マレル・ポートリー社の『GP生鳥取り扱いシステム』
江夏商事グループの宮崎サンフーズが国内で初導入
集鳥から懸鳥までの作業を省力化、負担も軽減
マレル・ポートリー社(本社・アイスランド)が開発した、ブロイラーの集鳥から処理場での懸鳥前までの作業の省力化と負担軽減につながる『マレルGP生鳥取り扱いシステム』が、江夏商事㈱グループの宮崎サンフーズ㈱(岩崎和也社長―本社・宮崎県児湯郡新富町)に、日本で初めて導入された。昨秋から徐々に稼働を始めている。
世界の基準にも対応
国産チキンの需要増が続く中、生産現場は安定供給維持に向けた人手不足や担い手の高齢化などへの対応が喫緊の課題となっている。特に出荷時の集鳥は負担が大きい作業として次世代の担い手確保も難しくなっていることから、その省力化や自動化につながる機器が求められてきた。
GPシステムを開発したマレル社は「Advancing food processing」(食品加工をさらに進歩させる)を企業目標としている国際的な食品機械メーカー。幅広い自動化機器を世界180か国以上で販売し、日本でも旧ストークの時代から肉用鶏の自動処理・加工システムを30年以上にわたり販売している。
GPシステムのGPは「グロワー・トゥー・プラント」(Grower to Plant=育成農場から処理場まで)の略で、集鳥から懸鳥までの各工程の機器を適宜組み合わせて使えるモジュール式の生鳥取り扱いシステム。作業環境や製品の品質、動物福祉(AW)について世界各国・地域の基準に合致するように設計・製造されている。
特にAWへの対応では、輸送する生鳥の快適性の向上だけでなく、副次的な効果として最終製品の品質向上にもつながっていることから、欧州だけでなくロシアやサウジアラビア、アジアの国々を含む世界36か国の生産現場で導入されている。
高齢化や人手不足に対応
システムの要は生鳥コンテナで、1台が2列×4段の8部屋に分かれている。現在主流の集鳥カゴよりかなり大きく、1部屋に約25羽、全体で約200羽が入る。大きい分、空気の流れも良いとのこと。床面は①鶏糞が下に落ちにくい②鶏がつかみやすい③洗浄時に流れ落ちやすい――などの特長がある溝状の構造となっている。
開口部は農場用と処理場用の2面あり、農場用の開口部はコンテナ上面の半面がスライド式で開く構造。開口部が広いため、鶏をコンテナに入れる際に傷つける可能性を低減でき、集鳥作業者も習熟しやすく、集鳥時間の短縮につながる。
サイズは、ヨーロッパ仕様の幅2430ミリメートルのほか、日本のトラックにも積載できる幅2160ミリメートルのものがあり、高さは1215ミリメートル。従って、既存の生鳥輸送トラックが荷台の改造のみで使用できるとのこと。
コンテナ下部にはパレットが付いているため、農場に着くとフォークリフトでトラックから降ろし、鶏舎内へ搬入する。なお、海外では舎内専用のフォークリフト(イタリア製)も使われているとのこと。欧州などでは、GPコンテナを自動集鳥ロボット(主流は同じくイタリア製)と組み合わせて活用する農場も多いとのことで、人手不足の解決策として役立っているという。
集鳥後のコンテナは、再びフォークリフトでトラックの荷台に固定するため、トラックのドライバーは運転以外に荷積みなどを手伝う必要がなく、滑りやすい荷台での作業や疲労による事故の可能性も低減できる。
処理場に着いたコンテナは、フォークリフトで降ろしてラインに乗せると、処理場用の開口部が自動的に垂直に開くとともに、ラインをゆっくりと傾けて鶏を外に出す構造になっている。鶏を受け入れるベルトの床面は、トランポリンのように柔らかい素材を使用し、鶏のストレスやダメージの低減を図っている。
生鳥を出した後のコンテナは、残った鶏がいないかを確認する検査機を通った後、人の手を介すことなく自動洗浄機に回り、ユーザーや地域の基準を満たすレベルまで洗浄。1ラインのスピードは、様々な工場の状況に合わせて毎時1000羽から1万5000羽まで対応できる。
処理ラインにそのまま接続も
マレルジャパン㈱(本社・兵庫県明石市)のベイカー・カスパ社長は「国境が閉ざされるようなパンデミック下においても、マレル社はサービスを止めることなく、日本へも最初のGPシステムを納入することができた。オンラインでの専門技術者のサポートと現地のエンジニアの協力で、迅速な稼働と技術の定着を実現できている。
現在の集鳥カゴはアジアやブラジルでは主流だが、GPシステムのようなコンテナタイプの集鳥システムは、欧米を中心に世界の半分程度の生産者が既に導入している。
GPシステムは、マレルのガススタナー「CAS」(Controlled Atmosphere Stunning)にも、そのまま同一ラインで接続できる。CASは二酸化炭素と酸素を併用し、鶏が眠るように段階的にスタニングするため、鶏が暴れて外傷やうっ血ができるようなこともない。
製品は新たにVPN(Virtual Private Network=専用ネット回線)を使った運営管理システムにも接続できるようになったため、世界のどの地域においても、毎日途切れることなく24時間体制でのサポートが可能になった。
マレルジャパンでは、オンライン会議システムなどを活用して、製品のご案内を随時させていただいているため、ご興味やご質問があれば、お気軽にご連絡いただきたい」とコメントしている。
問い合わせは同社セールスマネージャーの瓦田純氏(Eメール=jun.kawarada@marel.com)へ。