HPAI発生8県・21事例に 被害羽数は約250万羽
11月5日に香川県で発生したH5N8亜型の高病原性鳥インフルエンザ(HPAI)は、12月10日現在、香川県で10事例、福岡県と兵庫県、奈良県、広島県、大分県、和歌山県で各1事例、宮崎県で5事例の計8県・21事例、被害羽数は約250万羽となった。農林水産省は全国の養鶏場に対し、飼養衛生管理基準を順守しているかどうかの自主点検を求めたほか、9日に開いた政府の鳥インフルエンザ関係閣僚会議では、全国の養鶏場で一斉に緊急消毒を実施する方針を示した。
本紙12月5日号では、宮崎県日向市の肉用鶏農場での発生(全国で11例目)まで伝えたが、12月2日に宮崎県都農町の肉用鶏農場(約3万羽)で12例目(宮崎県内で2例目)が発生。半径3km以内に移動制限区域(25農場、約87万羽)、半径3~10kmに搬出制限区域(141農場、約546万羽)を設定した。
また同日、香川県三豊市の採卵鶏農場で13例目(香川県内で9例目、関連農場含む約35.3万羽)と、14例目(同10例目、約2万羽)が発生し9、10例目から半径3km以内に移動制限区域(9戸、約57.1万羽)、半径3~10kmに搬出制限区域(97戸、約287万羽)を設定した。
3日には、宮崎県都城市の肉用鶏農場(約3.6万羽)で15例目(宮崎県内で3例目)が発生し、半径3km以内に移動制限区域(12農場、約58万羽)、半径3~10kmに搬出制限区域(82農場、約380万羽)を設定した。
6日には、奈良県五條市の採卵鶏農場(約8.3万羽)で16例目が発生した。5日に死亡鶏増加の連絡を受けた県家畜保健衛生所による簡易検査で陽性となり、遺伝子検査の結果、6日にH5亜型の疑似患畜を確認。半径3km以内に移動制限区域(2戸、約70羽)、半径3~10kmに搬出制限区域(10戸、約4.7万羽)を設定した。奈良県での発生は2011(平成23)年2月以来。
7日には、広島県三原市の採卵鶏農場(約8.1万羽)で17例目が発生した。6日に死亡鶏増加の連絡を受けた東部畜産事務所による簡易検査で陽性となり、西部畜産事務所で遺伝子検査の結果、7日にH5亜型の疑似患畜を確認。県では、疫学的関連が確認された採卵鶏農場(約5.3万羽)も疑似患畜として殺処分の対象(合計13.4万羽)にし、半径3km以内に移動制限区域(3農場、約21.7万羽)、半径3~10kmに搬出制限区域(10農場、約68.9万羽)を設定した。広島県での発生は初めて。
同じ7日には、宮崎県都城市の肉用鶏農場(約6万羽)で、食鳥処理場への条件付き出荷を可能とするための遺伝子検査でH5亜型の疑似患畜を確認。18例目(宮崎県内で4例目)の発生となり、半径3km以内に移動制限区域(11農場、約52万羽)、半径3~10kmに搬出制限区域(87農場、約380万羽)を設定。また、小林市の肉用鶏農場(約4.3万羽)でも死亡鶏増加の連絡を受けた都城家畜保健衛生所による簡易検査で陽性となり、遺伝子検査の結果、8日早朝にH5亜型の疑似患畜を確認。19例目(宮崎県内で5例目)の発生となり、半径3km以内に移動制限区域(10農場、約44万羽)、半径3~10kmに搬出制限区域(83農場、約308万羽)を設定した。
10日早朝には大分県佐伯市の肉用鶏農場(関連農場を含む約5.6万羽)、和歌山県紀の川市の採卵鶏農場(約6.7万羽)でもH5亜型の疑似患畜が確認された。
疫学調査チームの現地調査によると、これまでの事例のように、農場の近くに川やため池があり、渡り鳥などの水鳥が確認されたケースが多い。今回もウイルスを持った水鳥に接触したネズミなどの小動物がウイルスを鶏舎に持ち込んだ可能性を強く示唆している。また、養鶏場が集中していた三豊市で感染が拡大したのは、発生農場にいたネズミなどの小動物が周辺農場に逃げ出して感染を広げた可能性を指摘する関係者も多い。
今シーズンは、欧州各国でも家きんや野鳥、愛玩鳥などでH5N8亜型のHPAIの発生が報告されているほか、韓国でもH5N8亜型のHPAIが続発。発生農場だけでなく、半径3km以内の家きん農場の予防的殺処分も含めて、12月8日時点で計33戸、約292万羽を殺処分している。
野鳥関連でも各地でHPAIウイルスが確認されており、依然として全国的に感染リスクは高い。農水省は都道府県に対し、飼養衛生管理基準を順守しているかどうかを自主点検するよう各養鶏場に指導し、その結果を報告するよう要請。9日に開いた政府の鳥インフルエンザ関係閣僚会議では、できるだけ早期に全国の養鶏場で一斉に緊急消毒を実施する方針を示した。