全鶏会議がWEBセミナー開く 飼料動向、SDGs・BCPテーマに
全国養鶏経営者会議(会長=市田真新㈱デイリーファーム社長、略称・全鶏会議)は9月25日、ウェブ会議システム「Zoom」を使って令和2年度9月WEBセミナーを開いた。
冒頭あいさつした市田会長は「この卵価に負けないように、また、新型コロナウイルスによる様々な影響にも負けないように、とみんなに強く訴えたい。台風12号の上陸を心配していたが、進路がそれてよかった。こういう時こそみんなで元気を出してやっていきたい。今までのあり方が変わってきていると感じている。現状から変えていくという気持ちを持って我々も臨みたい」などと述べた。
飼料セミナーでは、兼松㈱穀物・飼料部穀物課の尾上翔太課長補佐が飼料穀物の最新動向について説明した。
トウモロコシの8~9月のシカゴ相場の動きについて「8月頭に一段階下がって310セント/ブッシェルを割り込んだが、8月10~11日に強風・竜巻『デレーチョ』が中西部を襲い、大豊作と思われてきたところから減産懸念が出て、相場がどんどん上がった。東欧・ウクライナの減産懸念もあり、右肩上がりの2か月だった」と振り返った。
10月~12月の強材料として「米国の収穫面積・単収のさらなる減少懸念」「中国による米国産穀物の大量買い付け懸念」「南米での天候相場」。弱材料として「いまだ潤沢な米国産トウモロコシの期末在庫率」「米中関係の緊張の高まり」「世界的に潤沢なトウモロコシ在庫」を挙げたうえで、シカゴ相場(12月限と3月限)は330~400セント/ブッシェルで推移するとの見通しを示し、「強材料が出尽くした感がある。10月に入り、しばらくは350セント/ブッシェルを超えたレベルで推移すると思われるが、収穫してみると思った以上に豊作だったということになり、その後は下落傾向に入ると思っている。
9月11日に発表した米国農務省の需給予測では『デレーチョ』の影響で米国産トウモロコシの単収と収穫面積は前月に比べて下がり、期末在庫率も17.06%に下がったが、昨年や一昨年よりも高くて豊作と言えるレベルで、このままシカゴ相場が一方的に上がるとは想定しにくい。世界のトウモロコシ需給では、米国と中国の生産量が減っているが、十分な量は確保できるとみている」と述べた。
大豆の需給については「米国産大豆も『デレーチョ』の影響を受けて単収などは下がっているが、期末在庫率は10.4%。昨年と一昨年は米中貿易紛争の影響を受けて期末在庫率は膨らんだが、2017年以前の1ケタ台に比べて10%を確保できているため、特に大きな問題はないと思われる」などとした。
このほか「中国がトウモロコシと大豆を米国から大量に買っている。度重なる台風の襲来で中国のトウモロコシ畑が被害を受けたという話や、中国国内で養豚の飼養頭数が増加したこと、ウクライナの減産で米国から買わざるを得なくなったなどの理由で、過去最速のペースで輸出成約が進んでいる。FOBベース(米国内の物流費と、農家やサプライヤーのマージンなどで構成)も中国による大量買い付けにより、引き続き高騰している」などと指摘した。
㈱ゼンケイの髙杉庄太郎取締役本部長は、配合飼料原料の価格動向や、鶏糞低減型飼料などについて説明した。
SDGs(持続可能な開発目標)・BCP(事業継続計画)セミナーでは、パルシステム生活協同組合連合会広報本部商品企画部の加藤かおり部長が「パルシステムの食育」、ニュートン・コンサルティング㈱の花井香奈子氏が「想定外は必ず起きる~BCPの基本~」と題して講演した。
加藤部長は「パルシステムの産直活動の考え方は、SDGsの掲げる『誰ひとり取り残さない』という考え方と非常に親和性があり、2017年の第1回ジャパンSDGsアワードでSDGs推進副本部長(内閣官房長官)賞を受賞した。
パルシステムでは単なる商品の売買だけでなく、作り手と食べ手が同じ生活者として話し合って仕入を行なうことを産直とうたい、事業の柱にしている。組合員が産地を直接訪れて、同じ生活者として交流することを最も大切にしている。
安全な食を確保するという消費者だけが優位に立った食の価値だけでなく、作り手にとっての価値も包括した地域づくりを目的としており、このことは食育そのものだと私たちはとらえている。
パルシステムでは、商品づくりの『7つの約束』を大切にしている。2014年からは、消費者が商品の背景を理解して社会性や環境面でも価格だけでない価値を知って商品を選択すること、生産者やメーカーと直接触れ合える機会を増やして作り手の思いや物語を共有すること、作られた商品を感謝の気持ちで無駄なく消費して食品廃棄を減らすことを『ほんもの実感!くらしづくりアクション』として取り組んでいる。この生産、消費、商品づくりの3つが一体となった事業が、パルシステムの活動だととらえている」と説明。
商品づくりの「7つの約束」(①作り手と顔の見える関係を築く②国産を優先する③環境に配慮する④化学調味料不使用⑤遺伝子組み換えにNOと言う⑥添加物にはできるだけ頼らない⑦組合員の声を反映させた商品づくりを大切する)に基づく取り組みを紹介した。
花井氏は「事業継続を脅かす想定外の災害が近年多発しているが、対策は後回しになりがちである。BCPの目的は、何らかの事故・災害から重要な資産(特に人命)を守ることと、事業を継続することである。従業員の命を守る緊急時対応計画(ERP)、会社の方針を決める危機管理計画(CMP)、事業継続策を決める事業継続計画(BCP)の3つを決める必要がある。
災害は必ず起き、甚大な被害を及ぼす。BCPは最悪の事態を回避するために事前に決めておく対策であり、有事のためだけのものではない。BCPを策定すると、全体を俯瞰してみてボトルネックとなる経営資源が確認できる。初めから完璧を目指さず、自社だけでできないときは他社と連携する。災害は想定外で変化するものと心得て、経営資源ベースで対策を考えて臨機応変に対応できるように準備する」などと述べ、①優先事業にフォーカスする②目標を設定し、会社としてやるべきことを明確にする③限られた経営資源で事業をどのように継続させるかを考える――ことがBCPを策定するポイントだと強調した。
BCP活動を効果的にする5つの鉄則としては「社長自らが指揮を執る」「社内で最も活躍するキーマネージャーたちが推進する」「現場の社員全体で活動する」「自社独自のやり方を考えて活動する」「何年も何年もやり続ける」を挙げた。