キーワードは〝日本人と同等以上〟 「特定技能」在留資格4月からスタート

技能実習制度は継続 集鳥や独立GP作業従事も可能に

昨年末の国会で可決・成立した改正「出入国管理および難民認定法」(入管法)が4月に施行され、これまでの技能実習制度による外国人研修生の受け入れとは別に、人手不足の生産現場で〝即戦力〟となる外国人向けの在留資格『特定技能』が認められるようになる。法務省による相談受け付けは3月からで、具体的な運用方法や細かな施行内容など、まだ流動的な部分もあるが、現時点で考えられている鶏卵・鶏肉の生産現場への影響について、関係者に聞いてまとめた。

在留資格の枠

特定技能在留資格には、通算で最長5年間の在留が認められる「特定技能1号」と、上限がない「特定技能2号」の2種類が設定されているが、当面交付されるのは、畜産関連分野では「特定技能1号」のみ。従来の「技能実習(第1~3号、イ・ロ)」在留資格と異なるのは、創設の主目的が〝人材確保が困難な産業分野に属する技能を有する外国人の受け入れ〟など、人材育成や技能の移転ではなく人手の確保になっている点。

従って対象業種は、人手不足が深刻な幅広い業種(介護や建設、農業、飲食料品製造、外食業など14分野)をカバーし、後述する関連業務(付随的な仕事)にも従事できるようになっている。14分野のうち、本紙関係は「農業」(耕種、畜産)と、「飲食料品製造」の2分野。鶏卵の洗卵選別包装施設、液卵工場、ブロイラー処理場、成鶏処理場なども、農業施設の付帯設備でなければ、飲食料品製造業に分類される。

政府が試算した今後5年間の受け入れ見込み数は、農業が3万6500人(政府試算の人手不足見込み人数の約3割)、飲食料品製造が3万4000人(同5割弱)。1事業所当たりの受け入れ人数に制限はない一方、該当分野の受け入れ人数が規定数に達すれば、受け入れが一旦停止するため、採用できない年度が続く可能性なども指摘されている。

必要なスキル

在留資格の交付対象は「特段の育成・訓練を受ける」必要がない〝即戦力〟のみで、分野別の技能測定試験への合格か、技能実習2号修了の実績が求められる。とはいえ、法案の可決から約4か月間と短期間で施行されることもあって、技能測定試験はまだ準備できておらず、飲食料品製造分野では10月ごろにスタートの予定。

従って、当面は農業分野や飲食料品製造分野に該当する職種で技能実習2号を修了した人(農業分野については6万8000人以上、飲食料品製造分野では3万人以上いるとみられている)が、両分野の「特定技能1号」の在留資格の交付対象になる。なお、技能実習1号の実習生は、帰国後に技能測定試験を受ける必要があるとされている。

日本語の能力も、国際交流基金などが行なう日本語能力試験では「N4」(5~1の数字が小さいほど難しく、4は基本的な日本語を理解できるレベル。過去2年間の国内外合計認定率は3割台で推移)以上が必要となっているが、特定技能在留資格のための「日本語能力判定テスト(仮称)」が秋以降にスタートする予定。

可能な仕事内容

特定技能在留資格の保持者は、農業分野の畜産業であれば飼養管理や集出荷・選別に加えて「加工・運搬・販売・雪かき」など、飲食料品製造分野であれば飲食料品(酒類を除く)の製造・加工・安全衛生管理に加えて「原料調達・受け入れ・納品・清掃・事務所管理」などの関連業務を、日本人の従業員も通常行なっていれば、外国人も付随的に従事できる。

従って、農業分野で在留資格を得て農場隣接の加工卵製造施設で付随的に作業したり、飲食料品製造分野で在留資格を得て食品製造施設から農場へ原料卵の集荷に行ったり、食鳥処理場から原料調達のため集鳥に付随的に従事したりすることが可能になると解釈されている。

待遇

賃金などは同程度のスキルや経験がある日本人と同等以上にする必要があるため、残業代なども労働基準法や関連政省令などに基づいて日本人と同様に算出しなければならない。在留期間が通算で5年間以内であれば、本人の希望により帰国や再来日ができ、ハローワークなどを利用して同じ業種内で転職することも認められている。

これらのことから、安定して就業してもらえるよう、職場の雰囲気や住居、生活環境のサポートなどにも配慮する必要があるとされる。飲食料品製造分野の在留資格では直接雇用のみで、派遣形態の雇用は認められない。

「受入れ機関」と「登録支援機関」

同法に示された、外国人と雇用契約を結ぶ各分野の「受入れ機関」(人材を求める農家や企業)や、日本での生活を支援する「登録支援機関」は具体的には示されていないが、ともに幅広い事業者がなれるものと想定されている。

ただ、「受入れ機関」になると、技能実習制度のように実習記録の作成義務はないが、報酬額などを定期報告し、農水省の協議会にも参加して同法の適切な運用に協力しなければならない。

「登録支援機関」は従来の技能実習制度の監理団体にとどまらず、農協や各種団体、行政書士などの国家資格を持つ個人なども要件を満たせばなれるもよう。

運用後の見通し

どれだけの人が日本に再び来てくれるのかについては、技能実習制度関係者の感触では、技能実習で学んだ内容・分野が新たに就労する仕事と関連しているかや、日本での生活が良かったと感じられたかも重要だが、これらに加えて本国や他の外国人労働者受け入れ国より収入などが多く得られるのであれば、また日本に来て働いてくれる人はいるとみているとのこと。

限られた受け入れ人数の中で、労働力確保は国内の業種間だけでなく国際的な競争下でも進められることになる。これらの人々を確保するには、現実的には既存の技能実習制度の送り出し国の派遣事業者や関連する日本側の既存の受け入れ機関(監理団体)などのネットワークが引き続き必要になると予想されている。

一方で、これまで述べてきた特定技能在留資格の特徴から、「受入れ機関」の負担や計画的採用の可能性など、中期的な視点も必要になる。各分野で若い日本人の採用や一層の自動化に積極的に取り組む経営もある。

以上の各要因から、これまで技能実習生を受け入れることができなかった農場から独立した鶏卵の選別・加工施設や集鳥作業の現場にも、外国人の活躍の場が広がるとみられているが、これまで技能実習生を受け入れてきた生産現場では、当面は現状の制度を活用していくとみられている。