鶏卵・鶏肉のさらなる消費拡大が課題

日本ブランドの優位性発揮を

国産鶏卵・鶏肉の需給は、昨年から今年にかけて生産過剰で推移し、特に鶏卵相場は生産コストを賄えない水準で低迷している。

良質なアミノ酸組成を中心に、健康に寄与する様々な機能性への評価が高く、さらに少ない飼料で生産でき、CO2排出などの環境負荷も低いため、鶏卵・鶏肉は今後予想される世界の人口増や食料価格の高騰、地球環境の悪化の中でも、需要がますます増加すると期待されている。

ただ、国内人口は2008年の約1億2800万人をピークに減少に転じ、現在は年間約40万人ずつ減少し、48年には1億人を割り込むと予想されている。現在の生産量を維持するには、国内のさらなる需要拡大・新用途開発に加え、輸出にも力を入れていかざるを得ない。

幸い、訪日外国人の数は今年の上半期でも4.6%増加し、初めて1600万人を突破した。今年後半のラグビーワールドカップや、来年の東京オリンピック・パラリンピック、さらには2025年の大阪万博などを機に、日本の安全でおいしい鶏卵や鶏肉のファンが広がっていくことが期待されている。

中国の習近平国家主席は、G20大阪サミット前日の6月27日に来日し、日中首脳会談後の夕食会で、神戸牛と近江牛をメインとしたすき焼きを食べた際、安倍首相が生卵を溶いて肉を食べる様子を見て、同じようにして食べたという。もしかすると〝中国の国家主席が初めて生卵を食べた〟歴史的な出来事だったかもしれない。香港だけでなく、人口約14億人の中国本土に、日本の卵の生食という日本の食文化が伝播していくことを想像すると、日本ブランドを一層普及させるチャンスにもなったのではないかと、将来が楽しみだ。

一方、環太平洋経済連携協定(TPP11)や、日・EU経済連携協定(EPA)は発効2年目に入っている。鶏卵、鶏肉の関税は、即時撤廃や段階的に撤廃されるものもある。加えて米国産農産物の協議も始まっており、影響がジワジワと出てくると予想される。

欧米を中心としたアニマルウェルフェア(AW)の問題も、徐々に国内でも取り上げられるようになってきている。家畜が健康で、その能力を適切に発揮できるよう、すでに策定されている(公社)畜産技術協会の「AWの考え方に対応した飼養管理指針」を順守するとともに、わが国の気候風土や、安全・安心かつ誰もが購入できる価格など、日本の実情に合ったAW飼養管理基準の確立に取り組み、わが国の家禽産業を持続的に発展させていくことが特に求められている。

高病原性鳥インフルエンザ(HPAI)も世界では続発し、鶏肉を中心としたカンピロバクター食中毒対策、コレステロールなどの栄養素に関する正確な知識の普及なども、引き続き取り組まなければならない。

国際化の進展に対応するためには、一層のコスト低減につながる諸資材費の引き下げを図るとともに、品質面では国産の安全・安心・新鮮・おいしさなどの優位性、さらに優れた機能性や調理のしやすさなどを、これまで以上に川下の各業界や消費者に発信していくことも重要だ。課題は本当に山積しているが、業界が一致団結してチャレンジし、乗り越えていかなければならない。