年通年の見通しは上半期実績から18.6ポイント低下し17.1となり、やや悪化する見込み。

令和3年上半期の収支DI(収支実績が「良くなった」とする構成比から「悪くなった」とする構成比を差し引いたもの)は前年実績から69.9ポイント上昇し29.3、資金繰りDI(資金繰りが「楽になった」とする構成比から「厳しくなった〈苦しくなった〉」とする構成比を差し引いたもの)は57.3ポイント上昇し25.0、販売単価DI(生産物の販売価格が「上昇した」とする構成比から「下落した」とする構成比を差し引いたもの)は125.3ポイント上昇し67.8となり、大幅に回復した。

一方、生産コストDI(生産の費用〈コスト〉が「下がった」とする構成比から「上がった〈コスト増〉」とする構成比を差し引いたもの)は30.7ポイント低下しマイナス72.4、雇用状況DI(雇用状況の実績が「過剰である」とする構成比から「不足である」とする構成比を差し引いたもの)は4.2ポイント低下し37.5となり、前年実績より悪化した。

【ブロイラー】

令和3年上半期の農業景況DIは前年実績から10.6ポイント低下しマイナス4.2となり、マイナス値に転じ悪化した。令和3年通年の見通しは上半期実績から23.5ポイント低下しマイナス27.7となり、マイナス幅が拡大する見込み。

令和3年上半期の収支DIは前年実績から25.2ポイント低下しマイナス16.3、資金繰りDIは1.8ポイント低下し3.2、販売単価DIは19.0ポイント低下しマイナス13.9、生産コストDIは26.0ポイント低下しマイナス46.3となり、前年実績より悪化した。

一方、雇用状況DIは5.6ポイント上昇しマイナス16.2となり、マイナス幅が縮小し、やや回復した。

令和3年に設備投資予定がある比率は、採卵鶏は前年実績から4.1ポイント上昇し63.4%、ブロイラーは10.0ポイント低下し55.8%となった。「設備投資予定あり」と回答した担い手農業者のうち、46.3%が前年に比べ設備投資額が「増加する」と回答し、設備投資に対する積極的な姿勢がうかがえる。

今後の経営方針では「生産性向上に向けた設備増強」が59.0%で最も高く、次いで「生産規模の拡大」47.1%、「新技術・新品種の導入」46.7%。最優先する経営方針としては「生産規模の拡大」が35.4%で最も高かった。

新型コロナウイルス感染症拡大による売上高への影響は、採卵鶏は「プラスの影響がある」が前回調査(5今年1月)から3.7ポイント上昇し9.0%、「ほぼ影響はない」が30.9ポイント上昇し53.2%、「マイナスの影響がある」が9ポイント低下し32.4%。ブロイラーは「プラスの影響がある」が3.9ポイント低下し7.5%、「ほぼ影響はない」は3.4ポイント上昇し59.1%、「マイナスの影響がある」が0.9ポイント低下し26.9%となり、改善の動きがみられる。

新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けて「これから実施したい」具体的な取り組みは、採卵鶏は「省力化・効率化によるコスト削減」が50.6%で最も高く、次いで「新たな人材の確保、受け入れ」30.9%、「販路の開拓(インターネット販売を除く)」28.4%。ブロイラーは「省力化・効率化によるコスト削減」が37.5%で最も高く、次いで「現状維持・特に取り組みなし」28.6%、「経営規模の拡大」19.6%となった。

農業のデジタル化、スマート農業の導入状況は、全体では「導入している」と「導入していないが、導入意向がある」を合わせた割合が63.0%で半数を超えたが、採卵鶏は39.6%、ブロイラーは28.7%で他業種を下回っている。導入で期待する効果は「農作業の省力化」「農作業の軽労化」「品質・収量の向上」の順となった。