千葉県の野鳥から鳥インフルウイルス 韓国の野鳥からも検出
本紙前号既報の通り、わが国も渡り鳥のシーズンに入ったが、農林水産省は10月22日、千葉県で採取された野鳥の糞便から今シーズン初めて、低病原性鳥インフルエンザ(AI)ウイルス(H7亜型)が検出されたと発表。改めて農場や家きん舎への侵入防止対策や、飼養家きんの異常の早期発見・通報、農場で万一発生が確認された場合の各自治体の迅速かつ円滑な初動対応などの確認を求めた。
22日に農水省消費・安全局の動物衛生課長名で出された「千葉県で採取された野鳥の糞便から低病原性AIウイルスが検出された」との通知は、農研機構動物衛生研究部門がウイルスを検出したことを受け、わが国の家きん飼養農場へのウイルス侵入リスクが高まっているとして防疫対策の再徹底を求めたもの。
また、通知では、韓国でも今シーズン初となる野鳥の糞便から低病原性AIウイルスが検出されていることも報告。韓国では9月末から渡り鳥が本格飛来し、10月6日以降は慶尚南道、京畿道、全羅北道の貯水池や川の河口などの渡り鳥の飛来地で採取した野鳥の糞便から、AI抗原が継続的に検出されている。韓国農林畜産食品部では、AIの発生危険度が高まっているとして防疫体制の徹底を呼びかけるとともに、AI緊急行動指針に基づいて、抗原が検出された地点を中心に、①半径10キロメートルの地域を「野生鳥獣類予察地域」に設定②地域内の家きんと繁殖中の鳥の予察・検査、移動制御および消毒③渡り鳥の飛来地と小河川などの近くの農家のブロック防疫強化④自治体などでの消毒の徹底による防疫措置――を実施した。同国では10月31日現在、7件のウイルス検出が確認されている(慶尚南道、京畿道、全羅北道はH5N2亜型、忠清北道はH3亜型)。
このほか、中国や台湾などでは家きんでの高病原性鳥インフルエンザ(HPAI)の発生が続いており、対策の徹底が求められている。
わが国では近年、農場で発生したHPAIが周辺に拡大していないのは、農場や鶏舎周辺での飼養衛生管理レベルが高くなっていることや、発生時の迅速な防疫対応などが要因とされる。
これに関連して、農水省は10月26日、「高病原性または低病原性AIの疑似患畜判定にかかわる飼養管理の協議」について動物衛生課長名で各都道府県の畜産主務部長に通知。仮に農場でAIが発生した場合でも、発生農場の飼養管理者が管理するすべての農場で厳格なリスク管理措置が徹底されていて、高病原性・低病原性AIウイルスに感染している可能性が低いと考えられる場合や、疑似患畜の判定に考慮する余地がある場合には、その後の対応などを動物衛生課と協議するよう求めた。
これは、農場が分散したり、複数か所ある農場でAIが発生した場合、これまでは発生農場以外の関連農場も疫学関連農場として殺処分の対象になる場合が多かったが、厳格なリスク管理(例えば①AI感染が否定できる②飼養衛生管理基準の順守が徹底されている③その他発生予防・まん延防止対策の実施)が行なわれている場合は、疑似患畜判定に当たって考慮するため、リスク回避のためにも農場の飼養衛生管理基準の厳格な順守・強化を奨励したもの。
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農水省は、この考えを今秋の鳥インフルエンザ防疫指針の見直しにも反映させる予定。同省が示す「厳格なリスク管理措置の一例」は次の通り。
一、高病原性または低病原性鳥インフルエンザ(AI)感染の否定=①患畜または疑似患畜の飼養管理に直接携わっている者が飼養管理を行なったすべての農場(発生農場を除く)の全家きん舎でAIを疑う症状が確認されていない②一日の家きんの死亡率が過去21日間の平均の2倍未満である③すべての家きんが、患畜または疑似患畜と過去7日間接触していない――こと。
二、飼養衛生管理基準の順守の徹底=飼養衛生管理基準が厳格に順守され、さらに、発生予防措置を強化する事項として、次に示すことに取り組んでいることが、飼養管理者が管理するすべての農場に対する発生時の家畜防疫員の立入検査で確認できる場合。
①衛生管理区域が明確に設定されており、従業員を含むすべての農場来訪者が記録され、保存されていること②全家きん舎において、防鳥ネットの網目の隙間が2センチメートル以下または同等の効果を有すると認められる設備が整備され、野鳥が家きん舎へ侵入しないための対策が徹底されていること③定期的に農場内の点検を行ない、農場敷地内にため池などの野鳥が飛来する可能性が高い場所に飛来防止対策が取られ、家きん舎の破損部や隙間および排気管からネズミなどの野生動物が家きん舎へ侵入しないための対策が徹底されていること④農場で使用する作業着、長靴などが当該農場専用であり、他農場へ持ち出されていないこと⑤農場に入退場する畜産関係車両が消毒設備により消毒されていること。
三、その他の発生予防・まん延防止対策の徹底=飼養管理者が管理するすべての農場において、病性判定日から遡って7日目から現在までに、次の措置が取られていたことが、発生時の家畜防疫員の立入検査で確認できる場合。
①家きん舎または衛生管理区域内への入場時にシャワーイン(農場間を移動する際に自宅などで入浴した場合を含む)が行なわれており、かつ、眼鏡などの身に着けているものを消毒するなどの措置が取られていること②飼養管理などに関連する器材および車両が専用で、定期的に洗浄・消毒されており、作業動線が他の農場と交わらないこと③敷地内にGPセンターまたは食鳥処理施設が設置されている場合、車両消毒装置が整備され、車両の入退場に消毒が徹底されていること。