ブルネイTPP会議 畜産ネットワークが報告会

TPP(環太平洋経済連携協定)参加に反対する畜産団体で組織する『日本の畜産ネットワーク』は、8月22日から30日までブルネイで開かれたTPP交渉会合に16人の代表団を派遣したが、9月2日に東京都内で報告会を開いた。
報告会には現地に赴いた(一社)日本食鳥協会の芳賀仁会長、(社)日本養鶏協会の島田英幸専務理事、日本酪農政治連盟の佐々木勲会長ら各畜種の代表者が出席。菱沼毅事務局長((公社)中央畜産会副会長)は、政府関係者から得た交渉会合の概要などについて報告。閣僚会合では(1)各国が10月中旬までに大筋合意し、年内妥結を目指す(2)交渉の加速化に努力する(3)役人同士の交渉が暗礁に乗り上げた際は、政治の出番――などの理念を共有し合ったという。
日本からの利害関係団体では、同ネットの16人が一番の大所帯だったことについては「畜産業界の存在感を示せたし、自民党TPP対策委員会の西川公也委員長にも、畜産の実情について理解していただけた」などと一定の成果を強調した。
日本食鳥協会の芳賀会長と日本養鶏協会の島田専務理事も、それぞれ要旨次のように報告した。

▽日本食鳥協会・芳賀会長=TPP交渉はこれまでの『通商交渉』と違って、民主主義や法の支配という普遍的な価値観を共有する国々が、新たな経済の仕組みを構築するものだと感じた。大変広い意味での『理念』を持った交渉であり、通商交渉ではないことに大きな『含み』があると思う。
甘利明TPP担当相も「価値観を共有し合う国々の、21世紀型の経済統合ルール作りである」と述べていた。具体的にはピンとこないが、確かにスケールの大きな話だなと思ったのが、第一の印象である。
TPPの交渉ルールでは『秘密保持』が前面に出ており、交渉経過の公表は行なわれない。従って政府が言っていた国民的議論はできないこととなる。
私たちは、現地で自民党対策委員の3人の先生方や、政府交渉団の方々、特に鶴岡公二首席交渉官、佐々木豊成国内調整総括官、渋谷和久内閣審議官らと何度も会う機会があった。各担当の方々に何回もお会いして、何回もお願いを続けることで、必ず頭の中には私たちの要請が残るものだと信じている。
従って、日本にいながら「お願いします」と頼むより、現地に行って毎日お会いしながらお願いし、種々の情報提供やご提案をすることは非常に意義があり、必ずや良い成果につながるのではないか。
日本食鳥協会の会長であり、畜産ネットワークの一員でもある立場から提案したのは、『食料に対する安全保障が国の責任だとすれば、国民にとって、安心して安全な食品を提供してもらうことは当然の権利だ』ということである。
牛肉や豚肉にしても、人類がまだ克服できていない口蹄疫の問題があり、畜産大国と呼ばれるアメリカでも発生している。鶏については高病原性鳥インフルエンザという強力な伝染病があり、これも人類は克服していない。もし関税が撤廃されると、どこの国とは言わないが牛肉大国、豚肉大国、鶏肉大国ができて、他の加盟11か国に向けて怒とうのような輸出が始まるだろう。
さらに口蹄疫や高病原性鳥インフルエンザが生産大国で発生した場合、翌日には輸出が一斉に止まる危険性もある。食の安全という観点でみれば、生産国を分散することでリスクを軽減する必要性があり、これは日本だけでなく、参加12か国のメリットと考える。
わが国の鶏肉自給率は、加熱調製品を含めると5割を切るかもしれないが、食品安全保障の観点からは今のバランス感は非常に大事。『経済的な問題で関税を撤廃すれば良い、という単純な話ではない』との提言を、鶴岡首席交渉官にも申し上げた。

▽日本養鶏協会・島田専務理事=当協会からは緒方忠浩副会長と私の2人が現地入りした。鶏卵は関税撤廃の例外を目指す『重要5品目』の対象ではないが、最終的には、重要5品目に準じての扱いを求めて参加している。
ただ、現時点でも鶏卵にかかる関税は低いが、最低限の関税率である現在のレベルは維持すべきである。また、なぜ我々がTPPに強い関心を持っているかというと、特に『ISDS条項』に関心を持っているためだ。現在、鶏卵の自給率は95%といわれるが、卵の生食ができるレベルにあるのは世界中で日本だけである。欧米では生食が禁止されており、このようなルールがISDS条項の対象とされることにより、低いレベルのグローバルスタンダードとされ、日本の食文化である生食ができなくなることに危機感を覚える。
『国産表示』や『生食を前提とした賞味期限』は日本独特のものであり、この点を崩されるとわが国の鶏卵業界は根底から崩壊する。今回の交渉会合は関税の問題だけでなく、21分野が対象であるため、我々は関係情報の収集および各方面への働きかけに努力しているところである。