「JAMA」誌論文への反論 米国鶏卵関係団体も解説
卵の健康への良さも多数紹介
米国ノースウエスタン大学の研究者が米国の医学雑誌「JAMA」に発表した論文について、本紙4月15日号で英国鶏卵産業協会の反論、25日号で大櫛医学情報研究所(東海大学名誉教授)の大櫛陽一所長による同論文の不合理な点の指摘を掲載したが、米国鶏卵生産者協会(UEP)や、アメリカン・エッグ・ボード(AEB)傘下のエッグ・ニュートリション・センター(ENC)も、反証として「卵の摂取と心臓病の発生率には関連がない」ことなどを示した多数の研究結果を紹介している。
ENCはホームページ内の3月15日付の記事で、ノースウエスタン大の研究者が実施した2万9000人規模のメタ解析の結果は「卵の摂取と心臓病には関連がない」との結果が出た既存の35万人規模のメタ解析と一致せず、さらに米国以外の疫学調査では「卵はむしろ心臓病予防に良い」との結果になっているものもあることから、「卵と一緒に何を食べたかを把握する重要性」を指摘。4月10日付の記事では「最近の観察データは引き続き、卵はすべての米国人のサブグループ(年齢や性別、生活習慣などで分けた集団)に対し有益な栄養として貢献できることを示している」ことなども解説している。
UEPもホームページ内の3月21日付のニュースで「米国の主要テレビ局や大手各紙で紹介された同大研究者の発表内容は、既存の研究結果と矛盾している」と指摘。4月4日には、AEBが実施したアンケートの結果を紹介した。
同アンケートでは、①回答した米国人の77%は健康上の心配で卵の摂取を制限していない②78%は卵による健康への悪影響を気にしていない③25%はノースウエスタン大研究者の発表内容についての報道を見たが、うち56%は「同報道に影響されることはなかった」、27%は「実際には肯定的な影響があった」、17%は「否定的な影響があった」と回答した④「否定的な影響があった」と回答した17%の人は、1週間に1回も食べないなど、卵を習慣的に食べない傾向が強かった⑤82%は「卵は安全に食べられる」と回答し、その回答率は前年の78%より4ポイント上昇した――などの結果が得られたとのこと。
ENCはツイッターに加えて、3月からフェイスブックページ(https://www.facebook.com/eggnutritioncenter/)での情報発信も開始。栄養バランスが良い卵料理のレシピや、卵が健康に役立つことを示した様々な研究成果を紹介し、3月15日には、ノースウエスタン大の研究者が使ったデータについて①調査対象者が何を食べたかの情報を記憶に基づいて集めており、正確さに懸念がある。結論を導く一要素にはなるが、唯一の要素にはならない②結論は卵だけを原因としているが、特に重要と考えられる運動習慣や飽和脂肪の摂取量、他の食品由来のコレステロール摂取量、喫煙習慣、体重、BMIを適切に取り上げていない――ことなどを指摘した米NBCの人気情報番組「トゥデイ」の健康・栄養分野の編集委員を務めるメデリン・フェルンストレーム博士の記事へのリンクを紹介している。
米国では、ちょうど3月28、29日に『米国人のための食事ガイドライン(the Dietary Guidelines for Americans)』2020年版の第1回検討委員会が開かれたとのこと。米国でにわかに様々な研究成果や意見が出てきている背景には、新しいガイドラインの内容についての綱引きが再び始まっていることがあるとみられる。同ガイドラインの2015年版(現行版)については「入手可能なエビデンスからは、コレステロール摂取量と血清コレステロール値の間に明らかな関連は示されていない。コレステロールは、摂りすぎが心配される栄養素ではない」と結論づけ、コレステロールの摂取基準(1日300ミリグラム以下)を撤廃した経緯がある。
2020年版については、過去最多の20人の研究者が検討委員会に参加するとのこと。UEPも再び、パブリックコメントなどで参加するとしている。