改正「食品衛生法」の政省令で厚労省が説明会

HACCP衛生管理 完全施行は来年6月1日

東京都中央区で開かれた関東・信越ブロックの説明会には約800人が出席した

HACCPに沿った衛生管理の義務化や、営業届出制度の創設などを含む「食品衛生法の一部を改正する法律」と関連政省令が来年度以降、順次施行・通知されるため、厚生労働省は関連事業者向けの説明会を、2月12日から3月3日にかけて全国7都市で開いている(編集部注…新型コロナウイルスの影響により一部延期)。

関東・信越ブロックの説明会は2月12日に、東京都中央区の銀座ブロッサムホールで開き、食品製造・流通関連企業から約800人が出席。同省医薬・生活衛生局食品監視安全課の三木朗課長があいさつし、担当職員が改正のポイントについて次のように説明した。

HACCPに沿った衛生管理

全体的な考え方については、既存の食品安全の各工程を、分かりやすく可視化し、最適化していくものとし、原則として①食品などを直接取り扱う従業員数が50人以上(企業単位ではなく各事業所単位)の事業者は「HACCPに基づく衛生管理」②これに当てはまらない小規模な事業者(工場隣接の直売所など含む)などは「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」の対象になると説明。対象事業者が実施することとして①衛生管理計画の作成と従事者への周知徹底②必要に応じて(掃除のやり方や消毒液の希釈など統一が難しい作業などの)手順書(マニュアル)の作成③実施状況の記録④定期的検証――を挙げた。

留意事項として①今回の制度化は衛生管理の手法(ソフト)に関するもので、施設や設備(ハード)の新設や変更は不要②衛生管理の実施状況は、これまでと同様に、営業許可の更新時や保健所の定期的な立ち入り検査の機会に食品衛生監視員が確認する③新しい制度のため、当面は導入の支援・助言が中心④(ISOや自治体HACCPなどの)第三者認証取得は義務ではない⑤罰則も従来通りで、管理に不備があれば口頭や書面で改善指導→改善しなければ営業の禁停止などの行政処分→従わなければ懲役や罰金の可能性がある⑥すべての営業者は食品衛生責任者(要件は調理師、栄養士、製菓衛生師、都道府県知事が行なう養成講習会の受講者など)を任命しなければならない――と説明。施行のスケジュールについては、同法は今年6月1日施行だが、1年間の猶予期間を経て、完全施行は来年6月1日になることを説明した。

営業届出制度

営業届出制度を創設した理由については「すべての食品等事業者に、HACCPに沿った衛生管理が義務付けられることに伴い、食品衛生監視員が、対象事業者を把握できるようにするため」とし、届け出る内容は①届出者の氏名②所在地③営業の形態④主に取り扱う食品などの情報⑤食品衛生責任者の名前――と説明。鶏卵GPセンターや鶏肉卸(パック済みの商品のみ取り扱い)も届出対象業種になる。

届出対象外の事業者は、①食品や添加物の輸入業②運搬・貯蔵(冷凍冷蔵倉庫業は除く)のみをする営業③常温で品質が長期間劣化しない包装食品の販売業④合成樹脂以外の器具・容器包装の製造業⑤器具・容器包装の輸入・販売業――。このうち①②③⑤の営業者と、1回の提供数が20食程度未満の学校・病院以外の給食施設などは、衛生管理計画や手順書の作成が不要とされている。

窓口は①保健所=今年6月以降(紙の書類提出、自治体により受け付け開始がずれ込む可能性もあるため、自治体に事前確認すると良いとのこと)②オンライン届け出システム(食品衛生申請等システム)=今年4月以降稼働予定――で、届け出の最終期限は来年12月1日。一度届け出れば更新の必要はないが、廃業や事業所の閉鎖時は届け出る必要がある――と説明した。

営業許可制度

営業許可制度については、液卵製造業などを新たに含めた一方、包装済みの食肉だけを販売するような食肉販売業は、許可業種から届出業種に移行させたことを示した。

許可業種の申請のスケジュールについては、法律の施行は来年6月だが、①もともと許可業種だった事業者は、本来の有効期間が切れるまで旧基準の許可で営業できる(ただし製造できるのは旧基準で定められた食品のみ)②新たに営業許可業種に組み込まれた液卵製造業や食品の小分け業などは、対応に相当の労力を要すると見込まれることから、来年6月から3年間(2024年5月末まで)の猶予期間を設け、この期間中に申請すれば良い③許可業種から届出業種に移る営業者は、既に自治体に把握されているため届け出は不要――と説明した。

食品リコール報告義務化など

このほか、同法の改正内容に含まれている食品リコールの報告義務化や、食品用器具・容器包装原料のポジティブリスト化、4月に施行される「農林水産物および食品の輸出の促進に関する法律」(輸出促進法)の概要についても説明。

リコール報告義務化については、健康被害のおそれがある食品などを自主回収した場合に、行政への届け出を条例で定めている自治体も既にあるが、これを今回の改正に合わせて国レベルで来年6月1日から義務化することや、これに合わせて自治体の条例は改廃され運用の地域差がなくなっていくと考えていること。容器包装のポジティブリスト化については2月中をめどにリストを示し、6月1日から施行するが、実情を考慮して5年程度の猶予期間を想定していることを説明した。

輸出促進法については、国産農林畜水産物の輸出を拡大するとの国の方針に基づき、4月から所管が厚労省から農水省に変わることを説明。輸出証明書のうち食品の自由販売証明書は地方農政局など(電子申請)で受け付けることや、輸出向けHACCP等対応施設整備への補助が始まることなどを紹介した。