地鶏銘柄鶏生産振興シンポを開催 日本食鳥協会と家畜改良センター兵庫牧場
(一社)日本食鳥協会(芳賀仁会長)と(独)家畜改良センター兵庫牧場(山本洋一場長)は11月2日、兵庫県姫路市の(財)西播地域地場産業振興センターじばさんびるで全国地鶏銘柄鶏生産振興シンポジウムを開き、地鶏や銘柄鶏の生産・流通に携わる関係者ら約130人が出席した。
冒頭あいさつした日本食鳥協会の西塚修悟専務理事は「国産食肉の中で最も多く消費されている鶏肉の中では、ブロイラーが多いものの、全国各地で地域の特性を生かした地鶏、銘柄鶏が生産されているため、これらのさらなる生産振興を推進することが重要な課題となっている。
このため、日本食鳥協会は全国競馬・畜産振興会の助成を受け、平成23年度、24年度に全国地鶏銘柄鶏生産振興事業を実施しており、23年度は全国地鶏銘柄鶏ガイドブックを作成した。24年度は15事例ほどの地鶏、銘柄鶏の生産流通状況を調査しており、冊子にまとめて配布する。本日のシンポジウムは兵庫牧場が毎年開いている高品質肉用鶏部会をベースとしており、地鶏、銘柄鶏の生産事例を紹介して今後の生産振興に役立てたい」などと述べた。
基調講演では、兵庫牧場の山本洋一場長が「わが国の地鶏銘柄鶏の現状と今後の発展方向」、鯉淵学園農業栄養専門学校食農環境科の長谷川量平教授が「地鶏銘柄鶏産地形成に関する成立要件」と題して講演した。
山本場長は、国産鶏種のPRについて「国産鶏種の定義、重要性などについてオールジャパンの観点で考え方を整理し、日本オリジナル、地域振興への寄与、飼料用米の利用も含めた新たな養鶏の可能性など、多方面の視点から説明する必要がある。海外への輸出についても業界と行政が一体となって調査・研究することが重要である」などと述べた。
また、地鶏では年間出荷が5万羽以下の零細な取り組みも多いため、生産効率やコスト面が課題になっていると指摘し、「地鶏、銘柄鶏は産業としての規模が小さく、関係者の交流が極めて限定的であるが、海外も含めた各種情報の収集や関係者の交流を図り、新たな事業展開のヒントをつかむことも重要である」と強調した。
長谷川教授は、地鶏の需要特性について「地鶏が需要の代替性を持つと、国産ブロイラーや輸入ブロイラーに需要がスライドする可能性があるため、独立した地鶏の需要をいかに作るかが課題になる」とした。
地鶏ブランド構築へのキーワードとしては、(1)地域発の商品やサービス(2)品質や飼養管理、地域発展でのコンセンサスの形成(3)生産者と消費者のコミュニケーションの形成――を挙げ、「消費者との同等な相互関係が得られると信者となり、“儲け”が生まれるのではないか」などと述べた。
事例発表では、福岡県農業総合試験場の西尾祐介専門研究員が「はかた地どり」、奈良県畜産技術センターの石田充亮総括研究員が「大和肉鶏」、みやざき地頭鶏事業協同組合の仁田脇一義専務理事が「みやざき地頭鶏」、兵庫牧場の佐藤慎一係長が「国産鶏種はりま」への取り組みを紹介した。
パネルディスカッションでは、長谷川教授がコーディネーターを務め、事例発表した西尾、石田、仁田脇の3氏と西塚専務理事、山本場長が意見交換した。
この中で、都道府県の関与の継続性について西尾氏は「全国を見渡すと養鶏の担当者が1人の県が多い。福岡県は7~8年前は4人であったが、現在は2人で、種鶏の維持も大変である」とし、山本場長は「県の関与が続かなければ地鶏、銘柄鶏の維持は難しいと思うが、県の体制も弱体化しているため、兵庫牧場などが持つ育種素材を活用して、系統の造成や血液更新などに取り組んでほしい。生産の仕組みはできるだけシンプルな方がよい」などの述べた。
地鶏の全国ネットワークの必要性について山本場長は「各県はお互いにライバルになるが、弱い部分を補完して助け合うシステムが必要だと思う。ただ、公的機関だけでは力が弱いため、民間をどれだけ取り込めるかがキーポイントになる」とし、西塚専務理事は「みんなで相談しながら地鶏全体の底上げを図ることは意義があると思う。具体的な取り組み方法や財政的な裏づけなどについて検討していきたい」とした。
【初めて開催された全国地鶏銘柄鶏生産振興シンポジウム】