令和3年度養鶏関係予算 輸出拡大へのサポートや衛生対策など
政府は昨年12月21日に令和3年度予算案を閣議決定した。このうち、鶏卵生産者経営安定対策事業(前年度と同額)は1月5日号に掲載したが、その他の養鶏関連予算の概要は次の通り。
「食肉等の流通合理化に向けた施設整備への支援」は162億1400万円(前年度200億2000万円)。安全で高品質な国産食肉などの供給体制を構築するため、流通・処理コストの低減や、製品の高付加価値化などに必要な食肉等流通処理施設(産地食肉センター、食鳥・鶏卵処理施設、家畜市場)の整備を支援するもの。補助率は3分の1以内。
「畜産生産力・生産体制強化対策事業」は8億8700万円(前年度9億円)。家畜の増頭と併せ肉用牛・乳用牛・豚・鶏の改良や飼料作物の優良品種の利用を推進するとともに、肉用牛の繁殖肥育一貫経営や地域内一貫生産、和牛の遺伝子型検査、国産飼料の一層の増産と利用の拡大のための体制整備により、畜産物の生産力と生産体制の強化を図る。鶏では始原生殖細胞(PGCs)保存技術等の活用により改良の加速化等を支援する。
「畜産GAP拡大推進加速化」は1億2000万円(前年度1億3000万円)。畜産の競争力強化を図る観点から、畜産GAPの普及・推進体制の強化を図るための指導員等の育成や、GAP認証取得等の取り組みを支援する。
「飼料穀物備蓄対策事業」は17億5000万円(前年度と同額)。配合飼料製造事業者等が、不測の事態に備えて策定している事業継続計画(BCP)に基づいて実施する飼料穀物の備蓄、国内の災害時における配合飼料の緊急運搬、関係者の連携体制の強化等の取り組みを支援することにより、配合飼料の安定供給を確保し、畜産経営の安定を図る。民間団体を通じて補助する。
「水田活用の直接支払交付金」は3050億円(前年度と同額)。水田を活用した飼料用米、麦、大豆などの戦略作物等を生産する農業者を支援する。飼料用米生産の助成は、収量に応じ10アール当たり5.5~10.5万円。水田フル活用ビジョンに基づく産地交付金では飼料用米の3年以上契約に10アール当たり1.2万円など。
「戦略的マーケティング活動の強化」は55億6200万円(前年度27億6000万円)。2030年までに農林水産物・食品の輸出額5兆円の目標実現に向けて、戦略的な輸出拡大へのサポートや、輸出に取り組む優良事業者の表彰、日本食・食文化の魅力発信による日本産品の海外での需要拡大を支援する。
「食品産業の輸出向けHACCP等対応施設の整備」は9億7000万円(前年度14億7200万円)。農林水産物・食品の輸出拡大を図るため、食品製造事業者等の施設の新設と改修、機器の整備を支援する。この事業は、令和2年度第3次補正予算でも90億円がついている。
「家畜生産農場衛生対策事業」は6億3400万円(前年度6億5400万円)。生産農場における飼養衛生管理の向上や、家畜の伝染性疾病のまん延防止・清浄化に向け、農場指導、検査、ワクチン接種やとう汰の取り組みを推進する。また、HACCPの考え方を取り入れた家畜の飼養衛生管理(農場HACCP)への取り組みを強化する。
「飼養衛生管理情報通信整備事業委託費」は新規で5000万円。畜産農場の衛生関連情報を取り扱う電子システムを構築することにより、指導業務の効率化等を通じた農場における飼養衛生管理水準の向上と、家畜の伝染性疾病の発生時における迅速な防疫措置の実施を推進する。
「戦略的監視・診断体制整備推進事業委託費」は7900万円(前年度7800万円)。事業内容は①家畜伝染病監視・診断体制整備推進事業②野生動物監視体制整備事業――に取り組む。
「わが国のOIE認定施設活動支援事業」は600万円(前年度と同額)。わが国の動物疾病診断・検査体制への信頼性向上のため、OIE認定施設の国際的な活動を支援する。
「家畜伝染病予防費」は67億3300万円(前年度85億8800万円)。家畜伝染病予防法に基づき、口蹄疫、豚熱、アフリカ豚熱、高病原性鳥インフルエンザ等の家畜の伝染性疾病の発生予防とまん延防止の国の負担分。
「家畜衛生の推進」は〝消費・安全対策交付金〟22億1000万円(前年度30億2000万円)の内数。ソフト面では、都道府県等が地域の実態を踏まえて実施する、家畜疾病に関する監視体制の整備、発生予防・まん延防止の取り組み、畜産物の安全性向上や野生動物の対策強化の取り組みを進める。ハード面では、適切な病性鑑定を実施するために必要な家畜保健衛生所の施設整備、地域における車両消毒施設の整備、農場への野生動物の侵入防止柵の整備を支援する。
「動物検疫所の検疫事業費」は20億4200万円(前年度15億6900万円)。動物検疫体制を充実強化することにより、アフリカ豚熱、口蹄疫、高病原性鳥インフルエンザ等の家畜の伝染性疾病がわが国に侵入しないよう、水際措置に万全を期す。
「薬剤耐性対策」は消費・安全対策交付金22億1000万円(前年度30億2000万円)の内数で、3億9500万円(前年度3億900万円)。畜産・水産分野における薬剤耐性菌の監視・動向調査を強化し、抗菌剤の慎重な使用に関する研修を実施するとともに、ワクチン、免疫賦活剤、代替薬等の開発等を支援する。
「安全な生産資材の安定供給の推進」は4億7400万円(前年度4億6300万円)。生産資材の安全確保に向けた科学的データの収集分析、リスク管理措置の基礎となる試験法の開発、新技術を活用した動物用医薬品等の開発支援、肥料の自主的な品質管理に向けた必要なマニュアル策定や技術研修等を推進する。
「生産資材安全確保対策事業委託費」は2億6300万円(前年度2億6400万円)。生産資材の安全確保に向けた科学データの収集分析、リスク管理措置の基礎となる試験法の開発等を推進する。
「動物用医薬品対策事業」は6500万円(前年度と同額)。有効・安全な動物用医薬品等の迅速承認、市場規模が小さい家畜や薬剤耐性対策に必要な動物用医薬品等の開発等を推進する。
「動物医薬品検査所の検査事業費」は3億6400万円(前年度3億3600万円)。動物用医薬品の品質、有効性と安全性の確保を通じて、動物の命を守り、食品の安全を確保することによって人の命を守る。
「薬事監視事務委託費」は200万円(前年度と同額)。動物用医薬品の品質、安全性と有効性の確保を目的として、都道府県の薬事監視員が検定品の採取、製造所への立ち入り検査等を行なう。
「獣医療提供体制整備推進総合対策事業」は2億6100万円(前年度2億4100万円)。地域の産業動物獣医師への就業を志す獣医大学への地域枠入学者・獣医学生に対する修学資金の給付、獣医学生を対象とした臨床実習、女性獣医師に対する就業支援等により、産業動物獣医師の育成・確保を図る。