ひな価格“値上げを”の声強まる 種鶏孵化場や若めす育成業者

レイヤーやブロイラーの初生雛、レイヤーの中・大雛(若めす)は、養鶏の基礎となる重要な生産資材であるが、それらを生産する種鶏孵化場や育成業者の経営は、年々厳しくなっている。特にここ数年は、配合飼料価格や熱源費などのコスト上昇分をひな価格に転嫁できないため厳しい状態が続き、経営不安に陥ったり、孵化事業から撤退する企業も出ており、種鶏孵化場や育成業者からは「このままではコストを吸収できず、脱落する仲間が増えるのではないか」と危惧する声が聞かれる。
配合飼料価格は、平成18年秋から20年秋にかけて約2万5000円上昇した後、21年1月に約1万1900円値下がりししたものの、22年4月からは3期連続の据え置きで高止まりとなった。今年に入ってからは再び3期連続で値上がりし、昨年秋からの値上げ幅は約7000円に達している。
種鶏孵化場や育成業者は、配合飼料価格が約2万5000円上昇した際に、ひな価格の値上げへの理解を求めたものの、取引先の養鶏生産者も厳しい経営状態が続いたため、一部を除いてほとんど価格転嫁ができず、現在も、そのダメージを引きずったままだ。
このためもあってか、特にレイヤー種鶏の導入羽数はこの2年で大きく減少し、日本種鶏孵卵協会が実施した種鶏導入調査によると、平成21年に134万6000羽の導入であったものが、22年は前年比7.9%減の127万9000羽、23年の計画は14.1%減の109万9000羽で、今年秋以降のひな需給は不足気味で推移すると見込まれている。
農林水産省の平成21年の統計によると、成鶏めすを飼養する生産者のうち、初生雛のみの導入は28.9%で、初生雛と中・大雛の両方の導入は5.3%、中・大雛のみの導入は56.9%(導入なしは9.0%)となっている。これを導入羽数1億385万5000羽でみると、初生雛は全体の36.4%の3782万羽、中・大雛は63.6%の6605万5000羽で、生産者が導入するひなの6割を中・大雛が超えていることになる。
当然のことながら、中・大雛を生産するために、種鶏孵化場や育成業者は、ひな代やエサ代、熱源費などを鶏卵生産者に代わって負担していることになるが、コスト上昇分を若めす価格などに転嫁できなければ、経営は成り立たなくなるのは明らか。
種鶏孵化場や育成業者に聞くと、今後もひなの再生産を継続していくためには、初生雛で1羽当たり5~10円、中・大雛で50~100円の値上げが必要になるとしている。
一方、ブロイラーでは配合飼料価格がトン当たり1000円上がると、ひな1羽当たり50銭のコスト上昇になると言われている。今年に入り配合飼料価格は約7000円値上がりしているため、ひな1羽当たり3円50銭のコスト上昇となる。ただ、ブロイラー孵化場もレイヤーと同様に、平成18年秋から20年秋にかけて配合飼料価格が約2万5000円値上がりした際に価格転嫁できていないため、再生産のための鶏舎設備などの改善が遅れ、「現状では1羽当たり6~8円値上げしてもらわなければ割に合わない」との声も聞かれる。
また、今年12月の最需要期を見据えた10月え付けのひなは、夏場の暑い時期に、産卵率や受精率を落とさないように苦労して産ませた種卵を孵化しているため、生産コストは年間で一番高いとのこと。このため孵化場経営者からは「プレミアム価格として、10月分だけでも値上げを認めてほしい」との声も聞かれる。
昭和35年に1471戸あった種鶏孵化場は、平成22年にはレイヤー、ブロイラー合わせて138戸となり、10分の1以下にまで減少している。特にレイヤー孵化場では、新規参入はなく、孵化事業単独での経営もますます難しくなっている。種鶏孵化場や育成業者がなくなって一番困るのは、生産者である。養鶏産業の素となる“ひな”を生産する種鶏孵化場と育成業者も含めた形で再生産できる仕組みの構築を、養鶏産業全体で真剣に考えなければならない。