売れ行き好調で推移、ひな不足状態続く 食鳥協理事会
(一社)日本食鳥協会(佐藤実会長)は3月22日に理事会を開き、平成29年度の事業計画・予算案と、㈲カハノフーズ(河野志寿子社長―本社・大分県宇佐市、生産加工部会、九州支部)の入会を承認した。
冒頭あいさつした佐藤会長は「ブラジルの事件で騒がしいが、本日の日経新聞では、対象となっている工場が1社あり、そこから輸入申請があれば保留にする、と報じられていた。輸入を全面的に差し止める措置ではないと理解している。ただ小売店の対応を聞くと、解凍のブラジル産チキンはすべて売り場から撤去してほしいという強い要請も出ているようだ。もちろん鶏肉の業界に限らず、食肉に関する不正行為であるため牛肉、豚肉の会社も対象になっている。調べていく間に、もっと深刻な影響が出てくるかもしれない。
国産チキンの状況は、需給がバランス良く保たれている。どちらかというと相場先行で、本当に需要があって売れているのかと疑問視するきらいもなきにしもあらずだが、特にむね肉は足りない状況が続いている。12月よりも、2月あるいは3月前半の値段のほうが高いという今までに例のない状況に加えて、ブラジルの事件が起きたため、今後の動向を注視する必要がある」などと述べた。
理事会では、各部会や支部の活動状況、28年度事業の進捗状況などが報告されたほか、29年度の事業計画・予算案が承認された。
29年度は①緊急時生産流通体制支援事業(うち緊急時の鶏肉処理体制整備等)②国産鶏肉生産量等調査事業③国産食肉等新規需要創出緊急対策事業④国産食肉給食利用促進事業⑤地鶏銘柄鶏振興緊急対策事業⑥鶏肉輸出関連業務(畜産物輸出特別支援事業)⑦国産鶏肉生産動向等情報収集提供事業⑧国産鶏肉安全安心等情報普及増進事業⑨国産鶏肉適正取引適正表示等普及推進事業⑩「国産チキンまつり」実施事業⑪食鳥処理加工技能評価試験実施事業⑫国産鶏肉市場活性化対策事業⑬研修視察の実施――などに取り組む。
鶏肉の需給動向などについては、各部会から次のように報告された。
▽生産加工部会=生産はおおむね順調で、大腸菌症に苦しんだところも散見された。USチャンキーの話も特になく、だいぶ対応できているのかなと受け止めている。
厚生労働省からカンピロバクター食中毒について話があり、工場から出荷する鶏肉のパッケージに「加熱用」と表示する必要があるのではないかと言っていた。
薬剤耐性菌について農林水産省から話があり、コリスチンという抗生物質をG7各国の中で使っているのは日本だけで、平成30年度に廃止される見込みとのこと。これによって生産効率がどうなるかは、見当がつかないということであった。
緊急時鶏肉処理体制整備では、関西地区は4月1日に協定を締結する予定で、中部地区は締結に向けて協議中である。
▽荷受部会=売れ行きは大変良く、供給不足を感じている。3月もむね肉、もも肉の販売は好調。特にむね肉は特売を抑えながら、何とか量を間に合わせている。量販店では、むね肉の販売は前年比110%、もも肉は102%くらいで大変好調と言っている。副産物で厳しいのはレバーくらいで、手羽元は何とか消化している。4月にミツカンが新たなCMを用意しているようで、相乗効果につながればと期待している。
荷受も人手不足で、1次加工や1.5次加工がなかなかできない。ドライバー不足で運送会社から物流費の値上げ要請が来ている。競合他社も含めた物流のアライアンスについて総論は賛成で、各論については各社が進めていけばいいと思う。
▽小売部会=昨年のクリスマスは、小売りは全般的に良くなかったが、業務卸はそこそこ良かった。曜日の関係で外食に流れた傾向があったと思う。鳥インフルエンザ発生の影響も多少あったのかもしれない。
業務卸では鶏肉を扱う店が増えており、飲食店では鶏肉を扱う新規出店も多い反面、競合も激しいため閉める店も多い。何でも扱う業者が、相場高の中でも安い値段で鶏肉を卸している。価格では勝てないため、どのように差別化を図るかが課題になる。給食や病院関係から1.5次加工の要求がかなりあるが、満足に対応できていない。
消費は生肉から加工品へ確実にシフトしている。小売りだけでなく、業務卸でもホテルなどから1.5次加工の商品を求められることが増えている。依然として地産地消が求められている。
飲食関係ではラーメン屋や焼き鳥屋がかなり増えており、ラーメン屋のサイドメニューで鶏肉の揚げ物が売れている。道の駅などでも加工品や半製品が売れている。居酒屋や焼肉屋が焼き鳥屋に業態を変えている。
小売りでは1月後半から全般的に気温が低かったため、地鶏や合鴨、ぶつ切りなどの鍋商材がよく売れた。ただ、地鶏もブロックでは売りづらいため、切り身や個食鍋で売り上げを作っている。今後、暖かくなると地鶏関係の売り上げは縮小される。
▽種鶏ふ卵部会=ひなが不足している。3月に入り種卵の在庫は全くなく、ほぼ綱渡り状態で、いつ欠品してもおかしくないような感じで推移している。種鶏導入後の農場での電気事故や火災、雪害による鶏舎倒壊などによって種鶏の現存羽数が非常に減っている。
また、現存する種鶏の中でUSチャンキーが一番多くなっているが、産卵率はまあまあでも受精率が悪く、納品するために種卵を孵卵機にセットしていくため、在庫が食われている。USチャンキーのコマーシャルのえ付けは今年7月がピークになるため、種鶏の割合が多い。この影響で種卵を食いつぶされているため、今年の需要期はどうやっていこうか、非常に頭が痛い。
各社で種鶏導入の時期は異なるが、4~5月に在庫がある会社は6~7月で減っていき、今ない会社は6~4月に少し盛り返すような感じでいくと、7月くらいまでは綱渡り状態が続き、9月に入って需要期のひなをどうするかが今年の一番の課題である。