持続可能な産業の確立を

昨年は、世界中が新型コロナウイルス感染症に振り回され、社会・経済とも大混乱した年となった。感染予防に有効なワクチンの普及は、一部の国を除いて時間がかかるとみられるため、今年も当面はマスク、手洗い、換気などに気をつけて、乗り切る以外にない。

コロナ禍の下で鶏卵・鶏肉も明暗が分かれた。国内自給率96%の鶏卵は、消費形態は家庭用と業務・加工用でおおむね半々とされる中、コロナ下で家庭用需要は1割弱伸びたとされるものの、業務・加工用需要は2割以上減少し、過剰生産もあって相場は低迷した。

国産鶏肉については、一般鶏肉は家庭消費が中心となっていたことから、内食需要の伸びに支えられ、相場は上昇したが、多くを業務需要に依存していた高付加価値の銘柄鶏や地鶏、あい鴨、ウズラなどは極めて厳しい経営環境となった。

生販をつなぐ流通業者の中でも、特に飲食店向けの割合が高い事業者は厳しい環境にさらされ、支援策も少ない状況が続いている。

今年は、年明けから配合飼料価格がトン3900円値上げされる(全農・全畜種総平均)。特に鶏卵は2年連続で170円台の低迷相場となったところへ、10円前後のコストアップとなるため、合理化努力だけでは吸収できない。コストに見合った相場の実現ためには〝減産〟を含む需給の改善を図ることで危機を乗り切る必要がある。

販売面では、通販やオンラインでの消費が伸び、飲食店などでもテイクアウト需要が伸びている。消費者の健康志向や生活様式の変化に合わせた流通・販売への対応や、新商品づくりは、今後もますます重要になる。

2018年1月以来の発生となった今シーズンの高病原性鳥インフルエンザは、西日本を中心に、12月23日時点で12県31事例へと拡大し、いまだ終息の見通しが立っていない。疫学調査では、農場の近くに川やため池があり、飛来した渡り鳥が持つウイルスをネズミなどの小動物が鶏舎内に持ち込んだ可能性が高いことを示唆し、鶏舎の隙間や防疫対応、消毒が不十分だったとの不備も指摘している。ウイルスは、北海道から鹿児島までの野鳥でも検出され、発生リスクは全国に及んでいるため、各農場では今後も警戒を緩めず、飼養衛生管理基準に基づく防疫管理を再徹底して、ウイルスの侵入を防ぐ以外にない。

近年の鳥インフルエンザの発生は、ほとんどが単発であったが、香川県三豊市の発生は密集続発型となった。今後、養鶏密集地域の有効な防疫対策として、地域一体となった消毒や、人・車両・小動物など対策の検討・構築が急がれる。

可能な限りの対策をしていても、完全にウイルスから逃れられないことは、新型コロナも鳥インフルも同じで、それだけに被害を受けた関係者が立ち直れるような支援や風評被害の防止が求められる。

環境負荷が畜産物の中で最も低く、優れた栄養源として、今後も人々の食生活と健康を支えていく鶏卵・鶏肉の生産・流通産業が、さらなる消費拡大や需要に見合った生産によって、サステナブル(持続可能)な素晴らしい産業として次世代に手渡せるよう、2021年は関係者の自助努力と業界一体となった協力で発展していかなければならない。