鶏肉需給 暖冬で鍋物需要が苦戦 日本食鳥協会理事会

日本食鳥協会の理事会であいさつする佐藤実会長

(一社)日本食鳥協会(佐藤実会長)は11月21日に平成30年度の第4回理事会を開き、鶏肉の需給動向や支部の活動、事業の実施状況などを報告したほか、新規会員として㈱オールクリエーション(喜屋武修社長―本社・東京都中央区日本橋3-3-9、山形支店・山形県新庄市大字福田字福田山711-187、生産加工部会・東北支部)の入会を了承した。

冒頭あいさつした佐藤会長は「最近の食鳥業界は気候のせいもあるが、あまり満足いただけない状況で、昨日の生産加工部会では新たな農場が稼働するなど、増産体制が今後も続くという話があった。それに応えるべく消費の拡大を会員の皆さんと一緒に図っていかなければいけない。11月下旬になり、鍋物需要が盛り上がる時期だが、なかなか寒気がやって来ない。盛岡で初雪が降るなど、ようやく冬らしい気候になりつつあるが、少し遅い気がする。鍋物頼りだけでなく、焼き物の需要など年間を通して消費を拡大できるような形にしていく必要がある。焼き肉屋が鶏肉を使った〝とり焼き〟の店舗を展開しており、鍋物も提供して繁盛している。焼き肉業界の人も牛肉や豚肉だけでなく、鶏肉を取り込んだメニューを考えているため、我々としても鍋物と〝とり焼き〟を展開できれば、春先から夏場に向けても集客が増えるのではないかと思う。サラダチキンが売れている一方で、ロースハムが売れないようである」などと述べた。

各部会からは、鶏肉の需給動向について次のように報告された。

▽生産加工部会=生産成績は育成率をはじめ、各社とも順調であるが、ほとんどの会社の人が共通して「最後の伸びの増体が悪くなっている」と言っている。年末に向けて体重が乗ってくれるのか心配である。販売面では、もも肉、むね肉とも順調に動いており、相場がもう少し上向いほしいという話も出た。

来年10連休になるゴールデンウイークについては、5月1日の即位の礼は休みにし、2連休を2回とるとか、3連休をとるなど、約半分の人が方針を決めていた。

▽荷受部会=9月と10月は台風や地震により生産者や荷受けも被害を受けたと聞いている。産地から入荷は一部不足しているものの、おおむね順調である。暖冬で鍋物需要が思ったよりも盛り上がらない。もも肉、手羽元、手羽先は何とか消化しているが、全体的には昨年より引き合いは多くないと思う。ささみや内臓は一部凍結に回っている。むね肉は底堅いとはいえ、引き合いが強いわけではなく、普段通りの需給バランスである。

働き方改革による影響で、荷役・荷受けのコスト増加につながっていることが新たな課題である。年末に向けてローストレッグは昨年並みの注文はあるが、本当に消化できるか不安で、価格面でも競争が激しい。元気が出ない地合いになっている。寒さが戻り、冬らしいシーズンに突入することを願っている。

▽小売部会=販売面はもう1つ。昨年は気温が下がったことや、価格が高騰した水産から畜産に需要がシフトしたため、特に鍋物を中心に好調だった。今年は逆で気温も高く、9月には関西を中心に台風の影響による休業もあり、9~11月の生肉の販売は苦戦した。牛肉や豚肉もしゃぶしゃぶ用やすき焼き用といったスライス物の動きが鈍い。ブロイラーはもも肉を中心に投げ商品が出たため、銘柄鶏の販売数量が落ちて全体の単価を落とした。特に専門店では単価の高い地鶏などの動きが悪く、苦戦している。反面、加工品は8月以降、焼き鳥を中心に好調で、あっさりとした味が好まれる傾向にある。

総菜に移行しているクリスマスはもとより、年末についても出来合いのおせちの予約がいまだに増えており、生肉の売れ行きを心配する声も聞かれた。水産・畜産・農産物すべての動きが悪い。業務卸の飲食店や居酒屋も厳しい状況が続いている。

来年の消費税増税をにらんで量販店の総菜売り場が拡大している。スーパーの総菜や外食では、今年前半までは国産志向が強かったが、最近では輸入品の調製品に移行している。タイの加工メーカーが小ロットや手間がかかる商品にも対応している。全国的にドラッグストアが生鮮品の販売を強化しており、脅威となっている。年末の相場は現状では上がらないと思う。

産地の人手不足により、やげん軟骨、もも軟骨、せせりが不足。もも肉、むね肉、ささみ、手羽元の動きは悪く、先々は通常通りに動くとみている。人手不足で特にパートを採用できず、社員を使うためコスト高となっている。年末に向けて短期アルバイトを採用できるか心配している。

▽種鶏ふ卵部会=今の鶏の性能は素晴らしく、我々の想像をはるかに超えていると日々感じている。今年は需要期にひなを供給できない可能性があると年初から言っていたが、結果的には9~11月に不足なく納品できたと思う。我々の想定よりも種鶏が種卵を産んでくれたことと、夏に種鶏の熱死が思ったほど出なかったこと。さらに増羽傾向に合わせてひなの導入を準備していたが、コマーシャルのえ付け羽数は我々の想定を下回ったことによって、ひなを供給できたのではないかと感じている。

現在、種鶏の導入羽数は減っており、来年は今年以上のひな不足が需要期に起こると試算できる。ただ、我々の想定以上に種鶏の性能が良くなると、混乱を招くような事態にはならないと思う。

先月末から北日本や九州に関係なく、増体の伸び悩みに関する質問が相次いでいる。共通して言えることは、2.8キロから最後の出荷までの体重が伸びない。今のところ原因は分からないが、情報を収集して結論を出したい。