AI国内侵入株 少なくとも5系統 4系統は韓国ウイルスと重複
農林水産省は、昨秋から今春にかけての高病原性鳥インフルエンザ(HPAI)発生を踏まえた改善策の検討を進める。農場段階の侵入防止策は、疫学調査チームが6~7月にまとめる疫学調査報告書を基に、具体的な対策を助言・指導していくほか、防疫措置従事者や資材の確保、殺処分鶏などの迅速な処理、移動制限や制限の例外適用の迅速な周知なども改善していくことにしている。第2回検討会では、ウイルスが韓国を含む「環日本海」に広く持ち込まれたことなどが確認された。
農林水産省の高病原性鳥インフルエンザ(HPAI)疫学調査チームは5月11日に第2回検討会を開き、平成28年11月から29年3月にかけて、9道県12農場で発生したH5N6亜型AIの現地調査や、分離ウイルスの遺伝子解析などに基づき発生要因を検討。報告書は今年6~7月をめどにまとめることにした。
検討会では、発生農場が全国(発生順は青森、新潟、北海道、宮崎、熊本、岐阜、佐賀、宮城、千葉)に分散している点が、野鳥での広範囲な発生状況(22都道府県218事例)と類似していることや、池や沼、川が家きん舎の近隣にある発生農場が多い傾向が確認された。
分離ウイルスは、遺伝子解析の結果から「韓国で確認されたウイルスと由来が同じ」と考えられ、野鳥も含めた同ウイルスの遺伝子レベルでの比較では「少なくとも5系統のウイルスが国内に侵入し、このうち少なくとも4系統のウイルスは韓国で確認されているウイルスと重複していると考えられた」とした。
鶏への感染性や致死性は、ウイルスの感染実験結果から「過去のH5N1亜型ウイルスより低下している可能性」があるものの、各事例とも死亡数の増加が確認されたことから、「早期通報において死亡数の増加が指標として引き続き重要と考えられる」としている。
ウイルスの国内への侵入経路については、過去の事例と比較して早い時期(11月初旬)から、渡り鳥によって広く日本に持ち込まれたとみられ、韓国での発生状況と併せると、「日本全域、韓国を含む環日本海の地域に、ウイルスが広く持ち込まれた」とみている。
さらに、3月下旬の宮城県と千葉県での発生を踏まえ、「渡り鳥の春の渡りの時期にも、警戒が必要であることが再確認された」としている。
家きん舎への侵入経路については「発生状況や飼養衛生管理状況などから現在、特定の経路から家きん舎内にウイルスが持ち込まれたことを示す情報は得られていない」ものの、発生農場の特徴として「家きん舎の近隣に池や沼、川がある場合が多い傾向が確認された。このような農場では、周辺に野鳥などの飛来が多く、家きん舎周囲にウイルスが増加している可能性があるため、家きん舎内への野生動物の侵入防止対策はもちろんのこと、人が家きん舎に出入りする際、靴底や、持ち込む物も含めた消毒などのさらなる徹底が必要」と強調している。