飼養衛生管理者の選任義務付け 改正飼養衛生管理基準が公布
鶏その他家きんの施行は10月
わが国で26年ぶりに発生した豚熱(CSF)や、アジア地域で感染が拡大しているアフリカ豚熱(ASF)を踏まえ、今年4月3日に、飼養衛生管理基準の順守を一層徹底することなどを目的とした「改正家畜伝染病予防法」が公布され、この法律により7月1日にすべての家畜の所有者に「飼養衛生管理者」の選任が義務付けられた。また、同法に基づく「改正飼養衛生管理基準」が6月30日付で公布され、豚等は7月1日、鶏や牛・馬その他の畜種は10月1日に施行される。
7月1日ですべての家畜の所有者に義務付けられた「飼養衛生管理者」は、飼養衛生管理基準を正しく理解していない一部の家畜の所有者もいたのではないかとの考えから、衛生管理区域(家畜の所有者が農場に設定している区域)ごとに、きめ細かに情報提供し、家畜に接するすべての従事者が適正な飼養管理を実施し、家畜の伝染性疾病の発生予防・まん延防止を徹底するために新設した制度。
飼養衛生管理者に資格は必要なく、家畜の所有者自身だけでなく、従事者がなることもできる。ただ、原則として衛生管理区域ごとに選任する必要があるため、農場が分散している場合は、農場ごとに飼養衛生管理者を選任する必要がある。選任しなかった場合は、飼養衛生管理基準不順守に該当し、順守命令違反の場合、100万円以下の罰金が科されるほか、氏名が公表される可能性がある。
飼養衛生管理者の業務は、①衛生管理区域に出入りする者の管理(チェック・指導等)②衛生管理区域の従業員への飼養衛生管理基準の周知・教育等③国・都道府県から共有される家畜衛生に関する情報を踏まえた対応――の3つ。
7月1日までに最寄りの家畜保健衛生所に報告する事項は、飼養衛生管理者の①氏名②住所③電話番号④メールアドレス⑤管理する農場名と衛生管理区域名⑥当該衛生管理区域の代表住所――で、令和3年度以降は毎年、都道府県に提出する家伝法第12条の4に基づく定期報告書による報告となる。
定期報告で飼養衛生管理者の氏名や連絡先などを家畜保健衛生所に報告しなかったり、虚偽の報告をした場合は30万円以下の過料が科される可能性がある。
農林水産省消費・安全局動物衛生課は、各畜種の「改正飼養衛生管理基準」と「飼養衛生管理基準の改正概要」を6月30日付でホームページに公表した。
改正飼養衛生管理基準は、取り組みの目的ごとに「Ⅰ 家畜防疫に関する基本的事項」「Ⅱ 衛生管理区域への病原体の侵入防止」「Ⅲ 衛生管理区域内における病原体による汚染拡大防止」「Ⅳ 衛生管理区域外への病原体の拡散防止」――に体系化し、防除対象とする感染源の種類(人、物品、野生動物、飼養環境、家畜)ごとに項目を分類している。
「Ⅰ 家畜防疫に関する基本的事項」では、家畜の所有者の責務、飼養衛生管理マニュアルの作成など、飼養衛生管理基準を現場で徹底するための取り組みを規定している。
さらに今回のCSF対応の中で追加的に推進してきた飼養衛生管理基準順守指導の手引き、各種通知などに基づく指導のうち、他畜種にも共通する内容を口蹄疫や高病原性・低病原性鳥インフルエンザなどの侵入リスク増加への対応に反映した。
10月1日に施行される「鶏その他家きん」(アヒル、ウズラ、キジ、ダチョウ、ホロホロ鳥、七面鳥)の飼養衛生管理基準の改正内容は、
①家きんの所有者の責務を新設
②飼養衛生管理マニュアルの作成と、従業員と関係者への周知徹底を新設
③衛生管理区域の考え方を明確化
④愛玩動物の飼養禁止を新設
⑤更衣と車両の乗降の際の交差汚染防止措置を追加
⑥家きん舎以外の飼料保管庫、堆肥舎などへの野鳥などの侵入防止措置を追加
⑦衛生管理区域内の整理整頓と消毒を新設
⑧衛生管理区域から搬出する物品の消毒などを新設
――など(飼養衛生管理マニュアルの作成は令和4年2月1日に施行)。