17県・47事例、約933万羽に被害 H5N8亜型のHPAI

農林水産省は、高病原性鳥インフルエンザ(HPAI、H5N8亜型)の続発を受け、防疫対策などの情報をまとめたリーフレット【上図】を作成し、生産者に飼養衛生管理の徹底を呼びかけているが、2月に入っても発生が止まらない。

1月30日に宮崎県新富町の採卵鶏農場(約8万羽)で死亡鶏が増加し、家畜保健衛生所による簡易検査で陽性を確認。31日の遺伝子検査でH5亜型となり、国内40例目(県内10例目)の疑似患畜と判定。宮崎県は自衛隊に災害派遣を要請し、31日に鶏の殺処分と埋却、2月1日に防疫措置が完了。半径3キロメートル以内の移動制限区域に34農場、約163万羽。3~10キロメートル以内の搬出制限区域に72農場、約370万羽が飼養されている。

2月1日には茨城県城里町の採卵鶏農場(約84万羽)で死亡鶏が増加し、家畜保健衛生所による簡易検査で陽性を確認。2日の遺伝子検査でH5亜型となり、国内41例目の疑似患畜と判定。茨城県では2005(平成17)年6月~2006年6月の発生事例(40農場、約568万羽)以来。茨城県は自衛隊に災害派遣を要請し、鶏の殺処分を8日に完了。半径3キロメートル以内の移動制限区域に4農場、約13万羽。3~10キロメートル以内の搬出制限区域に14農場、約91万羽が飼養されている。

3日には千葉県匝瑳市の採卵鶏農場(約16.9万羽)で死亡鶏が増加し、家畜保健衛生所による簡易検査で陽性を確認。4日の遺伝子検査でH5亜型となり、国内42例目(県内5例目)の疑似患畜と判定。また、旭市の採卵鶏農場(約7500羽)が疫学関連農場となり、千葉県は鶏の殺処分を開始。半径3キロメートル以内の移動制限区域に12農場、約76.5万羽。3~10キロメートル以内の搬出制限区域に22農場、約45.7万羽が飼養されている(37、39例目と重複地域あり)。

5日には千葉県旭市の採卵鶏農場(育成鶏約41.9万羽)で死亡鶏が増加し、家畜保健衛生所による簡易検査で陽性を確認。遺伝子検査でH5亜型となり、6日に国内43例目(県内6例目)の疑似患畜と判定。千葉県は自衛隊に災害派遣を要請し、鶏の殺処分を開始。半径3キロメートル以内の移動制限区域に26農場、約344.8万羽。3~10キロメートル以内の搬出制限区域に26農場、約181.4万羽が飼養されている(39例目と重複地域あり)。

6日には千葉県多古町の採卵鶏農場(約115万羽)で死亡鶏が増加し、家畜保健衛生所による簡易検査で陽性を確認。遺伝子検査でH5亜型となり、7日に国内44例目(県内7例目)の疑似患畜と判定。千葉県は自衛隊に災害派遣を要請し、鶏の殺処分を開始。半径3キロメートル以内の移動制限区域に4農場、約15.9万羽。3~10キロメートル以内の搬出制限区域に22農場、約98万羽が飼養されている(37、39、42例目と重複地域あり)。

同じ6日には宮崎県新富町の採卵鶏農場(約24万羽)で死亡鶏が増加し、家畜保健衛生所による簡易検査で陽性を確認。遺伝子検査でH5亜型となり、7日に国内45例目(県内11例目)の疑似患畜と判定。宮崎県は自衛隊に災害派遣を要請し、鶏の殺処分を8日に完了。半径3キロメートル以内の移動制限区域に33農場、約141.3万羽。3~10キロメートル以内の搬出制限区域に72農場、約369.3万羽が飼養されている(40例目とほぼ重複)。

7日には千葉県匝瑳市の採卵鶏農場(約25万羽)で死亡鶏が増加し、家畜保健衛生所による簡易検査で陽性を確認。遺伝子検査でH5亜型となり、8日に国内46例目(県内8例目)の疑似患畜と判定された。

さらに8日には徳島県美馬市の肉用鶏農場(約8000羽)で死亡鶏が増加し、家畜保健衛生所による簡易検査で陽性を確認。遺伝子検査でH5亜型となり、9日に国内47例目(県内2例目)の疑似患畜と判定された。

農林水産省では4日から8日にかけ、千葉県で4事例(被害羽数約200万羽)の多発型HPAIが発生したことから、防疫措置と発生予防措置について的確な助言と円滑な調整ができるよう、8日に関東農政局千葉拠点(千葉市中央区)に「農林水産省鳥インフルエンザ現地防疫対策本部(千葉県)」(本部長=伏見啓二大臣官房審議官)を設置した。

今シーズンのHPAI発生事例は、2月9日時点で香川県が13例、宮崎県が11例、千葉県が8例、徳島県が2例、福岡県、兵庫県、奈良県、広島県、大分県、和歌山県、岡山県、滋賀県、高知県、岐阜県、鹿児島県、富山県、茨城県が各1例の17県・47事例(被害羽数は採卵鶏741.6万羽、育雛・育成鶏106.4万羽、採卵種鶏2.8万羽、肉用鶏74.2万羽、肉用種鶏5.5万羽、アヒル2万羽、累計は約932.5万羽)で、過去最高となる。

今シーズンは高度な衛生管理を行なっていた農場でも発生しているため、生産者は今後もいつ、どこで発生してもおかしくないとして警戒を強めている。また、行政も農家の衛生管理の不備や失策ばかりを責めるのではなく、消毒や、ウイルスを媒介するネズミなどの野生動物対策の構築に地域一体的に取り組むとともに、経営補償や風評被害などにも支援を――との声が高まっている。