2019年の食中毒は事件数、患者数とも減少 アニサキス1位、カンピロ2位

厚生労働省は、薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会食中毒部会(部会長=五十君靜信東京農業大学教授)を3月6日から16日まで持ち回り開催し、令和元(2019)年の食中毒発生状況と広域的な直中毒事案への対応について報告し、了承した。

令和元年の食中毒事件数は前年比269件減の1061件、患者数は4264人減の1万3018人で、事件数、患者数とも前年を下回った。患者数が500人以上の事例は発生しなかった。

死者が発生した事例は①群馬県の1人(4月17日、家庭、イヌサフランの炒め物、植物性自然毒)②秋田県の1人(6月3日、家庭、山菜の炒め物〈イヌサフラン〉、植物性自然毒)③広島県呉市の1人(12月1日、家庭、フグ、動物性自然毒)――の3件3人(前年3件3人)。

病因物質が判明した事例のうち、事件数が最も多かったのはアニサキスの328件(前年比140件減)、次いで同27.0%のカンピロバクター・ジェジュニ/コリ286件(同33件減)、ノロウイルス212件(同44件減)、植物性自然毒53件(同17件増)、動物性自然毒28件(同3件増)、ブドウ球菌23件(同3件減)の順。アニサキスは事件数全体の30.9%、カンピロバクター・ジェジュニ/コリは同27.0%、ノロウイルスは同20.0%を占めている。

患者数が最も多かったのはノロウイルスの6889人(同1586人減)、次いでカンピロバクター・ジェジュニ/コリ1937人(同58人減)、ウエルシュ菌1166人(同1153人減)、サルモネラ属菌476人(同164人減)、ブドウ球菌393人(同12人減)の順。ノロウイルスは患者数全体の52.9%、カンピロバクター・ジェジュニ/コリは同14.9%、ウエルシュ菌は同9.0%を占めている。

原因食品・食事が判明した事例のうち、事件数が最も多かったのは魚介類の273件(同141件減)、次いで肉類およびその加工品58件(同7件減)、複合調理食品53件(同24件減)、野菜よびその加工品46件(同12件増)、魚介類加工品10件(同16件減)の順。魚介類は事件数全体の25.7%、肉類およびその加工品は同5.5%、複合調理食品は同5.0%を占めている。

患者数が最も多かったのは複合調理食品の1168人(同956人減)、次いで魚介類829人(同380人減)、肉類およびその加工品826人(同375人増)、菓子類536人(同464人増)、野菜およびその加工品259人(同43人減)の順。複合調理食品は患者数全体の9.0%、魚介類は同6.4%、肉類およびその加工品は同6.3%を占めている。卵類およびその加工品の事件数・患者数の報告がなかったのは、令和元年が初めてとなった。

原因施設が判明した事例のうち、事件数が最も多かったのは飲食店の580件(同142件減)、次いで家庭151件(同12件減)、販売店50件(同56件減)、事業場33件(同7件減)、旅館29件(同2件減)の順。飲食店は事件数全体の54.7%、家庭は同14.2%、販売店は同4.7%を占めている。

患者数が最も多かったのは飲食店の7288人(同1292人減)、次いで旅館1719人(同453人増)、製造所871人(同526人増)、仕出屋868人(同1814人減)、事業場865人(同1094人減)の順。飲食店は患者数全体の56.0%、旅館は同13.2%、製造所は同6.7%を占めている。

都道府県別では、事件数は東京都119件(同66件減)、北海道106件(同2件増)、神奈川県73件(同24件減)。患者数は兵庫県1069人(同128人増)、大阪府952人(同430人増)、東京都865人(同1052人減)の順に多かった。

月別では、3月が事件数117件(同6件減)、患者数1990人(同203人減)で最も多かった。

広域的な直中毒事案への対応では、改正食品衛生法に基づいて昨年4月1日に各地方厚生局の管轄区域ごとに広域連絡協議会を設置し、連絡体制などを整備した。

病院物質別の食中毒発生状況

サルモネラ属菌、カンピロバクター・ジェジュニ/コリ、卵類およびその加工品、肉類およびその加工品の食中毒事件数と患者数の推移