ネスレがケージフリー卵への移行目標を発表、米国マクドナルドは肉用鶏のAW向上でコミットメント発表
世界最大の食品飲料会社、ネスレ(マーク・シュナイダーCEO―本社=スイス・ヴェヴェー、2016年売上高約10兆2000億円)は11月2日、「ネスレが食品製品の原材料として直接調達する、すべての殻付卵と、(粉卵や液卵などの)加工卵を、2025年までにグローバル(世界中)で100%、ケージフリー卵に移行する目標を設定した」と発表した。
同社はすでに、EUと米国の市場向けには「2020年までの100%ケージフリー卵移行宣言」をしているが、今回の発表では、米国以外の米大陸の国々や中東、アフリカ、オセアニア、さらにアジアも「状況が許せば(asconditionsallow)」対象とするとしている。
ネスレは近年、トレーサビリティやサステナブル(持続可能)な生産体制の確保を図る「レスポンシブル・ソーシング(責任ある調達)プログラム」の一環で、生産者との直接取引を強化しており、2014年のIEC会議報告では約68万6000軒の農家と直接取引している。
欧州では、すでに購入する卵(2014年報告で約1万8000トン)の「40%以上がケージフリー卵となった」としているが、世界191か国で事業を展開する中、「その他の地域では、これを達成するのはより難しいとみられる」との認識を示したうえで「前進に向けて、サプライヤーや農家、市民団体、顧客と連携していくことを期待している」とコメントしている。
米国マクドナルドは10月27日、「ウェルフェア基準がより改善された鶏肉を仕入れる」ための、8項目のグローバルコミットメント(国際的な誓約)を発表した。
同コミットメントは、マクドナルドが世界で仕入れる鶏肉の70%(オーストラリア、カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、アイルランド、オランダ、ポーランド、ロシア、韓国、スペイン、スイス、英国、米国で生産されている鶏肉)に適用されるとのこと(編集部注…日本のマクドナルドで提供されるチキンナゲットなど鶏肉メニューの原材料は、現在はタイ産の鶏肉調製品)。2024年までに100%実施を目指すという。
8項目のコミットメントは以下の通り。
①『改善された農場レベルのウェルフェアアウトカム(福祉状態の結果)』…我々の主要な市場全体で目標を設定し、成績を評価し、主要な農場段階のウェルフェアアウトカムを報告する(編集部注…国際獣疫事務局〈OIE〉は現在、止まり木などの設備の有無ではなく、鶏の状態そのものを判断基準とする『アウトカムベース』でのアニマルウェルフェア〈AW〉国際基準の策定を進めている。本紙5月25日号参照)。
②『家畜の衛生と福祉状態をモニタリングする革新的な技術』…家畜の行動を含む主要な福祉状態と衛生状態の指標を自動的にモニタリングするシステムの開発に向け、技術会社、生産者、サプライヤーと連携する。技術の確立後は、可能な分野での実用化を図る。
③『自然な行動』…鶏は餌つつきや、止まり木に止まる、砂浴びなどの自然な行動が発現できる環境で飼育しなければならない。家禽の専門家の科学的な研究成果によると、これらの行動は、つつける物や止まり木などのエンリッチメントを、舎内全体に常に設置することや、1日のうち(日中など)明期は最低20ルクスの照度、暗期は最低6時間以上(4時間は連続で)を維持することで促進できる。
④『実用に向けた商業試験』…実施の効果や影響を調べるため、我々の最大のサプライヤー(タイソンなどマクドナルドと取引する大手鶏肉企業とみられる)の協力を得て、いくつかの市場で、商業試験(コマーシャル農場での試験)を実施する。試験では、導入する光線管理や飼養密度、鶏種の影響などを調べる。この試験によって、世界各国のそれぞれの気候の中でウェルフェアアウトカムを改善するベストプラクティス(最善のやり方)が見つけられるだろう。
⑤『スタニング』…米国とカナダでは、仕入れる鶏肉を、米国農務省とカナダ食品検査庁が承認した「CAS(ControlledAtmosphereStunning)」=鶏を確実に眠らせるガススタナー)で処理されたものに移行していく。CASは現在、欧州とオーストラリアのマクドナルドに認証された鶏肉サプライヤーが多く導入している。
⑥『説明責任』…マクドナルドの新しくより包括的な鶏のウェルフェア基準の順守を担保するため、第三者機関による審査体制を構築する。
⑦『実行可能性の調査』…これらのコミットメントについて、マクドナルドが事業展開するその他の国際市場に拡大する場合の実行可能性を評価するため、2018年末までに分析を完了する。
⑧『鶏肉生産のサステナビリティ(持続可能性)を評価するマクドナルドの諮問機関』…鶏の健康と福祉を含む鶏肉生産の持続可能性の調査研究に特化した、研究者、科学者、サプライヤー、産業の専門家、AWや環境保護団体の代表ら、複数の利害関係者が参加する、国際的な諮問機関を設置する。