農林水産省が都道府県に通知 高病原性鳥インフルエンザ等の防疫対策の徹底について
HPAIへの警戒必要
渡り鳥の本格的な飛来シーズンを迎え、高病原性鳥インフルエンザ(HPAI)の発生予防とまん延防止対策の徹底が求められている。今年8月以降も、家きん農場ではアジアの台湾、ベトナム、欧州のフランス、ベルギー、ルクセンブルク、ロシアなどでの発生が国際獣疫事務局(OIE)に報告されており、アフリカでも発生している。また、野鳥ではフィンランド、ポーランド、エストニア、オランダ、ロシアでの発生が確認されおり、対策が急務となっている。
渡り鳥の本格的な飛来を迎えるに当たり、農林水産省が9月10日付で各都道府県に通知した「令和3年度における高病原性鳥インフルエンザ等の防疫対策の徹底について」の概要は次のとおり。
発生予防対策
(1)家きん飼養農場における飼養衛生管理基準の順守指導の徹底
昨年12月から本年2月まで、毎月、飼養衛生管理者による飼養衛生管理基準の順守状況の一斉点検を実施するとともに、都道府県にはその結果を取りまとめて報告いただいた。
これまで、回を重ねるごとに、点検結果の改善が進んでいるが、一部の農場では依然として飼養衛生管理基準の不順守が認められていること、また、海外の発生状況を踏まえれば、今シーズンもわが国での発生リスクが高いと考えられることから、改めて、飼養衛生管理の改善指導を一層強力に推進していただくとともに、今年度も飼養衛生管理者による飼養衛生管理基準の順守状況の一斉点検を実施すること。
一斉点検については、令和3年10月から令和4年3月までの間、飼養衛生管理者に対し、次の7項目の順守状況を点検するよう指導し、各都道府県で結果を取りまとめ、毎月20日までに動物衛生課まで報告すること。
①衛生管理区域に立ち入る者の手指消毒等(項目13)
②衛生管理区域専用の衣服と靴の設置・使用(項目14)
③衛生管理区域に立ち入る車両の消毒等(項目15)
④家きん舎に立ち入る者の手指消毒等(項目20)
⑤家きん舎ごとの専用の靴の設置と使用(項目21)
⑥野生動物の侵入防止のためのネット等の設置、点検と修繕(項目24)
⑦ネズミと害虫の駆除(項目26)
まん延防止対策
(1)早期発見・早期通報
家きんの所有者、飼養衛生管理者、獣医師等に対して、家畜伝染病予防法(昭和26年法律第166号)第13条の2第1項の農林水産大臣が指定する症状の内容について周知するとともに、当該症状を呈している家きんを発見したときは、遅滞なく、当該家きんまたはその死体の所在地を管轄する都道府県にその旨を届け出るよう、指導すること。
また、本病は家きんの死亡羽数の増加が比較的緩やかな場合もあることを踏まえ、家きんの飼養者に対し、平時から飼養する家きんの健康状態について注意深く観察するとともに、死亡羽数の増加はもちろんのこと、産卵率の低下、さらには元気消失といった異状が見られた場合の早期通報を徹底するように周知すること。
(2)的確な初動対応の徹底と連携体制、埋却地等の確認
万が一、本病が発生した場合に備え、速やかに防疫措置が講じられるように、防疫指針に基づき以下の取り組みを行なうこと。なお、防疫指針については「農林水産省鳥インフルエンザ・豚熱・アフリカ豚熱合同防疫対策本部を踏まえた今後の対応について(第2報)」(令和3年9月2日付3消安第3079号)で示した一部変更予定案を参照すること。
①都道府県は、家きんの飼養者、獣医師等から前記(1)(早期発見・早期通報)の届出を受けた場合には、速やかに、防疫指針第4に基づく対応を的確に実施できるよう、体制を改めて確認するとこと。
②防疫指針第2-2の2の(1)に基づき、必要な人員、防疫資材、検査試薬、特殊自動車等の確保、またはそれらの緊急時における円滑な入手について、調達先の確認、調整(緊急時の連絡体制の確認を含む)等を行なうこと。
③本病発生時の防疫措置に伴い必要となる埋却地と焼却施設等の確保状況ついて確認を行ない、事前確保が十分でない場合は、防疫指針第2-2の2の(3)に基づく調整を行なうこと。
④防疫指針第2-2の2の(5)に基づき、県内関係部局、近隣の都道府県、市町村、関係機関と関係団体との連携体制の確認をすること。
(3)防疫演習(机上演習を踏まえた防疫計画の検証・改善)
(2)(的確な初動対応の徹底と連携体制、埋却地等の確認)の取り組みを徹底し、迅速な防疫措置を講じる体制を確立するためには、初動対応を含めた防疫対応に係る各種計画を作成する必要があるが、こうした各種防疫計画に実行性が伴わなければ、万全の体制を構築したことにはならない。
そこで、防疫計画の実行性を確認するため、(2)の取り組みと並行して、各都道府県における既存の防疫計画等を踏まえ、本年10月15日までに発生時の具体的な防疫対応について机上演習を実施すること。実施に当たっては「令和3年度全国高病原性鳥インフルエンザ防疫演習実施マニュアル」(以下「演習マニュアル」という)を参考にすること。
また、机上演習の結果を踏まえ、各種防疫計画を検証するとともに改善点を速やかに見直すこと。見直した後の各種防疫計画の内容を演習マニュアルに記載した様式(①発生想定農場の概要②動員計画③必要となる資材の調達計画④患畜等の死体の処理計画〈焼却または埋却〉⑤作業計画〈全体スケジュール表〉)にまとめ、10月15日までに動物衛生課まで必ず提出すること。
その他(野鳥のサーベイランス)
環境省から野鳥のサーベイランスの協力依頼があったことを踏まえ、引き続き、防疫指針第4の7に基づき、自然環境部局と相互に連絡、適切に分担して野鳥のサーベイランス検査を実施する体制を構築するとともに、野鳥等で本病ウイルスが確認された場合には、必要に応じて、周辺農場に立ち入り検査を実施するほか、注意喚起と家きんの健康観察の徹底を指導すること。