需要の盛り上げが課題 食鳥協理事会
需給動向に厳しい見方
(一社)日本食鳥協会(佐藤実会長)は3月15日に理事会を開き、平成30年度事業の実施状況などを報告したほか、31年度事業計画案と予算案を了承した。
理事会では2月に死去した谷山弘明元理事の冥福を祈り、黙とうした。あいさつした佐藤会長は「昨今の食鳥業界の状況はあまり芳しくないが、ある程度は想定されたものと認識している。こういった局面では、いかに会員の皆さんと協力して鶏肉の需要を盛り上げるかが我々の課題である。テレビ東京の『カンブリア宮殿』でトリゼンフーズが紹介された。業界の代表的な会社が取り上げられるのは喜ばしいことである。4月17日には日本唐揚協会の『からあげグランプリ』授賞式があり、会員もノミネートされていると聞いている」などと述べた。
鶏肉の需給動向については、各部会から次のように報告された。
▽生産加工部会=前回の会議の時に最後の増体の伸びが悪いという話が出たが、その後、全国にも広がって2月までは悪かった。なかには変わらない人や、今も悪い人もいるが、3月に入って多くの人が回復傾向と言っており、底を脱したという雰囲気になっている。生産が順調になった一方で、売りのほうが良くない。むね肉や手羽元などが動かなくなり、この先が不安である。成績のバラツキがかなりあり、3㌔設定なのに2.7~3.4㌔とブレが出て、飼い方が難しくなっていると感じる。人手不足の関係で稼働日を5日減らしたところや、鶏肉の需給動向をみて今年は増羽しないところもある。
▽荷受部会=2月中旬までは荷動きが良かったが、一部に入荷減があった。3月に入って気温の上昇に伴い荷余り感が増えている。特にむね肉、ささみ、手羽元、手羽先、内臓関係は全般に良くない。もも肉は特売で逃げているが、厳しい。サラダチキンのブームでむね肉はある程度は良いが、右肩上がりではない。原料に輸入品を使うところも出ており、少し踊り場に来ている。ゴールデンウイークは海外への人口流出も多く、国内消費にどのような影響が出るか。特に10連休が終わった後の消費に影響が出るのではないかとの意見が多かった。人手不足の関係で、特に運送関係からの値上げ要請が来ているが、売価に反映しにくい。今の需給動向をみて販売先からは値下げ要請が強く、その狭間に立っている。量販店では産地パックへの需要が増えている。単価が安い鶏肉にはなるべく人を使わないようにし、ロスを少なくしたいとの理由。豚コレラの影響は今のところ直接はない。
▽小売部会=末端の小売と業務卸はいずれも良くない。末端でも人手不足により様々な影響が出ている。小売は加工品や総菜の焼き鳥を中心に好調だったが、揚げ物関係は競合が激しい。生肉は昨年の10月以降、急激に悪くなった。鶏肉だけでなく、生鮮全体が厳しい。鶏肉はここ2~3年の好調だった反動が来ている。銘柄鶏と地鶏も不調で、部位ではささみ、手羽元。手羽先は例年足りないという話を聞くが、今年はそうでもない。業務卸では、得意先の焼き鳥チェーン店が人手不足により不採算店を閉めている影響で、売り上げが落ちている。産地の人手不足によって特殊な部位がなかなか集まらない。焼き鳥屋やラーメン屋から求められる部位は多いが、売るものがない状況で死活問題となっている。最低賃金が上がり、パートの募集が難しい。既存のパートの賃金も調整しなければならず、売り上げが厳しい中で利益を圧迫している。得意先も同じ状況で、仕入れがシビアになっている。
ブロイラー種鶏のアウトに遅れ 種鶏導入に影響
▽種鶏ふ卵部会=1月の新年会の頃は種卵が余り気味であったが、1月後半から寒波の影響で現在はタイト気味に推移している。ブロイラーのコマーシャルと同様、チャンキーの種鶏も温度管理の幅が狭いと感じている。今年は例年に比べて3月上旬にオーダーが集中した。ゴールデンウイーク前の出荷の要望を受けたものとみている。日本種鶏孵卵協会ではひなの生産数とえ付け羽数のバランスを3月中に発表する予定だが、今年は7月以降、ひなは不足するとみており、不足数は過去数年で一番大きいと予想している。昨年7月頃から計画数の種鶏が導入されていない。昨年夏の災害により種鶏を導入できなかった部分もあるが、一番大きい要因は採卵鶏の成鶏更新・空舎延長事業が今年度に2回発動されたことで、ブロイラー孵化場はとても困っている。採卵鶏のアウトが優先されるため、ブロイラー種鶏のアウトが後回しになったり、受けてもらえず、アウトに1か月くらいかかった話も聞いている。現在も種鶏をアウトできず、計画数の種鶏が導入されていない。免疫抑制する疾病の発生が多いと聞いている。種鶏での対応を求められているが、ワクチンがないものもあり、困っている。会員も人手不足の影響で経営が悪い状態が続いているため、種鶏孵卵業界の事情なども考慮していただきたい。