発泡錠剤型のIB生ワクチン『H120ネオ』 全国5か所で発売記念セミナー BIAHJとゼノアック
簡単に、確実にワクチン投与
ベーリンガーインゲルハイム アニマルヘルス ジャパン㈱(略称・BIAHJ、永田正社長―本社・東京都品川区)と日本全薬工業㈱(福井寿一社長―本社・福島県郡山市)は、発泡錠剤型『IB生ワクチン「BI」H120ネオ』【写真右】の発売記念セミナーを5月15日に鹿児島市のホテルタイセイアネックス、16日に宮崎市のホテルメリージュ、21日に盛岡市のホテル東日本盛岡、22日に東京都千代田区の御茶ノ水ソラシティカンファレンスセンター、23日に岡山市北区のホテルメルパルク岡山で開いた。
『H120ネオ』は、昨年までに発売した水質改善発泡タブレット『ネオスタブ』、発泡錠剤型ニューカッスル病生ワクチン『アビVG/GAネオ』に続く〝ネオシリーズ〟の第3弾。
IB生ワクチンでは初めての発泡錠剤型で、①安全性が高く、交差性が広い鶏伝染性気管支炎ウイルスH120株を使用②使用者が安全に取り扱うことができ、調製時のミスが起こりにくい③ワクチンの調製が簡便で、小型のため輸送や保管がしやすい④廃棄物が少なく、地球環境にやさしい――などの特長を持つ。製造販売業者(輸入元)はBIAHJ、販売元は日本全薬工業。
鹿児島・宮崎会場ではESACの永井寿宗獣医師と、ベーリンガーインゲルハイム アニマルヘルス社ポートリー学術部長のヘルマン・アンドレアス氏が記念講演し、日本全薬工業の松川佐希氏が製品を紹介。盛岡・東京会場ではウェルファムフーズ㈱の橋本信一郎獣医師と、BIAHJライブストック事業部ポートリー担当の荒木健詞獣医師が記念講演し、日本全薬工業の塩崎沙織氏が製品を紹介。岡山会場ではESACの永井獣医師と、BIAHJの荒木獣医師が記念講演し、日本全薬工業の塩崎氏が製品を紹介した
5月22日の東京会場では、主催者を代表してBIAHJの荒木獣医師が「〝ネオシリーズ〟は誰でも簡単に、確実にワクチンを投与でき、ゴミが少なく、とてもシンプルな商品である。利便性が圧倒的に向上しており、廃棄コストやワクチン調製にかかる手間を削減できる」とあいさつした。
「IB対策の生産現場からの展望」と題して講演した橋本獣医師は、IBの概要について「罹患動物は鶏で、まれにキジも感染する。コロナウイルス科の伝染性気管支炎ウイルスが病原体で、1931年に米国で初発例が報告された。IBウイルスは水平感染する。伝播力は非常に強く、1~3日間で鶏群の100%が感染し、その後、持続感染する。IBウイルスの血清型は多様で、顕著な臨床症状を伴わない場合も多い。腎炎や産卵低下、異常卵の産生を引き起こすと経済的被害が大きい」などと説明し、①ブロイラーの腎炎②レイヤーの卵管嚢腫③呼吸器病――でみられる症状・病変や、産卵への影響を示した。
IBの診断については「疫学的所見や臨床症状、肉眼的所見から大まかに推定する。ニューカッスル病、鶏伝染性喉頭気管炎、伝染性コリーザとの類症鑑別は必要。確実な診断にはウイルスの分離が必要だが、感染初期のウイルス分離は困難。呼吸器や腎臓などの臓器乳剤を発育鶏卵に接種して鶏胚の発育不全を観察するか、PCR検査を行なう。PCR検査は有力な検査方法になっている」とし、日本板硝子㈱のモバイルPCR装置『PPCR1110』を紹介した。
ワクチン接種については「大部分の農場でIB生ワクチンの接種が必要。一番効果的なのは点眼接種だが、人手がかかる。散霧投与では器材の調整と管理が重要。飲水投与ではワクチン溶解補助剤として使えるのは『ネオスタブ』だけで、非常に効果的である。H120株がベースで、地域の特性に応じて他の株と組み合わせることで交差性が拡大する」とし、ブロイラーでの飲水投与をフローチャートで紹介。
採卵鶏や種鶏でのプログラムについては、①2週齢までに生ワクチンを接種する②地域の状況に応じてワクチン株を選択する③不活化ワクチンは通常1回④リスクの高い農場では生ワクチンを産卵期に4~10週間ごとに投与する場合もあるが、卵殻質への影響に注意する⑤マルチエイジ農場ではウイルスの循環を防ぐため、すべての鶏に同一の週に投与する――とした。
『H120ネオ』の製品紹介で塩崎氏は、H120株の安全性や血清交差性のデータを示したほか、〝ネオシリーズ〟の『アビVG/GAネオ』のユーザーから寄せられた①廃棄物が減少した②保管しやすい③作業性が改善された――との意見を紹介し、「発泡錠剤型のIB生ワクチン『H120ネオ』の主剤はバイアル品と同一で、安全性や効果は同等。H120株の安全性は他のMタイプワクチン株と同等で、変異株と組み合わせることで交差免疫の幅が広くなる。ネオシリーズはお客様のワクチン接種を、より便利で効果的にする革新的な生ワクチンシリーズである」などと説明した。
「海外の鶏の感染症対策の最前線」と題して講演した荒木獣医師は、世界の養鶏産業で発生している鳥インフルエンザ(AI)、ニューカッスル病(ND)、伝染性気管支炎(IB)、伝染性ファブリキウス嚢病(IBD)の各ウイルスの概要や、使用されているワクチンなどを紹介。
なかでも2つのウイルスから新しいウイルスを作り出す技術を用いた〝ベクターワクチン〟について「PCRで野外株との判別が可能。ベクターワクチンは現在、世界で普及している新しい感染症対策の1つで、2018年までに84か国以上で流通している。日本で市販されているベクターワクチンはまだないが、国際競争力という面でも、このような製品が日本に入ってくると、養鶏産業にとってメリットが大きいと思う」などと述べた。
日本全薬工業AB事業部東日本事業所の西浦創所長が「発売記念セミナーは全国5か所で開き、合計200人以上の皆さんに参加していただく。発泡錠剤という革新的なワクチンによって皆さんの生産性向上や課題の解決に少しでも貢献できるよう、ベーリンガー社と力を合わせて取り組んでいきたい」とあいさつしてセミナーを終えた。