厚生労働省が『HACCPに沿った衛生管理の制度化に関するQ&A』更新

採卵養鶏の「採取業の範囲」示す

厚生労働省は6月1日、平成30年8月31日に作成した『HACCPに沿った衛生管理の制度化に関するQ&A』を更新した。

HACCPに沿った衛生管理は、第196回通常国会で成立し、平成30年6月13日に公布された「食品衛生法等の一部を改正する法律」(改正食品衛生法)で義務化が規定されたもの。製造・加工、調理、販売などを行なう、ほぼすべての食品等事業者に、原則としてHACCPに沿った衛生管理の導入を求めている。施行日は今年6月1日だが、施行後1年間は経過措置期間として現行基準が適用されるため、本格施行は来年の令和3年6月1日からとなっている。

『HACCPに沿った衛生管理の制度化に関するQ&A』(6月1日更新版)では、どのような業種が「HACCPに沿った衛生管理」義務化の対象になるかを例示している。

この中で「公衆衛生に与える影響が少ない営業」は、HACCPに沿った衛生管理を「必要に応じて」行なうことと規定し、義務化の対象でないことを示している。

食品衛生法施行規則第66条の2第4項に規定されている「公衆衛生に与える影響が少ない営業」は①食品または添加物の輸入者②食品または添加物の貯蔵のみ、または運搬のみを行なう者(冷凍・冷蔵倉庫業者は除く)③常温保存したとき、腐敗・変敗等、食品衛生上の危害の発生のおそれがない容器包装済み食品または添加物の販売者(例えば缶詰やインスタントラーメンなど、常温で保存可能な包装済み食品のみを販売する者)④器具・容器包装の輸入者または販売者――。

このほか、1回20食程度に満たない数の食事を、特定の少数の人に提供する給食施設や、食品衛生法上の「営業」に当たらない農業や水産業の一部とみなせる行為(出荷前の調整など)も、「HACCPに沿った衛生管理」の対象外になるとしている。

「営業」に当たらない農業などの具体的な事例については、厚労省が5月18日に各自治体の衛生担当部局などに通知した「農業および水産業における食品の採取業の範囲」に添付の別紙が確認できるようにリンクを示している。

「ゆで卵」製造はHACCP対象に

この中で、採卵養鶏業の『採取業の範囲』として示されているのは①「農業者が自ら採卵した卵をGPセンターに販売」(GPセンターは要届出)②「農業者が自ら採卵した卵を洗卵せずに小売り店舗へ販売」(小売り店は要届出)③「農業者が自ら採卵した卵を未加工で直売(庭先、直売所〈有人・無人〉、通信販売など〈出荷に当たる行為〉)――の3例。

なお、これらの農業や水産業についても、前述の「公衆衛生に与える影響が少ない営業」と同様に、「食品等事業者の責務として、一般衛生管理を中心に、自らが取り扱う食品等の安全性を確保するために必要な措置を講ずるよう努める」ことなどを求めている。

一方、①「生産者団体が行なう卵の販売(いわゆる小売)」②「ゆで卵」の製造販売(味付き卵はそうざい製造業となる可能性あり)③「農業者が自ら採卵した卵を、洗卵包装設備を設け洗卵し、小売店舗へ販売」(GPセンターからスーパーへの販売)――などは、採取業の範囲外で、HACCPに沿った衛生管理の対象になるとしている。

なお、備考欄で①については「野菜や果実の販売業(八百屋、スーパー)と同じ扱い」で義務化の対象になるとしているが、③については「簡易的な洗浄程度は採取業」と認められる場合もあるとしている。

小規模事業者の基準

HACCPに沿った衛生管理は、「HACCPに基づく衛生管理」と、「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」の2種類。

「HACCPに基づく衛生管理」の対象事業者には、コーデックスHACCPの7原則に基づき、自ら使用する原材料や製造方法などに応じて衛生管理計画や手順書などを作成し、管理の実施状況の記録・保存や、計画・手順の効果の検証、見直しなどを実施することが求められる。基本的に大規模事業者が対象となり、本紙関係ではと畜場や食鳥処理場(認定小規模食鳥処理場を除く)など。

「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」の対象事業者には、各業界団体が作成した手引書などを参考にした、弾力的な運用を認めている、主に小規模事業者が対象となり、具体的には①食品等の取り扱いに従事する者の数が50人未満の小規模な製造・加工等の事業場②製造・加工した食品の全部または大部分を併設された店舗において小売りする営業者(菓子の製造販売、豆腐の製造販売、食肉の販売、魚介類の販売など)③飲食店等の食品の調理を行なう営業者(飲食店営業のほか、喫茶店営業、給食施設、そうざい製造業、パン製造業〈消費期限がおおむね5日程度のもの〉、調理機能を有する自動販売機が含まれる)④容器包装に入れられた食品または包まれた食品のみを貯蔵、運搬、または販売する営業者⑤食品を分割して容器包装に入れ、または包んで小売りする営業者(青果店、コーヒーの量り売りなど)――が該当する。

このうち、①の「従事者数が50人未満」かどうかの計算方法については、1つの事業場で「前年度の各月の1日当たりの、食品製造や加工に従事した人(人事や経理、営業、設備保全など食品製造に直接関わらない従事者は含まない)の数の平均」で判断するとし、「施設により操業形態が様々なため、一律に計算式を示すことは困難」としながらも、一例として「1か月の従事者全員の労働時間合計÷(1か月の日数〈30日程度〉÷7〈日〉×5〈日〉÷8〈時間〉」との式を示している。工程の一部を外部委託している場合も、一事業場に含めなければならないが、繁忙期に一時的に増員するが年間平均が50人未満の施設は「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」の対象になるとしている。

このほか、①保健所などの監視指導は、各都道府県の計画に基づき実施される食品衛生監視員による定期的な立ち入り検査などを通じて行なうこと②衛生管理計画を作成していなかったり不備があったりした場合は、まず行政指導を行ない、従わない場合は改善するまで営業の禁停止などの行政処分を行なう場合があること③「HACCPに沿った衛生管理」を行なっていない事業者から食材などを仕入れても、ただちに食品衛生法違反にはならないこと④コーデックス7原則を要件とした民間認証のJFSやFSSC22000、ISO22000、SQFなどを取得している施設は、立ち入り検査の際にこれらの認証の記録などを活用して監視指導を行なうなど、事業者負担の軽減に配慮すること⑤危害要因分析を行なった結果、重要管理点(CCP)を設ける必要がないと判断した場合は、その考え方や根拠となる資料を文書化して、立ち入り検査などの際に説明できるようにしておけば、CCPを設けなくても良いこと――などを示している。