ネッカリッチ農法の効果発表 第41回全国ネッカリッチ研修会
シイやカシなど広葉樹の樹皮炭(粉末)に木酢液を加えた混合飼料『ネッカリッチ』をはじめ、木材由来の農畜産資材を製造・販売する宮崎みどり製薬㈱(山口秀樹社長―本社・宮崎市)は11月7日、東京都豊島区のホテルメトロポリタンで『第41回全国ネッカリッチ研修会』を開いた。
営業部の藤原保之次長が司会を務め、新原孝義常務が開会宣言。主催者あいさつに立った山口社長は、今年の研修会は杉を原料とした植物代謝活性液や土壌改良材、敷料などに特に焦点を当てたと紹介した。
農業者が直面する課題と、同社の方向性については「日本の一次産業は関税撤廃とグローバル基準への対応が必須。そして、生産者の自助努力を正当に評価する市場を国内外に求めなければならない。当社は創業以来、木材成分を高度に活用してきた研究開発型の事業体である。今後も各製品を通じて治山治水の一翼を担い、国土の保全とともに、海外との競合に打ち勝つための循環型農業を一層進化させていく」などと述べた。
研修会では17氏が講演。養鶏関係では同社の藤原次長が『耕種農業が生産に必要とする鶏ふん』について、鶏卵生産の㈲ニシモト(西本樹生社長―本社・高知市、約20万羽飼養)との調査結果を発表した。
鶏ふん堆肥には作物の生育に必要な窒素、リン酸、カリが含まれるが、未発酵品を過剰に施肥した際など、窒素過多による根焼け(肥料焼け)を起こすことがある。調査では高床式鶏舎の採卵鶏1万羽に対し、125日齢から625日齢までネッカリッチ(配合率1%)を給与し、1階に堆積する鶏ふんには杉チップを蒸煮して繊維状にした『ウットンファイバー』を施用。トラクターで撹拌して好気性発酵を促したところ、同期間の鶏ふん重量は通常の53%(約321トン)に抑えられたと報告した(両製品不使用時は約600トンとのこと)。
鶏ふん中の窒素は適度に分解され、そのC/N比(炭素と窒素の比率)は16に整い、耕種農家にとって使いやすい品質に仕上がったという。藤原次長は、九州地方のキュウリやミニトマト農家などの声も紹介し「露地とハウス栽培のどちらからも上々の評価をいただいている。土づくりについて勉強熱心な人ほど良さを分かってくださり、本当にありがたい。今後も養鶏生産者と耕種農家の双方にとって役立つことができれば」と話していた。
香川大学の山内高圓名誉教授(農学博士)は『ネッカリッチの還元力が暑熱下で飼育された産卵鶏の大腸菌、アンモニア態窒素、ビタミンCおよび産卵成績に及ぼす影響』について講演。鶏は体内で還元作用(抗酸化作用)を持つビタミンCを合成できることや、体内の大腸菌の代謝(セルロースの消化)にも還元作用があることなどから解説。その上で、試験結果を示しながら木炭と木酢液にも還元作用を期待でき、この2つが主成分のネッカリッチを採卵鶏に給与することで「腸管内の還元機能を補強できる」と紹介。元留学生の教え子がタイで実施した試験結果なども示し、「暑熱下での産卵成績の改善には飼料中に2~3%のネッカリッチを配合するのが有効ではないか」などとした。
各氏の講演後は、大阪府立大学の渡来仁教授が研修会の総評を述べて閉会。懇親会に移り、ネッカリッチ農法で生産した食材を味わい交流した。