TPP反対で国際シンポジウム
TPP(環太平洋経済連携協定)参加の是非をめぐる議論が活発化する中で、参加に慎重な国会議員や有識者らで組織する「TPPを考える国民会議」は3月12日、東京都千代田区の砂防会館で米国やニュージーランド、韓国の有識者を招いて国際シンポジウム(実行委員長=山田正彦前農相)を開き、農業・畜産関係者ら約1300人が出席した。
第1部の講演会で、ニュージーランド・オークランド大学法学部のジェーン・ケルシー教授は、日本がTPP交渉に参加するには(1)牛肉の輸入規制の緩和(2)郵政民営化の見直し(3)自動車部門の改革(4)農業市場の規制の完全撤廃――など一定の前提条件があるとし、「日本がTPP交渉に参加できるのは9か国での交渉が合意した後で、主に米国の主導で決まった内容を後追いで合意させられる」と述べた。
同国緑の党のラッセル・ノーマン共同代表は「TPP交渉は秘密裏に行なわれており、その内容は市民や議員には公開されず、非民主的。TPPの主な標的は参加国の国内法を変えることである」と指摘した。
米国の消費者団体「パブリックシチズン」のロリ・ワラック氏(貿易担当)は「米国のTPP推進者は、この協定の内容を知られたくないため貿易協定と言っているが、TPPにある26分野のうち、貿易に関するものは2分野だけで、残り24分野は大企業が好むような不人気な政策を国に押し付けるものである」と説明し、NAFTA(北米自由貿易協定)の実情を紹介した。同団体のピーター・メバードック氏(医薬品担当)は「TPPの26分野のほとんどは多国籍企業が起草している」とした。
韓国・朝鮮大学法学部兼任教授で「韓米FTAハンドブック」著者の宋基昊弁護士は「韓米FTAでは米国のやり方が貫徹され、韓国は交渉の入口で牛肉の輸入規制の緩和などを譲歩してしまった。最初に譲歩すると、交渉を続けざるを得なくなるため、日本の皆さんには韓国の経験を参考に賢明な判断を下してほしい」と述べた。
青山学院大学の榊原英資教授は「世界経済の中心は欧米から、経済統合が進む東アジアに移ってきている。その中で中心的なプレーヤーの日本が、今さらTPPに飛び乗る必要は全くない」と強調した。
第2部の意見交換会では、韓国・統合進歩党の権永吉国会議員、韓米FTA阻止汎国民運動本部の朱帝俊政策委員長、山田正彦前農相もパネリストに加わり、出席者からの交渉参加阻止方法などに関する質問に答えた。
権永吉議員は「TPPは韓米FTAが基準になるが、どちらも国内の法律と制度、慣行を変えてしまうものである。日本政府は韓国政府と同じように、貿易の問題はわずかな部分に過ぎないにもかかわらず、貿易と農業の問題に矮小化させるかもしれない」とした。
朱帝俊政策委員長は「韓国の韓米FTAへの反対を支持する世論は70%を超えている。NAFTAと韓米FTAの情報を日本の皆さんに共有してほしい。TPP交渉は簡単には終わらない。重要なことは反対の世論を流し続けることだ」と強調し、榊原教授は「日本の主要メディアはTPPに反対していないため、世論対策が非常に重要である」と述べた。
山田前農相は「外務省は交渉途中での離脱はあり得ないと言っている。これからが本当に大変であるが、世論をなんとか盛り上げて、交渉参加を阻止したい」と訴えた。