2015年の養鶏産業の課題 需給安定でコスト見合い相場を

昨年1月以降、OIE(国際獣疫事務局)に報告された家きんのH5N8亜型の高病原性または低病原性鳥インフルエンザ(AI)の発生は、韓国(高)、日本(高)、中国(高)、ドイツ(高)、オランダ(高)、英国(高)、イタリア(高)、米国(高と低)などで、特に韓国では、1月以降猛威を振るい、いったんは清浄化したものの、9月以降再び発生が継続している。
日本では4月に、熊本県のブロイラー農場に侵入したが、迅速な防疫対応により1事例のみで終息した。ただ、冬の渡り鳥の飛来シーズンに入り、韓国での再発に加え、各地の野鳥や、野鳥の糞などからAIウイルスが相次ぎ確認され、いつ、どこで発生するか予断を許さない状況が続く中で、12月16日に宮崎県の肉用種鶏農場で発生が確認された。
宮崎の事例も、県の迅速な防疫対応によって、現段階では感染の拡大は報告されていないが、依然として、どこで発生してもおかしくない状況が続いている。引き続き警戒を緩めず、鶏舎へのウイルス侵入阻止のために野鳥や野生動物(ネズミなど)対策と、消毒を基本としたバイオセキュリティを一段と徹底し、AIから日本の養鶏産業を守らなければならない。
昨年は、配合飼料や生産諸資材価格の高止まりで、生産コストが上昇したほか、配送費なども値上がりし、生産・流通とも厳しい試練に直面した。しかし、鶏卵は、年間を通じて加工筋の手当てが入り、業務・外食でも卵メニューの広がりと定着がみられたこと、鶏肉についても、畜産物全体の需給がタイトな中で、他の食肉に比べて割安で、健康にも良いことが認知され、家庭用や業務・外食用とも消費が伸びたことから、相場水準は鶏卵・鶏肉とも高水準を維持し、何とか愁眉を開くことができた。
今年は、急激な円安の影響で、年明けから配合飼料価格が再び値上がりする。人手不足により人件費や流通諸経費もアップする傾向にあり、経営環境は非常に厳しく、昨年のような需給環境をより長く保つ必要がある。
そのためには、生産性の向上や合理化、設備の改善を進めながら、需要に見合った計画的な生産に努めるとともに、何よりも消費(需要)の拡大を図ることだ。
消費者の多くは、『国産』の安全・安心に信頼を置いている。これを絶対的水準にまで高めるとともに、品質、おいしさ、栄養、機能性、健康への良さなどを訴えていくことだ。鶏卵業界が目指す「1日2個」消費の大きな阻害要因となってきた卵のコレステロールへの誤解も、徐々に払しょくされつつあり、鶏肉についても、抗疲労効果に加え、新たに認知機能の改善効果を示す実験結果も出てきた。
これらを追い風に、今年も鶏卵で予定されている「オムレツの日」「たまごニコニコ料理甲子園」「親子丼の日」「いいたまごの日」、各地の卵イベント、鶏肉では、日本食鳥協会が“あんしんも、おいしさも。”をコンセプトにして作成した国産チキンマークの普及啓発事業、「国産チキンまつり」、各地のイベントに加え、あらゆるメディアやインターネット、口コミなどを通じ、『国産』鶏卵・鶏肉の良さを数多く発信して消費を拡大し、コストに見合う安定した相場を実現させなければならない。

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