鶏卵相場260円台に 「適切な価格転嫁が必要な局面」

鶏卵相場(JA全農たまごM基準)は5月11日、東京と名古屋で10円上伸し260円に。5円の上伸で255円となった大阪を上回り、〝東高西低〟となった。260円台の相場は、生産調整後に襲った猛暑で産卵が回復せず、特に加工向け需給がひっ迫した2013年11~12月(270~280円)以来7年半ぶり。

東日本の高騰要因については、生産面で3月までの鳥インフルエンザ(AI)発生に伴い千葉・茨城・栃木3県の採卵鶏が合計約540万羽減少した影響が大きいほか、1月のえ付けが前年比で16%少なかったことも指摘されている。

需要面では特に加工関係で行楽や土産物向けが低迷する一方、家庭で手軽に食べられる冷食や総菜向けが伸びるなど底堅い中、手当てのタイミングにAI発生が重なったことで卵が著しく不足。

小売り関係も、消費者が殺到した昨春に比べると需要は減少しているが、平年からは1割程度上回っている。ただ、相場上昇で相対的に割安となっている固定価格商品の発注を強めているチェーンを除くと「定期の納品数量で間に合っている」との声や、この状況下でも集客のため安売りを続けるスーパーがみられ、鶏卵の不足感に拍車を掛けているとの指摘もある。鶏卵関係者からは「(卵不足や飼料価格高騰などの)現状を認識し、売価を相場を反映した水準まで上げるべき」との声も複数聞かれている。

外食関係も、全体では平年から2割程度落ち込んでいるとされるが、昨春に比べると落ち込みは小さい。学校給食が再開し、大型連休に海外に出る人がない中で、卵に限ればランチ需要が堅調に推移し、デリバリー・持ち帰りに対応する店舗も増加。居酒屋などの業態は大きなダメージを受けているが、洋風ファストフードなどの業態は好調で、マクドナルドは26日から卵を使った期間限定メニューを発売予定。

西日本についても、需要面では東日本と同様の環境でタイト感は続いているが、生産面ではAIの大きな被害を受けた四国などの産地が徐々に回復し、九州の生産も堅調なため、梅雨や気温上昇が本格化する6月以降の需給は、東西ともに現状より緩和するとみられている。

年内については、現状の予測では生産量は回復してくるものの前年の水準には戻らず、基調として需要が供給を上回る局面が今年一杯は続くとみられている。ただし、産地も生産のいち早い回復や飼養期間の延長などで需要に応える努力を継続するとみられるほか、新型コロナの感染動向やワクチン接種の進捗など不透明な要素が多く、予断を許さない情勢。

さらに、今年2月までの約1年間は新型コロナ感染拡大防止を目的に出された緊急事態宣言などでのたび重なる要請に伴う需要低迷で、相場は200円台を大幅に割り込んで推移した中、大豆・穀物相場の急騰による飼料価格の高騰で、卵の生産コストはキロ25円前後上がっている。

飼料原料高は中国の強い需要を主因として当面継続するとみられており、現状の原料コスト高騰分を加工品や小売りも含めて川下の末端まで適切に価格転嫁することが必要となっている。