農林水産業で1820億円 台風被害
今秋の台風による農林水産業への被害額は、10月30日までの農水省の調査で15号が約509億2000万円、19号が約1310億8000万円、合計約1820億円となっている。台風21号に関連した記録的な大雨と浸水被害の全容はつかめていないが、被害額はさらに拡大するとみられる。
農林水産省が集計した被害状況は、15号分は10月10日までに12都県から、19号分は30日までに38都府県からの報告に基づく。このうち農作物などの被害額は、15号で449億円(うち家畜44万6907頭羽の7億8000万円、畜産物1695.8トンの2億1000万円、畜産用施設985件の28億7000万円)、19号で144億7000万円(うち家畜22万7477頭羽の9000万円、畜産物24.9トン、畜産用施設302件の3億1000万円)など。
15号の被害が大きかった千葉県が10月11日現在でまとめた被害は、採卵鶏・ブロイラーの斃死48万羽の5億6081万5000円、その他家畜の斃死7400頭の2億5852万円、畜産物1733トンの2億1941万円で、農水省の集計を上回っている。
19号の養鶏関係被害では、鶏舎への浸水などにより、岩手県でブロイラー約5万9000羽、仙台市で採卵鶏約3万羽、埼玉県でウズラ約10万羽の斃死被害が地元紙などで明らかにされている。
また、台風21号と周辺の低気圧による10月25日の大雨では、30日時点で千葉県の農業施設で約1300万円、農作物で約8100万円の被害が報告されているが、全容はまだ明らかでない。
政府は10月18日、台風19号による被害を、復旧・復興に時間を要すると見込まれる大規模災害に適用される「特定非常災害」に指定した。また29日には「非常災害」と「激甚災害」への指定を閣議決定し、被災自治体の復旧事業に対する国の補助率の引き上げを決めた。
農水省は10月25日に、今年8月から9月の前線に伴う大雨(台風10・13・15・17号の暴風雨含む)と、台風19号による農林水産関係被害の支援対策を公表した。
対策項目は、①災害復旧事業等の促進②農業用ハウス、共同利用施設等の導入の支援③油流出への対応④共済金の早期支払い等⑤災害関連資金の特定措置⑥営農再開に向けた支援⑦被災農業者の就労機会の確保、被災農業法人等の雇用の維持のための支援⑧農地・農業用施設の早期復旧等の支援⑨林野関係被害に対する支援⑩水産関係被害に対する支援⑪停電への対応⑫災害廃棄物処理事業の周知⑬地方財政措置による支援――の13項目で、激甚災害に指定さたため、国の補助率は引き上げられる。
養鶏関連の支援策は①被災した鶏舎や機械等の再建・修繕に関する支援②被災に伴う鶏の導入について農林漁業セーフティネット資金、農業近代化資金等の活用③停電時の電力確保に要した発電機の借り上げ、今後の災害等に備えた非常用電源の整備に対する支援④被災畜産農家の資金繰り支援のため、鶏卵生産者経営安定対策事業の鶏卵価格差補てん事業で、被災した鶏卵農家に対し、積立金の減額や積立金残額の返還――など。
このうち、非常用電源の導入費用の補助(補助率2分の1以内)は(独)農畜産業振興機構の「畜産経営災害総合対策緊急支援事業」に基づいて実施するもので、被災畜産農家だけでなく、今後の災害に備えて新たにリースなどで整備する場合も含まれる。養鶏の事業実施窓口は、採卵鶏は(一社)日本養鶏協会、肉用鶏は(一社)日本食鳥協会が考えられている。