群馬県畜産試験場が「採卵鶏の90週齢までの生産性と経済性」などの研究成果を公表

群馬県畜産試験場(小材幸雄場長)は、2月4日に群馬県庁で開かれた平成26年度群馬県農林水産業関係研究機関成果発表会で「採卵鶏の90週齢までの生産性と経済性」(後藤美津夫養鶏係長)、「採卵鶏の90週齢までの鶏卵品質」(高野武彦養鶏係技師)、「鶏卵の卵黄成分の加齢に伴う変化と鶏種特性」(後藤係長)の研究成果を公表した。
「採卵鶏の90週齢までの生産性と経済性」と「採卵鶏の90週齢までの鶏卵品質」では、鶏の育種改良の進展で産卵持続性が向上したことや、欧米におけるアニマルウェルフェアの考え方から長期飼育が今後の主流になることが予想され、育種改良も長期飼育を前提に進められていることから、「平成25年度鶏の経済能力検定」の対象鶏種10銘柄(白玉鶏=ジュリア、ジュリアライト、ウルトラライト、ハイラインマリア、バブコックB400、ジュピター。ピンク卵鶏=ハイラインソニア、ユラヌス。赤玉鶏=ボリスブラウン、シェーバーブラウン)を90週齢まで飼育し、生産性と経済性、鶏卵品質について調査した。
生産性と経済性については、①産卵率は70週齢以降も高く推移し、90週齢ではほとんどの鶏種が80%を切った②産卵率の積算値をみると、70週齢以降にピークを迎える鶏種があった③90週齢の産卵個数積算値は多い鶏種で約450個となった④飼料摂取量は70週齢以降に多くなる傾向がみられた⑤産卵率が落ちて飼料摂取量が増えた時期に、卵重が大きくなり、飼料要求率も上昇した⑥飼料要求率の積算値をみると、80週齢前後で損益分岐点を迎える鶏種もあった⑦70週齢以降の破卵率は40週齢時に比べて2~3倍増の10~15%となり、卵殻質が著しく低下した――などの結果が得られた。
後藤係長は「現在の採卵鶏の産卵持続性は高く、一定の長期飼育は可能と考えられるが、破卵が増加するなど卵殻質の低下が顕著となる。このためこれらを勘案して鶏群の更新、換羽誘導、加工卵出荷への切り替えなどの時期を判断する必要がある。今回は人の手で集卵したが、機械で集卵した場合には破卵がさらに増加する可能性がある。
長期飼育した試験成績は希少で、公的機関による成績は皆無である。最終的には100週齢まで調査を実施する予定で、次年度以降も継続する」などと説明した。
鶏卵品質については、①卵殻厚には大きな変化はないが、卵殻強度は加齢に伴い大きく低下した②ハウユニットは加齢に伴い低下した③卵黄のBrix(屈折率)は90週齢時が最も高かった。有色鶏種が全般的に高い値で推移した④卵白のBrixは加齢に伴い低下した――などの結果が得られた。
高野技師は「長期飼育の産卵成績は良好でも、鶏卵の品質が劣る場合が多いため、鶏種と加齢に伴う鶏卵の品質低下と販売方法、販売先などを考慮しながら、加工卵出荷や換羽誘導、鶏の淘汰・更新を判断する必要がある。カルシウムや有効リンを強化した飼料を与えたが、卵殻強度の改善には至らなかった」などと説明し、卵黄のBrixで90週齢が最も高かったことについては「予想外の結果であった」とした。
「鶏卵の卵黄成分の加齢に伴う変化と鶏種特性」では、“濃厚・粘りがある=良い”“薄い・水っぽい=悪い”などの生食を前提とした主観的な卵黄の評価を、客観的な評価に結びつけるために、「平成24年度鶏の経済能力検定」の対象鶏種10銘柄(白玉鶏=ジュリア、ジュリアライト、ハイラインマリア、バブコックB400、ジュピター、ビーナス、ノボホワイト。ピンク卵鶏=ハイラインソニア、ユラヌス。赤玉鶏=ボリスブラウン)が30、40、50、60、70週齢時に産んだ鶏卵の卵黄のBrixや粘度などを測定した。
調査の結果、①卵黄のBrixは加齢と気温の上昇に伴いわずかに低下した。鶏種による差がみられ、有色鶏が高い値で推移した。Brixの高い鶏種は、卵黄の水分含量が低い傾向にあった②粘度は、たん白質含量と正の相関関係、水分と負の相関関係があり、水分の少ない鶏種が高くなった③たん白質と水分との間には負の相関関係があり、脂質は摂取エネルギーの余剰の程度により変動した④コレステロールは加齢に伴い低下するが、水分の多い時期では少なくなり、脂質の多い時期では多くなった――などの結果が得られた。
後藤係長は「卵黄の品質には水分の増減が少なからず関与しているが、環境要因に伴う摂取栄養と密接な関係があり、卵白のような加齢に伴う変化ではないと考えられる。このため飼料で卵黄中の水分をコントロールすることで、人為的にBrixや粘度の高い卵黄の鶏卵を生産できる可能性がある。一方、卵重コントロールや飼料コスト削減のために飼料の質・量を過度に制限すると、卵黄中の水分の増加と粘度の低下を招く可能性がある」などと説明した。

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