鶏卵中の鉛の含有実態、すべて検出下限未満 農水省調査
農林水産省消費・安全局畜水産安全管理課は、7月10日に開いた農業資材審議会の飼料分科会と飼料安全部会の合同会議で「鶏卵中の鉛等の含有実態調査」結果を報告した。
鉛は、大気中に存在し、粉塵とともに落下して農畜水産物を汚染することが知られており、水や食品を通じてヒトの体内に一定量以上吸収されると、健康に悪影響を及ぼす可能性がある。
コーデックス委員会では2019年に、新たに基準値を設定すべき食品について議論し、乳幼児用食品等(スパイス類、ハーブ類、砂糖類、菓子類)と並んで、卵類をその候補の一つとして提案。このため、農水省は、国産鶏卵の鉛に関するリスク管理措置をとる必要があるかどうかを知るとともに、コーデックス委員会の基準値設定に活用することを目的に、国内で生産・販売されている鶏卵の鉛等の含有実態を調査したもの。
調査は令和元年12月から2年2月にかけて、10個入りパック卵を小売店やGPセンターから150点購入(平成31年2月1日現在の採卵鶏飼養羽数を基に全国からの購入量を地域的に割り振った)し、鉛、総ヒ素、カドミウムについて測定した。
分析結果は表1の通りで、調査した鶏卵の鉛とカドミウムは検出下限(0.005ミリグラム/キロ)以下、総ヒ素については、定量下限値(0.01ミリグラム/キロ)であった1検体を除き、すべて検出下限未満であった。
調査は、安全性の確認のため、これまでに比べ、かなり低い検出下限値、定量下限値を要求。これにより「コーデックス委員会が鶏卵中の鉛の基準値を検出下限値(0.005ミリグラム/キロ)としたとしても、国産の鶏卵が違反する可能性はほぼない」と結論づけている。
また、平成17~19年度厚生労働省委託事業「食品摂取頻度・摂取量調査の特別集計業務」における鶏卵の消費量データを使用した鉛と総ヒ素、カドミウムの総摂取量推定でも「いずれの元素においても、鶏卵に由来する経口摂取量は、各々の元素の総摂取量に対する寄与が低く、鶏卵は主要な摂取源ではないことから、現時点において追加のリスク管理措置を講じる必要性は低い」としている。その上で「鶏卵中の外来性化学物質は飼料に由来する可能性が高いと考えられ、安全な飼料の確保は極めて重要である。今回の調査結果は、これら元素について、飼料の規制がうまく機能していること、および採卵鶏農場において適切な管理が実施されていることを示している」と指摘。
ただ、将来は環境などの変化によって飼料の汚染実態が変動するため、時間をおいて再度調査を行なうことにしている。