鶏卵アレルギー診断、新しい検査法の応用研究 国立成育医療研究センターと徳島大学
負担少ない安全な診断に期待
国立成育医療研究センター(東京都世田谷区)は6月24日、アレルギーセンターの大矢幸弘センター長、免疫アレルギー・感染研究部の松本健治部長、徳島大学先端酵素学研究所・生態防御病態代謝研究分野の木戸博教授らのグループが、鶏卵アレルギーを診断する新しい検査法の応用研究を行なったと発表した。
鶏卵アレルギー患者のほとんどは、卵の成分の一つであるオボムコイドに対する(抗原特異的)IgE抗体を持っており、経口摂取したオボムコイドと、オボムコイド特異的IgE抗体が結合することで、食物アレルギーの症状が引き起こされる。
鶏卵アレルギーの確定診断には、実際に食べて症状をみる食物経口負荷試験が必要だが、試験時にアナフィラキシーを含むアレルギー症状が出ることが患者にとって大きな負担となっている。
現在のオボムコイド特異的IgE抗体価のみを測定する方法では、抗体価が非常に高い子どもは鶏卵アレルギーがあることが、ある程度の確率で予測できるが、抗体価が低い子どもは卵白の経口摂取でアレルギー症状が出るかどうかを試さなくてはならないため、子どもにとって負担の少ない、アレルギー診断のための検査法の開発が求められている。
徳島大学先端酵素学研究所の木戸博教授らのグループは、高密度集積カルボキシル化プロテイン(DCP)チップを用いた特異的IgE抗体の抗原親和性測定の技術を世界で初めて開発し、応用研究を実施しており、この技術を用いて、IgE抗体価の低い子どもの鶏卵アレルギーの発症と、オボムコイド特異IgE抗体の抗原親和性との間にどのような関係性があるのかを研究し、鶏卵アレルギーの診断精度の向上を目指した。
研究では、国立成育医療研究センターで食物経口負荷試験を行なった子どもの中で、IgE抗体価が低い子どもを対象にIgE抗体の抗原親和性(IgE抗体がアレルギーを引き起こす物質と結びつこうとする力)を徳島大学で調べた結果、食物経口負荷試験でアレルギー症状を示した子どもは、症状を示さなかった子どもに比べてIgE抗体の抗原親和性が高いことが分かった。さらにIgE抗体価と、IgE抗体の抗原親和性の両方を検査で見ていけば、食物経口負荷試験を行なう場合と、ほぼ同じ精度でアレルギー診断ができることも発見した。
この成果論文は、アメリカのアレルギー・喘息・免疫学会が発行している『The Journal of Allergy and Clinical Immunology: In Practice』の電子版で4月に報告された。
今回の研究成果のポイントは、鶏卵アレルギーの発症には、血中のIgE抗体(アレルギー物質に結合するたんぱく質)の〝量〟と〝質〟(IgE抗体がアレルギー物質と結びつこうとする力)の2つが関係していることが明らかになったことで、研究グループでは「これまでの特異的IgE抗体価測定に追加して、DCP法による特異的IgE抗体の抗原親和性を測定する方法を組みわせることで、食物経口負荷試験とほぼ同じ診断精度で鶏卵アレルギー診断ができることが期待される。今後、この研究が進めば、鶏卵に対するアレルギー診断時の負担を軽減し、より安全に診断できると考えられる」などとコメントしている。