各県で需要減となった「地鶏」の支援事例増加
新型コロナウイルス対応による外食・観光を中心とした需要減で、地鶏や高付加価値の食鳥肉、卵などの多くの産地が、深刻な苦境に立たされている。持続的な支援や伴走が必要な状況となっているが、少しでも生産者や関連事業者の助けになればと、地元や企業が支援する事例も増えており、その一部を紹介する。
はかた地どり給食に約33トン 福岡県
福岡県は「国産農林水産物等販売促進緊急対策事業」の和牛肉等販売促進緊急対策事業を活用し、同県産の和牛などの畜産物を、県内で給食を提供する私立を含む小中学校や、定時制高校、特別支援学校で活用する事業を、7月末から継続。
11月からは「はかた地どり」の活用も開始。同県によると、活用について県内のほとんどの市町村から手が挙がっており、全体の使用量は32トンから33トン程度になると見込んでいるとのこと。児童らが給食で食べたブランド畜産物のおいしさを知ることで、ファンになってもらうことも期待しているという。
比内地鶏販売ルート多角化推進事業 秋田県
秋田県の比内地鶏については、これまで地域の有志によるクラウドファンディングを活用した消費促進や、自治体による学校給食での活用推進(本紙既報)などにより、堆積した在庫がやや減少。
ただ、比内地鶏などの高付加価値の畜産物は、消費がもともと外食や観光関連など、今回の新型コロナ禍で影響を受けた業種に集中していることから、解決には至らず、全体では依然、例年より多い在庫量に苦慮。産地では、需要減に対応した素ひな導入の減少などを余儀なくされた結果、長期的な生産縮小や離農の増加などが懸念される状況となっている。
このような状況から、秋田県では今年9月の補正予算で、新規に「比内地鶏販売ルート多角化推進事業」を創設。外食需要に依存している比内地鶏の販売強化に向け、次の5つのメニューを用意して、家庭内消費の拡大や量販店での販売強化などを支援することにしている。
①家庭内消費拡大促進事業=首都圏でのオンライン料理教室の開催、比内地鶏料理の動画作成、全国番組での比内地鶏の紹介、著名人による料理映像の提供(民間事業者委託)。
②量販店販売ルート強化事業=首都圏や県内の量販店でフェアを開催(民間事業者委託)。
③比内地鶏取扱店PR事業=ブランド認証された比内地鶏肉を取り扱う飲食店や小売店の登録制度創設やPR(定額補助、実施主体は秋田県比内地鶏ブランド認証推進協議会)。
④沖縄起点輸出ルート開拓事業=インバウンドが多い沖縄県への販売流通網の整備、アジア圏への輸出ルート構築に資する新商品開発・特設販売・プロモーション活動(民間事業者委託)。
⑤加工品等開発支援事業=県内企業による新商品開発や販路開拓などの取り組みに支援(補助率2分の1以内、1件の上限100万円)。
このうち家庭内消費拡大促進事業については、実施する民間事業者を県内所在企業から公募し、「テレビでの放送回数や範囲は、比内地鶏の魅力が十分伝わる内容か」「家庭消費拡大に効果的な著名料理人などの選定となっているか」「デジタルマーケティング(ウェブサイトやSNSなどを使ったPR)は効果的な手法となっているか」「比内地鶏の基礎知識を持っているか」などを基準に選定。11月中旬の契約締結を予定している。
スパイスからあげプロジェクト おおいた冠地どり
大分県でも、様々な産地と同様に国産農林水産物等販売促進緊急対策事業を活用し、地域の地鶏「おおいた冠地どり」を学校給食に提供する事業を7月から継続。さらに、地元の飲食店などの有志が協力し、地域で生産が盛んなスパイスと、おおいた冠地どりを使った「おおいたスパイスからあげプロジェクト」を立ち上げ、消費を応援ている。
キャンペーンが始まった経緯について㈱学食の特設サイトでは、大分は「ポルトガル人の宣教師が、大友義鎮(後の宗麟)に唐辛子を献上したことから、スパイス伝来地とされる(諸説あり)」「新型コロナウイルスの影響で消費が落ち込んだ『おおいた冠地どり』を応援しようと、飲食店有志を中心に企画」したと説明している。
同県によると、おおいた冠地どりの在庫は、緊急事態宣言が出された6月には通常の4倍の約40トンに。現在は、学校給食への活用などで約20トンまで減ったものの、いまだに通常の2倍相当となっており、引き続き対応や支援が必要な状況。「今後も、おおいた冠地どりの消費をできるだけ促進していきたい」としている。
コロナ禍乗り切る取り組み事例募集 日本政策金融公庫
日本政策金融公庫は10月1日から11月30日まで、コロナ禍を乗り切ろうと様々なアイデアや工夫を重ね事業を継続している中小企業・農林水産事業者の事例を募集している。応募先は次の通り。
〒100-0004 東京都千代田区大手町1-9-4 大手町フィナンシャルシティノースタワー 日本政策金融公庫 コロナ取組み事例募集事務局
応募様式は(https://krs.bz/chushou/m/covid-19)へ。
企業としての持続的な効果が期待できる事例については、公庫のホームページや冊子などで紹介するとのこと。