国産チキンの販売苦戦が続く 食鳥協理事会
調味料メーカーとのコラボ実施へ
(一社)日本食鳥協会(佐藤実会長)は8月27日に理事会を開き、令和元年度の事業の進ちょく状況を報告。鶏肉の需給動向については、生産面は猛暑の中でも順調だが、販売面では苦戦している状況が報告された。また、物流コストの上昇に伴い、商品価格(鶏肉、ひな)と運賃は別に請求すべきではないか、との意見も出された。
理事会であいさつした佐藤会長は「我々の業界が非常に厳しいことは、あえて言うまでもない。少し耐える時期だと思っている。生産は順調で、暑かった夏の割りには鶏の熱死は少ない。鶏も暑さに慣れて、そう簡単には倒れないようだ。しっかりと生産した国産チキンを、多く消費していただく取り組みをいかに継続していくかが我々の課題である。国産チキンだけのプロモーションでは厳しいため、調味料メーカーとコラボしたキャンペーンを継続的にできるようにしたいと考えている。皆さんのアイデアや情報をいただきながら消費拡大に取り組みたい」などと述べた。
鶏肉の需給動向については、各部会から次のように報告された。
▽生産加工部会=7月は梅雨明けが遅かったため、さほど影響は出ていない。鶏の熱死は、8月を含めても多いところで3000羽くらいで、鶏そのものが暑くても丈夫に育つようになってきた。体重は7月が順調で、8月は若干小さめのところもあったが、順調に来ている。種鶏も問題なく来ているようだ。ただ1か所、大雨で鶏舎に水が入り、4000羽ほど水死したところもあった。
肉用鶏向けの多段式鶏舎の導入が始まりそうだという話の一方で、アニマルウェルフェアの動きに逆行するのではないかという見方もあり、今後どのような形で進んでいくか、様子を見ていかなければいけない。
生産が順調の反面、鶏が大きくなるほど、むね肉の歩留まりが良くなるため、むね肉の荷余りが目立ってきている。対策を考えなければいけないと話をしている。
▽荷受部会=大手調味料メーカーと全国の量販店、荷受を含めたメーカーの三つどもえで、国産チキンのクロスマーチャンダイジングをやっていく。11月にはボジョレーヌーボーに合わせて、調味料と国産チキンのメニュー提案を行なう予定にしている。
国産チキンの販売状況は、前回の理事会が開かれた6月と比べても特に大きな変化はなく、売れ行きはとても悪い。7月の気温が低かった時期は一部で良かったが、8月に入ると猛暑や台風などで良くない。特にもも肉と手羽元、一部ささみも凍結に回っている。比較的順調なのはレバーを含めた内臓と手羽先で、むね肉は一部で凍結に回っている。加工メーカーへの原料供給は、ある程度踊り場を迎えている。
銘柄鶏は価格が高いため、販売は苦戦している。年末商品の準備は一部で進めているが、目下は凍結の回避に追われている。物流経費の価格転嫁が難しいため、商品価格と運賃の見積もりを別に出すことを、お客さんに励行していくことが必要ではないか。飛行機会社のように、運賃と燃油サーチャージは別という考えも必要になってきた。
7月の天候が思わしくなくてアイスクリームや氷の出荷が少なく、冷蔵庫が一杯になっている。鶏肉を凍結しても、保管する冷蔵庫がない。味付け商品や、少量パックが少しずつ売れ始めている。食品ロスの観点から、家庭でも細かく商品を買う動きが出始めている。
▽小売部会=ゴールデンウイーク明けから6月にかけて、特に生肉の動きが鈍かった。なかでも銘柄鶏の動きは悪かったが、加工品は焼き鳥を中心に好調だった。大阪では6月末に開かれたG20では、主要な高速道路が通行止めになったり、会社が休みになったところもあって、都市部の商業施設では影響を受けたが、郊外ではそれなりに集客があった。
7月は関東を中心に日照不足で気温が下がり、20日くらいまで生肉の動きが急に良くなった。なかでも鍋の材料が金額は少ないものの、前年比150%ほど伸びた。8月は猛暑で生肉の売り上げが減り、加工品は焼き鳥やから揚げを中心に好調に推移した。お盆は3連休もあり、全体的に好調だったが、関西では台風21号の影響で、営業時間の短縮や休業するところもあり、売り上げを大きく落とした。9月、10月も、特に関西以西では台風の影響が心配である。10月には消費税の増税もあり、不安材料になっている。
業務卸は、ホテル・レストランでも人手不足と働き方改革により、目方指定のポーションカットや、調理済みの加工品を真空パックして納品するなど、ますます加工度の高い商品の注文が増えている。個人の飲食店は、高齢化や後継者不足により廃業が増え、得意先が減っている。海外からの魚や鶏肉などの調製品が増えている。ゴールデンウイークやお盆など休みが増えているため、飲食店も場所によっては休むところが増えている。輸入品の取り扱いが急に増えており、価格の安いものにシフトしている。
▽種鶏ふ卵部会=ブロイラー用ひなのえ付け羽数は、5月から8月までは減っている感覚で、9月以降は計画予想数字に近づいている。現在は前回の理事会で報告した通り、種鶏をアウトできず、我々は自然アウト延長と呼んでいる。1~2か月ほど種鶏のアウトが伸びており、アウトするにも小出しの状況が全国的に続いている。このため、10月はひなが大幅に不足すると予想していたが、この件に関しては間に合うのではないかと感じている。ただし、アウトが延長することにより、人手不足の中で人員を適正な場所に配置できない状況が続き、困っている。従業員を休ませている分、管理職の負担も大きい。このままの状況だと、ひなを運べないくらいの人員不足になっている。
種鶏ふ卵としては、ひなの値上げをお願いしたいといつも思っているが、今の相場状況ではできない。生産加工の方々には、①スペアひなの低減(2~3%から1%程度に)②運賃の別請求③サービス品(エサ箱などのダンボール商品)の廃止――をお願いしたい。
▽インテグレーター部会=全農では現在「全国どど~ん!と『どんぶり』スポーツ応援キャンペーン」を実施している。47都道府県のご当地『どんぶり』には、鶏肉や卵を使ったメニューが思った以上に多かった。
地鶏フェスを開催 ロハスフェスタ東京(9月14~16日)
日本食鳥協会は、9月14日から16日まで東京都練馬区の光が丘公園芝生の広場で開かれる「ロハスフェスタ東京2019」に出展し、『地鶏フェスティバル』を開く。
令和元年度の地鶏普及推進事業の一環で、名古屋コーチンと比内地鶏の焼き鳥、から揚げなどを販売するほか、地鶏アンケートやミニセミナー、子ども向けのゲームなどを通して、地鶏の消費拡大をアピールする。