鶏肉需給は外食除き好調 食鳥協理事会

生産加工部会に「分科会」創設

(一社)日本食鳥協会(佐藤実会長)は1月29日、ウェブ会議システム「Zoom」を使って令和2年度の第5回理事会を開いた。

冒頭あいさつした佐藤会長は「新型コロナウイルス感染症がいつ収束するか分からず、緊急事態宣言は恐らく延長されると思う。しばらくは我慢しながら続けていかざるを得ない。巣ごもりの影響は国産チキンには追い風で、良い価格水準が昨年後半から続いている。昨日の運営部会で出された『国産チキンが安くはない価格でもこれだけ売れている背景には、巣ごもりで家庭で食べる機会が増えたことにより、高たんぱく・低脂肪で、食べても飽きず、体重も増えないという効果が見直されているのではないか』という意見は非常に興味深い。引き続き鶏肉の良さをアピールしながら、消費が安定的に続くように進めていければありがたい」などと述べた。

理事会では、令和2年度の補助事業と協会独自事業の実施状況などを報告したほか、生産加工部会の中に生産現場の担当者が技術的・専門的なことについて情報交換する場として「農場指導者・管理獣医師グループ分科会」の創設を決めた。

また、生産加工部会から推薦された㈱朝びき若鶏(群馬県高崎市、関東支部)、コーチンミライズ㈱(岐阜県海津市、中部支部)、㈱雑賀商店(和歌山県有田市、関西支部)、(一社)大川村ふるさとむら公社(高知県大川村、関西支部)の入会を了承した。

最近の鶏肉の需給動向について、各部会から次のように報告された。

▽生産加工部会=東北と九州の一部で生産成績が低迷しているところはあるが、全体的には安定しており、鶏の体重は3キロ超が続いている。寒さの影響で全国的に大腸菌症が発生し、ほとんどの会社で対策に苦労している。なかには水道管が凍結・破裂したとか、雪の重さで鶏舎が潰れたところもあった。体重が大きくなるほど、硬いむね肉の廃棄が増えている。

鳥インフルエンザの発生に伴い、四国と九州で臨時休業しなければならくなったところや、工場の稼働率が大きく落ち込んだところもある。

小売りはもも肉、むね肉を中心に順調に動いているが、外食関係が思わしくないため、副産物関係が苦労し始めている。これからは飼料価格の高騰がどうなるか心配という話もあった。

▽荷受部会=クリスマス需要のピークは24~25日に集中し、好調であった。家庭での調理が増えて、骨付きももの需要は加熱加工品から、生鮮品や味付け品に変化した。年末は全体的に好調で予定通りに売り切った。年末のわりには豚肉の売れ行きが良く、チキンと二分したのではないか。銘柄鶏など少し価格帯が高い商品も売れた。年明けは3が日休業の量販店もあったが、1週間の売り上げは昨年より落ちていないのが特徴。鳥インフルエンザの影響もあって供給が大きく不足し、第1週は欠品する店も多かった。もも肉とむね肉は全体的に好調だが、ささみの一部は凍結に回っている。手羽元と手羽先はほぼ順調。砂肝は加工仕向けもあって何とか売れているが、レバーはほとんど凍結に回り、内臓の販売に苦慮している。

1月中旬から後半に入り、一部産地から減産による調整を余儀なくされている。大腸菌症による体重の落ち込みも聞くが、2月上旬からの回復を期待している。

2回目の緊急事態宣言によって外食関係がとても厳しい。特に焼き鳥チェーンや居酒屋チェーンでは通常売れていた皮、ぼんじりなどの副産物の販売に苦労している。2月は入荷量が減る可能性はあるが、小売りに関しては前年比105%を確保できる見込みで、内臓以外はほとんど売り切れる見通しが3月まで続くように期待している。

▽小売部会=10~11月のGoToキャンペーンでは全国各地の観光地がにぎわい、売り上げも好調だったが、12月に感染者が増えて1月に緊急事態宣言が発令。地域差もあるが、量販店と同じような動きになっている。前回の緊急事態宣言と違って客数の減少は少ない反面、客単価はそれほど上がらず、買い物の時間帯も夕方以降の落ち込みがあまりがなく、消費者は冷静に対応している。

生肉では半製品関係が良く動いており、パン粉付け、タレ付け、味付きのチキンステーキなどが売れている。加工品では夕食のお弁当が良く出ている。ランチより単価が200~300円高くとれるし、おかずセットの動きも非常に良い。

クリスマスは24~25日に集中し、加工品や丸どり、骨付きももを中心によく売れた。特に東京では例年になく丸どりが売れたと聞いている。年末は全般的に苦しく、買い物の前倒しの傾向があった。普段から大量まとめ買い・冷凍が習慣になっているのではないか。大晦日はかなり落ち込んだ。天気予報が雪だった関係もあるが、帰省が控えられて購買量と客単価が落ちて、お盆と同じような状況だった。

卸売り関係は、スーパーや専門店向けは前年並みを確保できているが、外食関係向けは非常に厳しい。ラーメン、うどん、焼き鳥、うなぎに特化している店や、ランチ営業をしている店は比較的影響が少ない。休校ではない学校給食も影響は少ない。卸売り関係は大枠で前年比70~80%の売り上げと思われる。

外食向けの地鶏はなかなか動きがなく、生産者も困っているが、県が補助して学校給食に使うところもあり、助かったと聞いている。1日6万円の時短協力金は小さい店ほど恩恵があり、休業するところもかなりある。関東では鳥インフルエンザの影響は少ないが、関西では1月10~20日に欠品が発生した。九州は品薄で、スポット仕入れだと、ほぼ冷凍品が回ってくる。

▽種鶏ふ卵部会=11月上旬に香川県で1例目の鳥インフルエンザが確認され、移動制限区域が1月26日に解除された。この間の約70日は非常に長かった。一度崩れたローテーションを戻すには、かなりの労力と時間が必要。ブロイラーはサイクルが短いため影響は少ないと思うが、種鶏と採卵鶏では長い期間、販売する商品がない状態の農場もある。

ブロイラー種鶏も感染し、殺処分されたが、昨年12月と今年1月は、日本種鶏孵卵協会のデータで種卵の生産数が底になることが発生前から分かっていた。こういったことが重なり、種卵が非常にひっ迫して大変な時期を過ごした。このため日本食鳥協会で協力を呼びかけたところ、過不足に協力する企業が現れた。種鶏を持っている企業の協力がなければ種卵を回すことができなかった。改めてお礼を申し上げる。東日本から西日本に種卵が流れている状況は2月一杯まで続き、3月から徐々に緩和され、4月に何とかバランスが取れる状態になると予想している。今年の生産バランスについては、2月中旬の日本種鶏孵卵協会の会議で分かるため、その結果を3月の理事会で話したい。