米国産新穀の生産予想減少 今春多発の災害を反映
南米などの方策は需給に寄与
7~9月期の配合飼料価格が注目されている。今年については、南米は豊作が見込まれているものの、米国は中西部の洪水などの自然災害で作付けが遅れ、トウモロコシや大豆の生産に懸念が出ている。また、米中の貿易戦争や世界的なアフリカ豚コレラの発生で穀物・畜産物市場が例年にない動きをみせる中、関係者は先々の見通しに苦慮しているが、トン500円以内の値下げが有力視されている。
今穀物年度の南米産輸出量は上方修正
米国農務省(USDA)が6月11日に公表した農産物需給予測月報(WASDE)によると、今秋収穫する2019/20穀物年度(19年9月~20年8月)の米国産トウモロコシの1エーカー当たり単収は前年度比10.4ブッシェル減の166.0ブッシェル、生産量は同7億4000万ブッシェル(5.1%)減で15/16年度並みの136億8000万ブッシェル(約3億4749万トン)、期初在庫と合わせた供給量は同6億7000万ブッシェル(4.0%)減の159億2500万ブッシェルと予想している。
米国中西部で今春多発している洪水や竜巻など、自然災害による作付けの大幅な遅れが反映された。前月予想から単収は10.0ブッシェル、生産量は13億5000万ブッシェル(9.0%)、供給量は同12億3500万ブッシェル(7.2%)下方修正した。
需要面は、エタノール向けは前年度比5000万ブッシェル増の55億ブッシェル、飼料その他向けは同1億5000万ブッシェル減の51億5000万ブッシェル、輸出量は同5000万ブッシェル減の21億5000万ブッシェル、期末在庫は同5億2000万ブッシェル減で13/14年度並みの16億7500万ブッシェル、期末在庫率は11.8%。農家販売価格は同20㌣高の3.8㌦前後で推移すると予想。輸出量は前月予想から1億2500万ブッシェル、飼料その他向けは3億ブッシェル、期末在庫は8億1000万ブッシェル(32.6%)引き下げた。
米国以外のトウモロコシ輸出量は、ブラジルは前年度と同じ3400万トン、アルゼンチンは50万トン減の3350万トン(前月予想から100万トン上方修正)、ウクライナは250万トン減の2700万トン、ロシアは200万トン増(前月から50万トン上方修正)の500万トンの予想。
なお、今穀物年度(18/19年度、今年8月末まで)については、直近の南半球の豊作を反映し、ブラジルの輸出量は前月予想を200万トン上方修正し3400万トン、アルゼンチンの輸出量は同250万トン上方修正し3400万トンとした。一方、米国産トウモロコシの輸出量は価格上昇による国際競争力低下を理由として前月予想から1億ブッシェル(約254万トン)下方修正され、期末在庫(19/20年度の期初在庫)が1億ブッシェル上方修正された。
この結果、USDAの予測による18/19年度の世界全体のトウモロコシ生産量は、前年度比4249万トン(3.9%)増の10億9919万トン、輸出量は2398万トン(16.1%)増の1億7280万トン。期末在庫は1387万トン(4.1%)減の3億2538万トン。
19/20年度の世界全体のトウモロコシ生産量は、前年度比2128万トン(1.9%)減の10億9919万トン、輸出量は296万トン(1.7%)減の1億6984万トン。期末在庫は3486万トン(10.7%)減の2億9052万トンとなった。
期末在庫率は26%程度と、20%を割り込んで推移していた2000年代に比べれば高く、南米の増産と豊作に助けられる形で大幅な需給ひっ迫は免れる予想となっているが、6月20日現在のシカゴ・トウモロコシ相場(期近物)は月初より約0.7ドル高い4.4ドル前後で推移している。
シカゴ相場は月初から80セント前後上昇
米国産大豆の1エーカー当たり単収は前年度比2.1ブッシェル減の49.5ブッシェル、生産量は同3億9400万ブッシェル(8.7%)減の41億5000万ブッシェル(約1億1295万トン)、輸出量は同2億5000万ブッシェル増の19億5000万ブッシェル、期末在庫は同2500万ブッシェル減の10億4500万ブッシェルと予想。前月予想からは期末在庫が7500万ブッシェル上方修正された。
米国以外の大豆輸出量は、ブラジルは同350万トン減の7500万トン、アルゼンチンは同75万トン減の700万トンで前月予想と同じ。ブラジルの予想大豆生産量は過去最高の1億2300万トン。
18/19年度はアルゼンチンの輸出量を145万トン上方修正し、中国の大豆輸入量を100万トン下方修正した。米国産は輸出不振を見込み、輸出量は前月予想から7500万ブッシェル下方修正。期末在庫は7500ブッシェル上方修正されている。
この結果、18/19年度の世界全体の大豆生産量は、前年度比2054万トン(6.0%)増の3億6208万トン、輸出量は327万トン(2.1%)減の1億4969万トン。期末在庫は1370万トン(13.8%)増の1億1280万トン。
19/20年度の世界全体の大豆生産量は、前年度比669万トン(1.8%)減の3億5539万トン、輸出量は136万トン(0.9%)増の1億5105万トン。期末在庫は14万トン(0.1%)減の1億1266万トンで前年度並みを維持すると予測。シカゴ大豆相場(同)は月初比約0.75ドル高の9.15ドル前後で推移している。
なお、今春の天災の影響については依然調査中で、本レポートの予想作付面積もまだ3月末時点の意向調査からの推定に基づいている。USDAは6月28日に実地調査に基づいた作付面積統計(Acreage report)を出すとしている。