鶏卵、鶏肉生産量は増加 需給・価格にAI後遺症 米農務省需給予測
米国農務省(USDA)は5月10日公表の世界農産物需給予測月報(WASDE)で、2017年までの農畜産物の需給見通しを公表した。鶏卵、鶏肉、トウモロコシ、大豆の概要は次の通り。
【鶏卵】今年の生産量は、昨年の鳥インフルエンザからの回復過程にあるため、前年より4.5%増えると見込んでいる。国内の加工卵ユーザーからの声を受けて緊急的に拡大した輸入も、前年比7.9%減となるものの、14年比では3.3倍の水準が続く。ただ、2017年には前年比47%減の6000万ダースまで減るとみている。
価格は、第2四半期は78セント、第3四半期は87セントと1ダース当たり1ドルを割る水準で推移するとみている。
なお、アーナーバリーの中西部ラージサイズ卸価格は、昨夏につけた1.88ドルの史上最高値から、今年のイースター後は2010年以来の低水準となる76セントへと落ち込んだとのこと。USDAが5月13日に発表した農家販売価格(5日平均)は、前年同期比81セント安の33セントに落ち込んでいる。
1日当たり消費量は、16年は前年比10.7個増の263.6個、17年は1.5個減の262.1個と予想している。
【ブロイラー】今年の生産量は、堅調な国内需要を背景に、生産各社の増産基調が続くとの見通しから、前年より2.5%増えると見込んだ。
輸出量は、鳥インフルエンザの終息による輸出再開を見込んで6.4%増える予想となっているが、足元の輸出需要が想定より回復していないため、前月予想から1700万ポンド下方修正しており、70億ポンドを超えていた2012~14年に比べると依然、大幅に少ない。ただ、2017年には69億500万ポンドまで回復するとしている。
価格(1ポンド当たりセント)は、90セント弱の水準で推移するとみている。
【トウモロコシ】16/17穀物年度(今秋収穫分)の予想生産量は、前年度比8億2900万ブッシェル増の144億ブッシェルで、過去最高の前々年度も2億1400万ブッシェル上回る史上最高の数量を見込んでいる。
単収は前年度よりわずかに落ちるが、作付面積は560万エーカー拡大する見通し。総供給量も前年度比8億8600万ブッシェル増で史上最高の163億ブッシェルを見込んでいる。
主産地のイリノイ州ではちょうど芽が出始めたところで、作付けが早く終わり、生育に適した天候も続いたことから、5月8日現在の発芽割合は平年の同時期より約20ポイント高い46%となっている。全国平均の作付け進捗度は64%、発芽割合は27%程度とのこと。
総消費量も前年度比4%増で過去最高の見通し。うちエタノール向けは、ソルガム(マイロ)由来のエタノール生産が減り、ブレンダー(エタノールとガソリンを混合する業者)のトウモロコシ由来エタノールの使用量が増えると見込み、前年度より5000万ブッシェル増えている。輸出量は、トウモロコシ価格の下落と、競合するブラジル産の輸出減などを見込んで1億7500万ブッシェル増えるとした。
期末在庫の21億5300万ブッシェルは、実現すると80年代中ごろ以来の高水準となる。ただし期末在庫率は、政策により5割を超えていた80年代当時と比べると、母数の使用量が大幅に増加していることもあり、大幅に少ない15%にとどまる。
飼料その他向けは、トウモロコシ生産量と家畜の飼養頭羽数の増加、トウモロコシ価格の下落を織り込んで前年度より3億ブッシェル多い55億5000万ブッシェルとしている。
平均農家販売価格は、前年度より中間値で25セント前後低い3ドル5セントから65セントで推移するとした。
16/17年度の世界のトウモロコシ生産量は、前年度比4100万トン増で過去最高の15億4320万トン、消費量も4300万トン増で過去最高の10億1190万トンと予想した。消費量は中国の伸びが最も大きく、950万トン増の2億2700万トン、米国は920万トン増の3億1040万トンとした。
【大豆】16/17穀物年度の予想生産量は、前年度比1億2900万ブッシェル減の38億ブッシェル。搾油量は3500万ブッシェル増の19億1500万ブッシェルで、米国内の食肉生産量が増えるとの期待から、大豆ミールの需要が増加すると見込んでいる。中国の大豆輸入量は前年度比400万トン増の8700万トンと予想している。
世界の油糧種子の生産量は前年度比2.1%増の5億3380万トン、搾油後に出るミールの出荷量は2.6%(794万トン)増の3億1704万トン、ミールの消費量は3.2%(970万トン)増の3億1670万トンと予想。消費量の増加分970万トンのうち32%は、中国一国が占めている。