2020年度グッドデザイン賞を受賞 北海道種鶏農場の商業施設『マザーズプラス』

第3回エコプロアワード奨励賞も

鶏舎の形をトレースした『マザーズプラス』の外観

今年2月に竣工した㈲北海道種鶏農場(川上一弘社長―本社・北海道白老郡白老町字社台288)の商業施設『マザーズプラス(mother’s+)』が、このほど(公財)日本デザイン振興会が主催する「2020年度グッドデザイン賞」を受賞した。

グッドデザイン賞は、1957年に創設された日本で唯一の総合的なデザイン評価・推奨の仕組みで、デザインを通じて産業や生活文化を高める運動として、国内外の多くの企業やデザイナーが参加している。これまでの受賞件数は5万件以上にのぼり、受賞のシンボルである「Gマーク」はよいデザインを示すシンボルマークとして広く親しまれている。

北海道種鶏農場本社の隣接地に建設した『マザーズプラス』は、アニマルウェルフェアの考え方に基づいて鶏を放牧飼育するパイロットファームの中核施設で、養鶏業のプロセスを見せる見学施設を併設した店舗。将来は農村での自然体験や、食文化を楽しむ新しい余暇の過ごし方「グリーンツーリズム」に基づき、鶏の飼育から採卵、加工販売までの過程を学び、楽しむ滞在型施設を目指している。

プロデューサーは北海道種鶏農場の川上一弘社長、ディレクターは㈱竹中工務店の藤田純也氏、デザイナーは同社の横尾淳一氏。

鶏舎の連なる町並みやいにしえの鉱山・既存のサッカーコートなど、もともと土地にあったモノやコトを表現しつつ、自然豊かな森を育む山並みを背景に、動物と人間が同じフィールドで活動する新しい農村の風景を創り出した。鶏舎の形を素材とともにトレースした建物は、地元産業への貢献として主な架構を木造とし、鶏卵・鶏肉を加工・調理する工房棟は、不燃化の必要から鉄骨造とした。工房棟は内部の作業を来館者に見せるため、全面ガラス張りにしている。木造モノコックの中にガラスボックスを挿入したインテリア空間は、自然素材と工業製品を対峙させることでそれぞれの美しさを引き立てている。鶏舎らしく開口部は最小限とし、トップライトの効果的な配置により光と影が交錯する印象的な空間とした。

内部の作業を来館者に見せるため、全面ガラス張りにしている工房棟

グッドデザイン賞の審査委員は「養鶏業のプロセスを見せる見学施設を併用した店舗の計画として、クライアントの思想が純度を持って表現された建築である。鶏舎の形をモチーフとした木造モノコックの構成は、トップライトからの光と影の効果と相まって、ダイナミックな連続性を作り出している。鶏をシンボル化するのではなく、足跡を仕上げとして作業に協業してもらうというプロセスなど、動物と人間の関係性に対する課題を、建築を通じて問題提起しているとも捉えられる空間は、これからのサステナブルな社会にふさわしい風景を作っていて素晴らしいプロジェクトだ」と評価している。

さらに『マザーズプラス』は、(一社)サステナブル経営推進機構が主催する「第3回エコプロアワード奨励賞」も受賞した。

旧「エコプロダクツ大賞」の理念や実績を継承しながら、2018年度に刷新されたエコプロアワードは、日本国内で「持続可能な社会づくり」に貢献する製品・サービス、ソリューション、活動などを表彰する制度。

審査員による講評では「畜産は病気などの観点から難易度も高いが、大規模ではなく、身の丈で実施しようとしている点は評価できる」「アニマルウェルフェアを重視しているグリーンツーリズムは先進的。都会人から見ると、とても魅力的な体験施設である」「6次産業化を目指す中で、養鶏場やGPセンター、店舗から出る廃棄物を再資源化している点、地元木材の利用、施工時の工夫など、環境配慮に積極的に取り組んでいる」「グリーンツーリズム、アニマルウェルフェア6次産業化など、SDGsの理念を施設計画に取り入れている点が評価できる」などとしている。

今回ダブル受賞した『マザーズプラス』について、北海道種鶏農場の川上社長は「構想は3年以上前から。卵の直売を約17年前に始めて少しずつ支店を増やしたり、レストランも作ってきたが、少しマンネリ化の感じもあり、何かをやらなければいけないと前々から思っていた。

お菓子とレストランの卵販売が別々の場所だったので、これらを効率化したかったほか、ここに小さなGPセンターも組み込んで一体化したかった。これによって、卵の搬入から洗卵選別、卵の販売、お菓子の加工・販売までを1つの建物の中で完結できて、それをガラス張りにして一般の人にすべて見せたい、という思いが実現できた」となど話している。