「コメ政策と飼料用米の今後」で座談会 日本飼料用米振興協会
(一社)日本飼料用米振興協会は11月17日、東京都中央区の食糧会館で第1回「コメ政策と飼料用米の今後に関する座談会」を開いた。
冒頭あいさつした海老澤惠子理事長は「本来であれば、この会場に100人くらい集まっていただいて意見交換会を開く予定であったが、新型コロナウイルスの感染拡大が収まらない中で致し方なく、座談会の模様を撮影してホームページに掲載することになった。
当協会の役割は、いろいろなところから情報をいただき、問題を提起して議論する場を作ることだと思っている。飼料用米の生産量が減少ぎみになっていることを大変残念に思いながら、何とかしなければという思いでシンポジウムを毎年開いてきたが、今年3月は中止になった。今の状況をみると、来年3月もどうなるか分からない。今回は生産現場から率直な意見を出し合って、課題をさらに深めていきたい」などと述べた。
座談会では、加藤好一副理事長(生活クラブ事業連合生活協同組合連合会顧問)が司会、(農)北総養鶏組合(千葉県旭市)の宮澤哲雄理事と㈱フリーデン(神奈川県平塚市)の澤田一彦相談役、㈱秋川牧園(山口県山口市)の村田洋生産部次長(電話参加)がパネラー、同協会の信岡誠治理事(元東京農業大学農学部教授)が助言者を務め、①今の米情勢をどうみているか②付き合っている産地・生産者はどんな様子か③飼料用米を使う理由は④飼料用米による耕畜連携の成果をどう評価するか⑤飼料用米の生産が2018年以降減産となった理由は⑥飼料用米助成の見直し圧力もあり得るがどう思うか⑦コメ政策・飼料用米政策はどのような改善方法があるか⑧日本農業の持続性を確保していくには⑨新基本計画をどう評価し期待するか――などを論点に意見交換した。
宮澤氏は「北総養鶏組合としては約400トンの飼料用米を購入しているが、自家配工場を持っていないため、提携している昭和産業に委託して飼料用米を配合したエサを作ってもらっている。
飼料用米は、輸入トウモロコシのように臭化メチルによる燻蒸・消毒作業が必要なく、鶏の嗜好性は高い。
堆肥を水田で使ってもらえると、理想的な耕畜連携になると思っているが、日本全国で気候が異なるため難しい。堆肥を使いたいが、性状や成分によっては耕種農家の使い勝手が悪い。飼料用米は収量の目標を超えないと交付金が減ってしまうため、たくさん堆肥を使っても収量が上がらないと、耕種農家の採算が合わなくなる。畜産農家が本当に望んでいる耕畜連携には至っていない」などと述べた。
澤田氏は「平成15年から飼料用米への取り組みを始めた。もともとのコンセプトはCSR(企業の社会的責任)であったが、現在はSDGs(持続可能な開発目標)に軸足を置いている。
耕畜連携については、研究サイドと現場はかなりやっているが、行政は縦割りで、米分野と畜産分野の連携がない。飼料用米の保管も大きな問題であり、コンタミを防止するために主食用米のサイロは使わせてもらえず、乾燥機の使用も一番最後。補助金も基盤整備に配慮しないとなかなか進まない」とした。
村田氏は「山口県は今年、トビイロウンカの被害を受けて、水稲の作況指数はいまだかつてない73で不良。飼料用米で収入保険制度が対象になるのは、収穫した飼料用米の販売金額の部分のみで交付金(補助金)は含まれないため、ほとんどの稲作農家は飼料用米を失敗すると、すべて自腹という状況になっている。理屈としては分かるが、交付金は稲作農家の大事な収入源であるのも事実であり、大きな問題だと思っている。国には、多収品種のみで飼料用米を生産していくことについて検討してほしい」などと述べた。
信岡氏は「いかに飼料用米を定着させ、増産を図っていくかが最大の課題」であるとし、①米の民間在庫過剰に伴う米価下落と生産意欲の減退懸念②これに関連する飼料用米生産の動向、製作の整備・強化の必要性③コロナ禍における、かつコロナ後の世界の食料動向④2020年3月に閣議決定された「食料・農業・農村基本計画」の評価と計画実行への注視――について説明した。