日本食鳥協会が創立60周年で記念式典

国産食鳥肉使用の老舗9社に感謝状、ミツカンに特別賞

佐藤実会長

感謝状と特別賞を受けた各社の皆さん(水たき元祖水月、ぼたんは欠席)

(一社)日本食鳥協会は、昭和35年(1960年)に設立されて今年で60周年を迎えたことから10月29日の「国産とり肉の日」に、東京都港区の浜松町東京會舘で創立60周年記念式典を開いた。新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止の観点から、参列者を約50人に制限し、式典後の祝賀会は中止した。

記念式典は、宇都浩司副会長の開会の辞で始まり、鈴木章夫副会長が「60周年を迎え、設立から運営などに携わってきたすべての物故者に対して黙とうを捧げたい」と述べて、参加者全員で追悼した。

主催者を代表してあいさつした佐藤実会長は「昭和35年の創立以来、各方面のご支援、ご協力を得ながら、おかげさまで今年めでたく〝還暦〟を迎えることができた。これも先人たちの並々ならぬ食鳥産業全般へのご尽力と、将来を見据えた会員各社の事業拡大の先見性に心から感謝を申し上げる。

近年、目覚ましい食生活の多様化が進む中、地鶏をはじめとする国産チキンは、動物性たんぱく質の供給素材としてはもちろんのこと、抗酸化作用や抗疲労効果、さらには認知症の予防が期待できるなど、機能性が注目される畜産物として、老若男女を問わず大変注目されている食品である。

年間1人当たりの鶏肉消費量は、国産の畜産品の中で主流であった豚肉を長年上回り、さらに増加を続けている。今後とも国民に愛される食品として、国産チキンの加工品も含めて大いに期待しているし、その期待に応えていく責任がある。

世界中で発生している鳥インフルエンザや今回のコロナ禍など、60年の歴史でも経験できなかった事態を乗り越えられる強靭な体力が要求される。そのためには、ご来賓の行政の方々に今まで以上のご指導ご鞭撻を重ねてお願い申し上げる。

従来の記念式典では、食鳥産業の業界関係者らを表彰していたが、今回は〝還暦〟を迎えたお祝いを含めて、長年にわたり国産食鳥肉の提供を通じて日本の食鳥、食文化の普及と伝承にご尽力いただいている全国の代表的な企業に感謝状と特別賞を授与することになった。また、会員各社には記念品として、料理研究家のコウ静子先生の著書『丸鶏レシピ』とDVDを送付する予定である。これを機会に生活者にとって丸鶏はとても扱いやすく、使い勝手が良い食材であることを再認識していただき、たくさんのおいしさや楽しさを感じていただきたいと思う。

今回、感謝状を贈呈する大先輩の企業には、創業時から丸鶏を使ったおいしい料理を提供し続けているところも多く、家庭でも丸鶏の活用が広がればと願っている。皆様方のさらなる普及・啓発を期待している。

今後とも我々の国産チキンが国民から永遠に愛され続ける食品として消費を拡大すべく、生産基盤の拡充や人的資源の確保、環境問題など業界として取り組むべき課題は多々あるが、国産食鳥産業の末永い発展のため、業界関係者のさらなるご尽力とご支援と賜るようお願い申し上げる」などと述べた。

鈴木稔専務理事は、食鳥産業の変化ついて「生体出荷重量は昭和35年度の2.2万㌧から平成30年度は209万㌧で95倍になった。飼養農家数は昭和40年度の2万戸から平成30年度は2260戸で9分の1になったが、1戸当たりの飼養羽数は892羽から6万1000羽で68倍になった」と述べたほか、直近10年間の歩みとして、①高病原性鳥インフルエンザの発生と関連対策②東日本大震災の発生と関連対策③TPP交渉への参加決定と関連対策④消費拡大への取り組み推進⑤国産鶏肉の輸出促進⑥平成29年のぐるなび「今年の一皿」は「鶏むね肉料理」に決定⑦食品衛生法の一部改正への対応――について紹介した。

長年にわたり国産食鳥肉の提供を通じて日本の食鳥、食文化の普及と伝承に貢献した㈲岩戸屋(水炊き、福岡市中央区)、国技館サービス㈱(国技館焼き鳥、東京都墨田区)、㈲水たき元祖水月(博多水炊き、福岡市中央区)、㈱玉ひで(鳥料理、東京都中央区)、㈱鳥せゑ(鶏料理、京都市伏見区)、㈲鳥彌三(料亭、京都市下京区)、㈲とり要(名古屋コーチ会席、名古屋市中区)、㈱花善(鶏めし弁当、秋田県大館市)、㈲ぼたん(鳥すきやき、東京都千代田区)に感謝状が贈られた。

また、お酢ベースの調味料を使って鶏肉の簡便でおいしいレシピを開発・普及し、国産鶏肉の消費拡大に貢献した㈱Mizkan(ミツカン、本社・愛知県半田市)に特別賞が贈られ、受賞各社の代表者がお礼を述べた。

多数の来賓を代表して農林水産省生産局畜産部の渡邊毅部長、(独)農畜産業振興機構の佐藤一雄理事長(代読・庄司卓也副理事長)、全国食鳥肉販売業生活衛生同業組合連合会(略称・全鳥連)の新井眞一会長が祝辞を述べた。

渡邊部長は「食鳥産業は、生産農場の実質直営化や食鳥処理の機械化、流通の合理化を進め、生産・処理加工・流通を一貫するインテグレーション化を推進することで、徹底したコスト削減と品質向上を図り、驚異的な発展を遂れた。輸入鶏肉との競争でも、インテグレーションの強みを生かして、新鮮な冷蔵鶏肉を流通させるコールドチェーンを確立することで、冷凍流通の輸入鶏肉との品質での差別化を実現し、今日の国産鶏肉の地位を築いた」と称えた。

佐藤理事長は「半世紀以上の長きにわたり、歴代役員のリーダーシップの下、全国の会員と共に生産・流通の改善や消費の拡大などに取り組み、食鳥産業の発展や国民食生活の改善・向上に多大な貢献をしてきた。皆様方のご尽力とご功績に深い敬意と感謝を表する」とした。

新井会長は「日本食鳥協会が創立された昭和35年は、食鳥業界を車に例えて『車の両輪』として共に歴史を歩んできた鳥環連、現在の全鳥連が創立された年でもある。60周年の今年は新型コロナウイルス感染症という非常事態が起きたが、これまでもオイルショックや鳥インフルエンザ発生など、厳しい事態を業界が一致団結して克服してきたように、日本食鳥協会がリーダーとなり、業界のさらなる発展に寄与されると信じている」と述べた。

事務局から創立60周年の記念品と、二代目マスコットキャラクターのデザインが紹介され、佐伯裕志副会長による閉会の辞でお開きとなった。