TPP承認法案 臨時国会へ先送り 見えぬ養鶏対策
今国会に提出されていたTPP承認案と関連法案は、交渉内容の開示をめぐる与野党の対立に加え、熊本地震の発生などから審議がストップし、成立は臨時国会に先送りされた。
TPP交渉に参加した2013年3月時点の政府試算では、関税を撤廃した場合、農林水産業の生産額は約3兆円減少し、鶏肉や鶏卵についても加工や業務向けの輸入量が増加するため、鶏肉の国内生産量は20%、生産額は約990億円、鶏卵も同17%、約1100億円減少するとしていた。
しかし、大筋合意後は、“聖域”とされてきた重要5品目は守られたとして、生産額の減少幅は農林水産業全体で1300~2100億円に縮まり、鶏卵、鶏肉も「TPP参加国からの輸入は、用途が限られているため、国産品との直接的な競合はほとんどない見込み」として鶏卵は約26~53億円、鶏肉は約19~36億円にとどまると大幅に見方を変更。長期的には鶏卵、鶏肉とも「価格の下落が懸念されることから、生産性向上、高付加価値化などの体質強化対策の検討が必要」としているが、対策となると畜産クラスター事業などのほかには、具体的なメニューは示していない。
参院選後の臨時国会で再びTPP問題が議論されることになるため、日本養鶏協会などが要望している①鶏卵価格の低下圧力に対応したセーフティーネット(鶏卵生産者経営安定対策事業など)の強化②生産・流通の各段階におけるコストダウンを可能とする合理化・大型化への支援③消費者の国産鶏卵志向向上のため、生産者自らが行なう啓蒙活動を促進するチェックオフなどの仕組み構築への支援④安全・安心の確保(鮮度・品質など含む)への支援⑤内外価格差が生じている要因分析と対策検討への支援⑥鶏卵製品や中食・外食での使用食材の原産国表示の徹底――。日本食鳥協会が要望している①加工鶏肉や外食での原産国表示の徹底②鶏肉生産・処理段階での生産性向上と合理化を目指す施設改善への支援と、補助対象者へのインテグレーターの追加③配合飼料の価格安定対策の充実――の実現は不透明で、業界の努力も問われている。