家畜疾病や畜産物の安全性対策を拡充 令和4年度養鶏関係予算要求
農林水産省は8月31日に、令和4年度農林水産関係予算の概算要求をまとめた。本紙前号で畜産局の養鶏関係予算の概要を掲載したが、本号では消費・安全局を中心に、養鶏に関係する予算の概要を紹介する。
「家畜衛生の推進」は〝消費・安全対策交付金〟27億8300万円(前年度22億1000万円)の内数。ソフト面では、都道府県等が地域の実態を踏まえて実施する、家畜疾病に関する監視体制の整備、発生予防・まん延防止の取り組み、畜産物の安全性向上や野生動物の対策強化の取り組みを進める。ハード面では、適切な病性鑑定を実施するために必要な家畜保健衛生所の施設整備、地域における車両消毒施設の整備、農場への野生動物の侵入防止柵の整備を支援する。
「家畜生産農場衛生対策事業」は6億4800万円(前年度6億3400万円)。生産農場における飼養衛生管理の向上や、家畜の伝染性疾病のまん延防止・清浄化に向け、農場指導、検査、ワクチン接種やとう汰等の取り組みを推進する。また、HACCPの考え方を取り入れた家畜の飼養衛生管理(農場HACCP)への取り組みを強化する。
「飼養衛生管理情報通信整備事業委託費」は5000万円(前年度と同額)。国産畜産物のフードチェーンにおける家畜疾病、薬剤耐性菌、食肉廃棄等の課題に的確に対応するため、関連情報の見える化、タイムリーな共有、分析結果の活用等により、安全な国産畜産物の安定供給と生産性向上を実現し、国際競争力の強化を図る。事業は民間企業等に委託。
「戦略的監視・診断体制整備推進事業委託費」は1億7500万円(前年度7900万円)。事業内容は①家畜伝染病監視・診断体制整備推進事業②診断試薬確保事業③野生動物監視体制整備事業――で、民間団体に委託して取り組む。
「わが国のOIE認定施設活動支援事業」は600万円(前年度と同額)。わが国の動物疾病診断・検査体制への信頼性向上のため、OIE認定施設の国際的な活動を支援する。
「家畜伝染病予防費」は39億4400万円(前年度67億3300万円)。家畜伝染病予防法に基づき、口蹄疫、豚熱、アフリカ豚熱、高病原性鳥インフルエンザ等の家畜の伝染性疾病の発生予防とまん延防止のための国の負担分。
「動物検疫所の検疫事業費」は21億4500万円(前年度20億4200万円)。動物検疫体制を充実強化することにより、アフリカ豚熱、口蹄疫、鳥インフルエンザ等の家畜の伝染性疾病がわが国に侵入しないよう、水際措置に万全を期す。
「抗菌剤に頼らない畜水産物の生産体制の推進」は7億6900万円(前年度5億4500万円)の内数。抗菌剤に頼らない畜水産物の生産体制構築が急務になっていることから、民間団体等や都道府県を通じて、ワクチン、代替薬、迅速な診断手法等の開発を支援するとともに、薬剤耐性菌の監視・動向調査、抗菌剤の慎重な使用に関する研修を実施する。
「動物用医薬品対策事業」は1億4500万円(前年度6500万円)。市場規模が小さい家畜・養殖水産動物や、薬剤耐性対策に必要な動物用医薬品等の実用化を促進し、動物用医薬品等の迅速な承認審査を行ない、外国との承認申請審査基準を緩和することで、国内で開発された動物用医薬品等の市場規模拡大を支援し、持続的な生産や国際競争力の強化を図る。
「動物医薬品検査所の検査事業費」は4億2000万円(前年度3億6400万円)。動物用医薬品の品質、有効性と安全性の確保を通じて、動物の命を守り、食品の安全を確保することによって人の命を守る。
「生産資材安全確保対策事業委託費」は3億6300万円(前年度2億6300万円)。生産資材の安全確保に向けた科学データの収集分析、リスク管理措置の基礎となる試験法の開発、未利用資源の肥料利用に向けた処理工程の検討や新規資材に関する調査、薬剤耐性菌のまん延防止対策等を民間団体等に委託して推進する。
「薬事監視事務委託費」は200万円(前年度と同額)。「医薬品、医療機器等の品質、有効性および安全性の確保に関する法律」に基づき、都道府県の薬事監視員が製造販売業等の許可や動物用医薬品の検定の事務を行なう。
「獣医療提供体制整備推進総合対策事業」は3億5400万円(前年度2億6100万円)。地域の産業動物獣医師への就業を志す獣医大学への地域枠入学者・獣医学生に対する修学資金の給付、獣医学生を対象とした臨床実習、女性獣医師に対する就業支援、情報通信機器の活用等による産業動物獣医師の活動環境整備等により、産業動物獣医師の育成・確保を図る。
「有害化学物質・微生物リスク管理等総合対策事業委託費」は1億8700万円(前年度と同額)。消費者の健康に悪影響が生じるのを未然に防止するため、食品等の有害化学物質・微生物の汚染実態調査、事業者等と連携した低減対策等の策定・普及、普及した低減対策の効果検証を民間団体等に委託して推進する。
「安全な農畜水産物安定供給のための包括的レギュラトリーサイエンス研究推進事業」は6億5500万円(前年度6億1500万円)。食品安全、動物衛生、植物防疫等の問題発生の未然防止や、発生後の被害拡大防止のため、行政施策・措置の決定に必要な科学的知見を得るための研究(レギュラトリーサイエンスに属する研究)を、内容に応じて柔軟に、規模や期間などを選択して民間団体等に委託して実施する。
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「水田活用の直接支払交付金」は3320億円(前年度3050億円)。米政策改革の定着と水田フル活用の推進に向け、麦、大豆、飼料用米等の戦略作物の本作化と地域の特色を生かした魅力的な産地づくり、高収益作物の導入・定着等を支援する。飼料用米生産の助成は収量に応じ10アール当たり5.5~10.5万円。
「マーケットイン輸出ビジネス拡大支援事業」は52億5600万円(前年度29億1700万円)。2030年輸出5兆円目標の実現に向けて、戦略的な輸出拡大へのサポート、品目団体の輸出力強化、輸出に取り組む優良事業者の表彰、日本食・食文化の魅力発信による日本産品の海外での需要拡大などを支援する。
「輸出ターゲット国における輸出支援体制の確立強化事業」は新規で6億5000万円。主な輸出先国・地域で輸出事業者を専門的・継続的に支援する体制を整備する。