弱い秋相場の上昇力 鶏卵需要の喚起が重要に
鶏卵相場(東京M基準)は9月16日に5円上昇し、215円となった。秋相場は8月下旬から9月第2週にかけて上昇を始める年が多いが、今年は夏場の水準が高かったことや上げ材料が乏しいこともあり、やや遅い立ち上がりとなっている。
小売り需要は回復傾向をみせ、店舗によっては積極的な特売も実施。気温の低下や緊急事態宣言の延長などで内食需要が再び強まる傾向の中、食料品の値上げ発表が相次いでいるため、集客のための商材として卵への引き合いが強まっている。
外食関係は、ファストフードは「月見キャンペーン」が好調の一方、その他の業態は緊急事態宣言の延長などが強く影響し、非常に厳しい状況が続いている。
加工関係も、小売り向けの冷食需要は好調だが、コンビニや外食向けは低調。需給がひっ迫した年前半に手当てされた粉卵や輸入卵も使用可能なユーザーは導入し始めているとのことで、当面は在庫量が多く、スポットの受け入れが難しい状況になっている。
生産面でも、川下の販売先が新型コロナウイルスの影響を強く受けているため、余剰を抱えている産地と不足している産地がともにあるなど、需給ともに業態や売り先によって明暗が分かれる状況が続いている。
生産量は今後、気温の低下や、鳥インフルエンザ(AI)被害からの回復に伴い、増加傾向の推移が予想され、全体的な相場上昇力は弱い。穀物価格や海上運賃の上昇に伴う飼料高騰の長期化が懸念される中、コストに見合う適正卵価を実現するためには、ワクチン接種の進展などに伴う行動制限の緩和や各種施策が待たれるなど、需要の喚起が重要な秋口となっている。