米国での鳥インフル 輸入停止は郡単位に 国内の防疫指針見直しへ

農林水産省は11月5日、食料・農業・農村政策審議会の第34回家畜衛生部会(部会長=松尾直人㈱ラルズ常務取締役)を開いた。これまで米国で高病原性鳥インフルエンザ(HPAI)の発生時に適用していた州単位のゾーニングを郡単位に縮小することで了承した。農林水産大臣への答申を経て、パブリックコメントの募集や日米間での家畜衛生条件の改正協議を進める。

日米両国は2012年6月以降、米国でHPAIが発生した場合、州単位で輸入を停止しているが、米国が郡を適用単位とするゾーニングを認めてほしいと要請し、昨年10月に農林水産大臣が食料・農業・農村政策審議会に検討を諮問。家畜衛生部会が家きん疾病小委員会に意見を求め、昨年12月と今年7月の2回にわたり検討した。

同小委員会の伊藤壽啓委員長(鳥取大学教授)は、①米国ではHPAIの発生予防とまん延防止のための対応計画と早期摘発体制、早期封じ込め体制が整備されている②2014―15年シーズンの大規模な発生を受けて発生予防と対応計画を強化し、16年と17年のシーズンの発生は限定的となった――ことから、「米国でHPAIが発生した場合でも、発生農場の周辺に設定される半径10キロメートルの制限区域内に封じ込める可能性が高い。さらに迅速かつ適切に防疫措置が講じられ、発生が制限区域を越えてまん延しないことを確認できた場合に、適切なリスク管理措置を講じることによって、HPAIの発生に伴う輸入停止措置の範囲を郡単位に縮小することは適当と考えて了承した」と検討結果を報告した。

郡単位に変更後は、最初に州単位で輸入を停止し、発生が制限区域内で封じ込められている場合は郡単位に縮小する。ただし、発生が郡境を越えて水平感染、または同州内で多発した場合は州単位の輸入停止に戻す。

また、家畜衛生部会ではHPAIとLPAIに関する防疫指針の変更案について諮問した。今後は家きん疾病小委員会で議論し、その結果を家畜衛生部会に報告。同部会で変更の方針について答申を得た後、速やかに防疫指針を改正する。変更案は次の通り。

①今年1月に香川県で発生した事例を踏まえ、異常家畜の届出があった場合の検査羽数と採材方法、簡易キット陽性時の検体の送付について明記する。香川県の事例ではウイルスの排出量が少なく、簡易検査とPCR検査の結果が一致しなかったことから、確実に簡易検査の段階でAIと判定できるように、検査羽数を現行の5羽から「死亡家きん11羽、生きた家きん2羽」に変更する。現在は変更後の羽数で運用している。

②発生農場で直接飼養管理を行なっていた者が7日以内に他の農場で直接飼養管理を行なっていた場合、当該農場で飼養する家きんを疑似患畜としていたことについて、一定の水準以上の衛生管理を行なっている場合には、疑似患畜から除外することができる旨を明記する。現在は無条件で疑似患畜として殺処分の対象になるが、農場で一定の水準以上の衛生管理を行なっていることが確認できる場合、疑似患畜から除外する。今シーズンから運用する予定。

③制限区域内の液卵加工場にかかわる制限について、当該加工場の衛生状況を家畜防疫員が確認し、一定の水準以上の衛生管理を行なっている場合には、制限の対象外とすることができる旨を明記する。液卵加工場はGPセンターと同列に扱われており、AI発生時は操業を一時停止するが、細菌が繁殖するなどの理由で操業再開に時間がかかるため、家畜防疫員が発生前に一定の水準以上の衛生管理を行なっていることを確認できる場合、制限の対象外とする。

④他の防疫指針に併せ、家きんの所有者や防疫措置従事者の精神的ストレスにきめ細かな対応を行なうよう努めることなどを明記する。

〝一定の水準以上の衛生管理〟については、防疫指針に明文化する見込み。