大石産業が千葉と茨城でリサイクル学習会
パルプモウルド製トレー作りを体験
古紙からつくるパルプモウルドを通じて、子どもたちにリサイクルの大切さを伝えたい――。包装材メーカーの大石産業㈱(大久保則夫社長―本社・北九州市)は今夏、千葉と茨城両県のパルシステム会員を対象とした『リサイクル学習会』(予約制)を計3回催した。子どもたちは『パルプモウルド移動簡易式製造機』でのトレー作りを体験し、普段何気なく見てきた紙製の卵パックや青果用トレーが、環境へのやさしさを考えて製造されていることを知った。
千葉県でのリサイクル学習会は7月23日に生活協同組合パルシステム千葉稲毛センター(千葉市稲毛区)、8月3日に同東金センター(東金市)で開催。茨城県では8月4日に同茨城みとセンター(茨城町)で開かれた。
このうち稲毛会場には、抽選で選ばれた親子ら約30人が参加。大石産業東京支店の上野正司氏は「私たちは紙で卵のパックを作っている『大石産業』から来ました。皆さんがいつも見ているパルシステムさんの卵パックは、私たちが茨城県の工場で作ったものです。これから体験することや、学んだことは夏休みの自由研究に使ってもらえればと思います」とあいさつ。同社技術開発部の山口渉吾氏も子どもたちに目線を合わせ「きょうは卵パックと同じような作り方で、お皿(トレー)を作ってもらいます。ぜひ楽しんでください」と呼びかけた。パルシステム千葉の平健三常務理事や仲野智美理事らも歓迎の言葉を述べ、稲毛センターの黒崎渡センター長からは『平成30年7月豪雨』によって西日本の契約生産者が大打撃を受けていることや、被災者支援のために義援金を募っていることが伝えられた。
古紙と水だけでモウルドをつくる
参加者は5班に分かれて屋外のリサイクル体験コーナーへ向かい、パルシステムの子牛のキャラクター『こんせんくん』をモチーフにしたトレー作りに挑戦。大石産業東京支店の松岡拓三氏らがパルプモウルドの作り方について①回収した卵パックや古新聞、古雑誌などを水に溶かす②金型に流し込んで形を作る③乾燥装置で水分を飛ばせば完成――と説明。
子どもたちは使用済みのパルプモウルドを手でちぎって専用タンクに投入し、ミキサーが中身をかき混ぜて水に溶け合う様子を興味深そうに見学。その後はドロドロになった原料を金型に入れ、パルプモウルド製のトレーが完成。自らの手でリサイクルを実践した親子の額に汗がにじんだ。
室内に戻り、完成品に絵の具で色塗りをする子どもに上野氏からは「百円ショップで売っている時計の針を付ければ、夏休みの自由工作にも使えるよ」との提案も。さらに上野氏は同社のモウルドパックやトレーなどはパルプモウルドと水だけで作られていることを改めて強調し「消費者の方から『固めるために薬を入れているの?』と聞かれることもあるが、そういうものは一切使っていません。卵が10個入るモウルドパックの乾燥には1時間以上をかけて、しっかりとした丈夫なパックとしています。パルシステムさんのリサイクルに対する大変熱心な思いと、養鶏場さんや卵屋さん(GPセンター)の取り組み、そして組合員の皆さんの協力があってこそ卵パックを回収でき、そこでリサイクルの流れが完結します」などと話した。
山口氏が、ファストフード店のドリンク用トレーや、工業品・家電製品の緩衝材などにもパルプモウルドが使われていることを紹介し、「これから皆さんが生活していく中で、いろいろなパルプモウルド製品を見かけることがあると思います。そのときは『大石産業のパルプモウルドかな?』と、私たちのことを少しでも思い出してもらえれば嬉しいです」と話してリサイクル学習会を終えた。
小さい子どもにこそリサイクル体験を
千葉市内から参加した小4男子の母親は「子どもにいろいろな経験をさせたくて応募した。地球環境を考えるとモウルドパックを選びたいと思うし、洗わずに回収に出せる点も助かっている」とコメント。
パルシステム千葉の平常務理事はリサイクル学習会を振り返り、「これまでも色々な催しを行なってきたが、夏休みの親子参加型イベントは大変人気のある〝キラーコンテンツ〟となっている。私たちは包材とプラスチックの使用量をいかに減らすかを考えており、基本的に瓶はリユース(洗浄して再使用)で、ペットボトルもバージン原料から作っていないものを使う。もう1つのこだわりが、生産物にしても、各種の原料にしても組合員の皆さんに納得してもらえるものを扱うこと。本日のような学習会や、産地の見学会などを行なうことで品質と価格への理解を得ていきたい」などとした。
会場運営に当たった大石産業東京支店の藤山幸三課長補佐は、このタイミングで開催した理由について「プラスチックによる海洋汚染が問題視され、最近ではスターバックスがプラ製ストローを廃止すると発表し話題になった。中国は昨年末に他国からの廃プラ受け入れを大幅に制限し、世界的にみてプラスチックの行き場がなくなっている。国には、よりエコな資材の普及を後押ししてほしいとの思いもある。そのような状況で、皆さんにリサイクルについて学んでもらうにはちょうど良いタイミングかと考えた。小さいころから少しでもリサイクルの意識を持っていてほしい」と説明していた。